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 ネイカルのむらをめざして

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年5月8日

ネイカルのむらをめざして

高知県土佐山村長 門田博文

我が土佐山村は、県都高知市の北隣に位置し、高知市までは車で20分の距離にある。東は南国市、西は鏡村、北は土佐町に接し、急峻な山々に囲まれた緑あふれる鏡川源流の村。面積は59.22平方キロで、村の90%が森林。雨量は年間5千ミリを超えたこともありました。古くは、この豊かな山林資源を背景に自立した地域社会を形成してきた。ところが1955年以降の高度経済成長期になると薪炭生産と林業労働を軸とする地域産業は大きく動揺し、人口の流出と過疎化という全国同様の社会問題を抱えることとなった。その後、米の増産やタケノコ、ユズ、ミョウガの導入による農業生産の拡大などで地域経済を支えてきた。これにより2,500人から1,300人台まで急激に減少した人口も、80年代以降横ばいの状態にあります。

現在も、森林に挟まれた渓流沿いのわずかな棚田状の農地を活用し、さまざまな農業生産の拡大や、豊かなみどりとその森から湧き出る清流に囲まれた心の安らぐ生活空間、生活環境を生かした村づくりに取り組んでいるところです。本村は、明治22年4月の町村制の施行以来合併もせず今日に至っており、立村100年を節目に交流並びに健康産業への取り組みを始めて参りました。

「地球にやさしい農業」を進めるため、平成4年に第3セクターとして財団法人夢産地とさやま開発公社を設立し、健康な作物を生産する新しい技術(BMW技術)を導入した土づくりを行うために、土佐山村土づくりセンターを建設。製造した堆肥を有効に活用し、土づくりに主眼を置いた農業の振興として「低農薬栽培」「無農薬野菜」の増産に取り組むと同時に、女性や高齢化に対応できる農業の推進を図っています。そして、生産者の顔が見え、安全で安心した健康な作物として好評の「野菜セット」等は産地直送野菜として販売されており、農産物輸入の自由化に伴い、今後は開発公社を中心に生活協同組合との連携を図り契約栽培の推進に努めて参りたいと思っております。

また、最先端農業技術の導入により、将来の中山間地域農業の可能性に挑戦し地球にやさしい安全な無農薬野菜、サラダ菜、リーフレタスの供給産地のシンボルとして、平成六年に村と総合食品卸業の共同出資で野菜工場「夢ファーム土佐山」を設立、運営をしており、農産物輸入自由化、市場の流通の変化等に素早く対応できる情報が得られ、今後の農業振興に大いに役立つことと思っております。

本村のような山間地域は地形が急峻であり、腰、膝、肩の疾病が多く、1当たりの老人医療費も県平均より高額の状況であります。村民の意向調査をすると、「元気で働き長生きしたい、そして社会に参画したい」の意見が多く、健康づくりの拠点として平成2年に「健康交流センターとさやま」を建設しました。温水を利用した機能訓練と心身の健康増進が楽しく自然にできる健康づくりに取り組み、年間に村内外の約2万人が利用しています。また、各地域に健康福祉推進員を置く一方、隣接している村営の医療施設では、成人病検診や癌検診等の受診率を高め疾病の早期発見、早期治療を行っています。

少子化・高齢化・過疎化という波は本村にも押し寄せて来ました。村西部地域の住民の中には、離村の話も出るほど深刻な状況でした。地域内の農家が梅栽培の先進地を研修し、地域の活気を取り戻すとともに梅の花を地域外の人に見ていただこうと「梅まつり」を始めました。回を重ねる毎に人気を呼び、梅の開花時には数千人が訪れるようになりました。この「梅まつり」で協働関係が生まれ、更に地域の将来の夢を描いていくことが必要との考えで、アドバイザーを迎え、ワークショップも活発に行い、「自分たちでできることは、自分たちでやってみよう」という気持ちが地域の皆のなかに固まり始めました。平成10年に温泉を活用した宿泊施設「オーベルジュ土佐山」と、地区民で有限会社を設立し地域で収穫した農産物を直売所で販売するなど、年間六万人もの人々が県内外から新たに訪れ地元の住民との交流が行われております。都市と農山村の交流を通じて、経済的な地域農林業の活性化と、人々のふれあいから得られる新たな価値観や、さまざまな情報を基に、地域コミュニティーの再生が始まろうとしております。この西部地域のように、他の地域でも住民が地域の課題を直視し、地域にそれぞれのアイデンティティが不可欠であると思っております。

昨年、地方分権一括法案が成立され、地方分権の時代が訪れました。村としても地域が個性を発揮できるように役場職員は足元をしっかり見据え、地域づくりにロマンを懸けるように研鑽し、地域経営感覚を発揮できるような職員の養成に努めることだと思っております。そのためには次のことについて職員の意識改革に取り組み、職員が地域に出向き地域おこしが必要ではないかと思っております。

①地域の行政は、地域住民が自分たちで決定し、その責任も自分たちで負うという行政システムの構築②住民が主体となり住民の意思による行動を支援していくことが重要③住民と行政が共に考え住民の声が政策形成過程に反映住民一人ひとりの自覚と責任に基づく地域づくりの促進等住民が当事者意識を持って、参画、協力する機運を高めるには、情報提供、啓発活動、住民活動の促進。即ち、これからの時代は「自分たちでできることは、自分たちで実行」と地域を活性化させるのは全員の協力であり、地域や集落を皆で経営していくことの気持ちを大切にし、地域全体の活性化や農村コミュニティーの充実を更に行い、自然と文化の調和(ネイカル)をテーマに村づくりを進めて参りたいと思っております。