岩手県住田町長 神田 謙一
住田町は、昭和30年に世田米町・上有住村・下有住村の1町2村が合併して誕生しました。岩手県の東南部に位置し、町の約9割を森林が占め、中心部には気仙川が流れるなど、豊かな自然に囲まれた地域です。先人から受け継がれてきた伝統や文化を大切にしながら、昨年には町制施行70周年という節目を迎えました。
町では、これまでの歩みを踏まえつつ次の時代に向けたまちづくりを進めています。昨年策定された住田町総合計画では、「医」「食」「住」「地域経営」の4つを政策軸とし、人口が少ない地域でも豊かで活力ある暮らしを実現することをめざし、各施策に取り組んでいます。
―医―健康でいきいきと暮らせる地域づくり
人口減少が進む中でも安心して暮らし続けられる地域をめざし、保育・医療・福祉の分野で環境整備を進めています。
保育の分野では、保育園業務に保育ICTシステムを導入し、書類作成などにかかる時間を減らすことで、保育士がこどもと向き合う時間を確保できるようにしたいと考えています。また、保育園と保護者の情報共有の迅速化と円滑化を図るため、スマートフォンアプリの導入を検討しています。
医療・健康づくりの面では、後期高齢者を対象とした人間ドック費用の一部助成を行い、生活習慣病などの早期発見と重症化予防に取り組んでいます。さらに、町内の医療機関を中心に、医療・保健・福祉・介護の連携を強化し、誰もが必要な医療を受けられる体制づくりを進めています。
―食―豊かな暮らしを支える産業振興
地域の農業と林業を将来にわたって守り育てていくための取組を進めています。農業では、各集落の農林業振興会が大きな役割を担っており、農地を守る防護網の管理や周辺の草刈りなど、地域みんなで取り組む作業を続けられるよう、町が活動を支援しています。こうした助成により、集落ぐるみで農地を守る体制を支えています。
林業では、森林環境譲与税を活用し、森林が持つさまざまな働きを守り高める取組を進めています。また、林業応援隊員の募集を広く行い、林業に関わる人を増やすことにも力を入れています。さらに、FSC森林認証を生かして町産木材の価値を高めるなど、地域の森林資源をより良い形で活用する取組も進めています。
―住―快適で過ごしやすい生活環境の整備
住み続けやすい環境づくりに向けて、住まいや移動の面から町民の皆さんを支える取組を進めています。住まいについては、持ち家の整備支援や町営住宅の提供、空き家の活用など、さまざまな選択肢を広げながら、安心して暮らせる住環境を整えていきます。
移動手段の確保に向けても、より便利に使える公共交通の仕組みづくりを進めています。部活動の終了時間に路線バスで帰れない高校生のために乗合タクシーを運行するほか、朝の時間帯に世田米方面への路線バスがない地域では、中学生が利用するスクールバスに町民も一緒に乗れるようにする仕組みの実証運行に取り組んでいます。こうした取組を通じて、誰もが安心して移動できる環境づくりをめざしています。
―地域経営―住民主体による支え合いの地域づくり
地域のつながりを大切にしながら、誰もが安心して暮らし続けられるまちをつくるための取組を進めています。コミュニティ活動では、住民同士が支え合い、地域の課題を地域で解決していくための基盤づくりが欠かせませんが、自治公民館の活動は高齢化や人手不足といった課題に直面しています。このため、まずはモデル地区を選んで集中的に支援し、無理なく続けられる活動の形を探りながら、その成果をほかの地区にも広げていきます。
また、関係人口を増やす取組として、仕事と学びの複合施設「イコウェルすみた」を活用し、町内外の人が交流し、新しい価値が生まれる場づくりを進めています。さらに、行政のデジタル化(DX)にも取り組み、町民の皆さんがより便利に行政サービスを利用できるよう、住民票などのコンビニ交付に向けた環境整備を進めています。
結びに
東日本大震災から15年が経ち、私たちは「当たり前の日常は突然失われることがある」という教訓と、地域のつながりで困難を乗り越えてきた経験を大切にしてきました。震災以降、町を取り巻く状況は大きく変わり、将来を見通すことが難しくなる中で、受け継いできた地域の姿をどのように次の世代へつないでいくのかが、今まさに問われています。
こうした思いを胸に、町政を運営していくうえで、総合計画の進み具合や各施策の内容・成果について、さまざまな場面を通じて丁寧に説明しながら地域の声にしっかり耳を傾け、その意見を施策に反映してまいりたいと考えます。
このような取組を積み重ね、町政への信頼を深め「この町に住んでいてよかった」と実感できるまちづくりを進めてまいりたいと考えています。