島根県町村会長・隠岐の島町長 池田 高世偉
●まちへの想い
「隠岐に帰って牛突きをします」、「蓮華会舞に関わって守っていきたい」、「介護士になって島に帰りたい」若い世代との話でした。その言葉の裏側は、いたって単純明快で「隠岐の島が好きだから」。この言葉に、島を大切にする仲間がたくさんいることに気づかされました。
誰もが胸を張って好きだと言えるまちをめざし、「生まれて良かった」、「住んで良かった」、「訪れて良かった」の3つの良かったが響くまちの実現を目標に掲げ、平成28年から町政運営を担わせていただいています。
就任当初、「3つの良かったって何?」と言う声が多く、悶々とした中で町政にあたっていたことを思い出します。
今では、町民の皆さまが、「これは住んで良かっただな」、「生まれて良かったについて質問します」など、町の進むべき道を示すキーワードとして共有していただいていることをうれしく思っています。
●まちの紹介を
本土から80kmに位置する人口約13,400人の離島の町です。その面積は、琵琶湖の約3分の1で、242.82km²。平成16年に1町3村が合併して誕生しました。
以前は、後鳥羽上皇、後醍醐天皇配流の島として史実をもって知られておりましたが、現在はこれに加え、竹島、世界ジオパークというワードでも広く認知していただいております。
竹島は、本町の北西158kmに位置する面積0.20km²の日本固有の領土です。現在は韓国に不法占拠されていますが、領土問題は国家間の問題です。島民の思いは、「あの暫定水域で、昔のように漁がしたい」ただそれだけなのです。
また、世界ジオパークは、従来、地形・地質遺産の保全活動等により認定されてきましたが、隠岐は初めて、それらに加え「人の営み(特異な文化や習俗)」が評価され認定されました。
その文化は、離島であるが故に生まれた、隠岐民謡、牛突き、古典相撲と呼ばれる特異な相撲等です。ぜひ、お出かけいただき、ご自身の目で確かめていただければ幸いです。
●力を入れている取組は
離島であるが故に、交通、医療・福祉、ごみ処理などは島内で完結しなければなりません。今回は、それら以外に、町の将来に向けた2つのプロジェクトを紹介させていただきます。
1つ目は、西郷港周辺地区整備事業です。
活力あるまちづくりを推進するうえで、本町のエントランス地域である西郷港周辺を、活気ある玄関口とすることが必要不可欠です。
平成30年から3年をかけ、町民の皆さまとの話し合いを行い、整備の方針や概要を「西郷港玄関口まちづくり計画」にまとめました。令和3年には全国コンペによりまちのデザインを決定し、令和5年度より実現に向け事業を進めています。事業期間は10年間の予定です。
本事業は、全てを再整備する駅前再開発ではなく、今ある良きものは活かしつつ、新たな交流スペース等を確保し、賑わいを創出するものであります。また、現在は遮断されている、海とまちを一体化した景観の形成にも取り組みます。
2つ目が、ゼロカーボンシティの実現に向けた取組です。
民間企業と連携し、再生可能エネルギーの推進等を図ることで、2050脱炭素社会の実現をめざし、令和4年6月に株式会社鴻池組と包括連携協定を締結しました。その取組の1つとして、令和6年11月からペレット発電事業を開始したところです。安心安全なまちづくりへの取組はもとより、次世代の環境教育にもお力添えを頂いております。
●最後に一言
どの自治体も喫緊の課題は、「人口減少の抑制」が全てと言っても過言ではありません。
10年後の人口を維持するためには、将来を担うこどもたちに、ふるさとを思うこころを育むことが一番であると考えます。
我々は、地域の人々を「隠岐びと」と称します。「隠岐びと」が、「ふるさとが好き」、「将来帰りたい」、「ふるさとを応援したい」と言えるまちづくりに、情熱をもって取り組んでいきたいと思います。
「隠岐の島が好きだから」…