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屋久島町のさらなる飛躍をめざして

印刷用ページを表示する 掲載日:2025年4月7日更新

鹿児島県屋久島町長 荒木 耕治鹿児島県屋久島町長 荒木 耕治​​

​ 平成19年10月、屋久町と上屋久町が合併して発足した屋久島町。私はその2代目の町長として平成23年11月に就任し、4期目に入りました。

 屋久島は平成5年12月に世界自然遺産、平成17年11月にラムサール条約、平成28年3月には屋久島・口永良部島ユネスコエコパークとして登録され、日本で唯一のユネスコ三冠という栄誉をいただいている世界に誇る自然を有する島です。

 就任当初より私が掲げてきた政策の第一の柱は「町民の総親和」、同じ島であるにもかかわらず、長きにわたり行政区域が別だったことによる分断の解消でした。合併後4年が経過してもなお本庁舎の場所が決定できず、元々それぞれの町にあった庁舎やその他支所に行政組織が分散しているために意思疎通も図りづらく、とてもスムーズな行政運営ができるとは思えませんでした。ゆえにまずは庁舎をひとつにして合理化を図り、一緒に知恵を出し合える環境を作り、一体感を醸成すべきだと考えました。

 完成までにさまざまな紆余曲折を経て、新元号令和の幕開けと共に、新庁舎での行政事務が始まりました。庁舎は、戦後に植林され、伐期を迎えたにもかかわらず、利活用が図られていなかった地元杉に拘り、林業や木材産業をはじめ、町内のさまざまな産業と連携しながら、屋久島の新たな産業構造を築くきっかけとなりました。合併から12年の時がたっていましたが、木材利用優良施設表彰内閣総理大臣賞をはじめ数々の賞を受賞するなど、島内外から高い評価をいただいており、多くの方々が視察や見学に訪れる、まさに屋久島町のシンボルにふさわしいものになったと思っています。

 対外的には1期目から精力的に国や県に働きかけ、特に力を入れて訴え続けたのは、光ブロードバンド敷設と屋久島空港の滑走路延伸事業の推進でした。観光を生業とする町民が多い我が町にとっても、企業を誘致するにせよ、移住を促進するにせよ、どちらも不可欠なものだと確信していたからです。特に今やブロードバンド回線は電気水道ガスに並ぶライフラインと言っても過言ではなく、その整備を急ぎました。令和2年5月にサービスを開始し、その後一気に需要が増したWeb会議やオンラインイベントの開催・配信においても遺憾なくその通信の安定性と速度を発揮するなど、本格的なコロナ禍に突入する前に整備できたことは、まことに僥倖であったと感じています。

 また、令和5年度における観光及び商用等による屋久島への航空機での来島入込客数が過去最高の10万人を記録し、屋久島を訪れる方々の移動手段として、航空機利用が年々高まりつつあることがうかがえました。今後さらに航空路の利便性向上が見込まれ、屋久島と関東圏の直行便開設、インバウンド効果と相まった交流人口拡大及び地元産品の迅速な輸送等により、地域経済効果への期待が高まることから、屋久島の観光産業をはじめとした各種産業からも完成を待ち望む声が寄せられています。今後は、国・県と連携し、屋久島空港滑走路延伸事業の早期完成をめざすと共に、企業誘致や移住促進についても並行して取り組んでいきたいと考えています。

 令和6年6月には、日本にある71の有人島の141の市町村で構成される全国離島振興協議会会長の職に再び選任いただき、就任いたしました。本町を含め、離島地域では、進学・就職による若者の転出増加等により、人口減少や高齢化が急速に進み、所得や雇用の場の減少、コミュニティ機能の低下、学校の統廃合、医療施設の縮小・閉鎖等、多くの課題を抱えています。課題解決に向けた事業を展開するにも、離島振興関係事業の予算の確保、離島振興関係法の改正・延長並びに各種制度改正等の実現が必要となります。直近においては、有人国境離島法が令和8年度に期限を迎えることから、この法律の延長及びさらに充実した制度内容をめざし粘り強く活動していきます。

 最後に、本町は屋久島と口永良部島を合わせ26の集落があります。人口減少により、地域コミュニティの維持は難しくなっているものの、独特の歴史や文化はそれぞれ大変魅力的です。私は、集落の元気なくして町の活性化はありえないと思っています。本町の町政発展の目標と道筋をまとめた振興計画を柱とし、これまで以上に現場感覚を重視し、各集落の提案等を尊重しつつ、的確な分析と長期的な立案能力を備え、先述した各種制度による補助金等を活用しながら、町民の生活の安定と福祉の向上に努めてまいる所存です。