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伝えつなげていくまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2025年1月27日更新

静岡県川根本町長  薗田 靖邦静岡県川根本町長 薗田 靖邦
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 川根本町は、静岡県の中央を流れる大井川上流部に位置し、総面積は約5万haに及びます。町域の約94%を森林が占め、最北部にそびえる南アルプスの光岳(てかりだけ)周辺は、本州で唯一の「原生自然環境保全地域」に指定されています。また、大井川に沿って集落が点在し、銘茶「川根茶」の茶園が広がる景観は、まさに日本の原風景ともいえます。こうした豊かな自然と共生し、先人たちから受け継がれてきた暮らしが評価され、当町の全域が「南アルプスユネスコエコパーク」のエリアとなっています。さらに、持続可能なまちづくりをめざして、NPO法人「日本で最も美しい村」連合に加盟し、全国の町村地域と切磋琢磨しています。

 当町は人口約5,800人と小規模ではありますが、地域住民の皆さまの温かい心によって醸成された豊かな文化と地域資源を未来へと継承していくために、日々努力を続けています。

 そのひとつが「川根茶」です。歴史ある茶産地として名高い当町では、高級茶として知られる川根茶を生産しています。川根茶は、上質な香りと風味で国内外において高く評価されており、当町の代名詞ともいえる特産品です。豊かな自然によって育まれ先人たちの努力により培われた茶産業は、私たちの誇りであり、町の重要な基盤となっています。近年では、有機栽培による碾茶(てんちゃ)加工工場と抹茶加工施設の大型工場も設立されました。この施設では、地域で生産された高品質な茶葉を加工し、世界市場に向けて販売する取組を進めています。地元の農家や事業者との連携を深めることで、地域経済の活性化を図りつつ、川根茶のブランド力をさらに高めています。

 次に、「大井川鐵道」があります。令和7年3月に100周年を迎える大井川鐵道は、この地域のシンボル的な存在であり、SLやレトロな電車が走る鉄道として、沿線住民だけでなく全国の鉄道ファンからも長年愛されてきました。しかしながら、令和4年台風第15号災害により、SLの走る本線においては町内全区間で運休が続いています。町では、町内を走るSLの勇姿を再び見ることができるよう、静岡県や周辺自治体等とともに、全線復旧に向けた取組を推進してまいります。また、その取組と併せて、お隣の島田市と連携し、「大井川流域ニューツーリズム推進事業」として大井川の豊かな自然と歴史を活かし、新しい観光の形を提案することで、多くの方々に大井川流域や川根本町の魅力を知っていただく機会を創出しています。さらに、近隣にある富士山静岡空港を活用した広域観光の推進やインバウンド誘致にも力を入れています。国内外からの観光客を迎えることで、町の賑わいを取り戻し、地域経済の底上げを図るとともに、当町ならではの魅力を発信してまいります。

 私は、未来を見据えたまちづくりの基本は「人づくり」にあると考えています。人を大切にし、町民一人ひとりの力を引き出すことで、町全体の魅力も高まっていくと信じています。こうした考えから、町では、まちづくりの一環としてプロスポーツチームとの連携を進めています。近隣地域に拠点を置くサッカー、ラグビー、バスケットボール、そして卓球のプロスポーツ団体と協定を結び、町民の健康づくりや選手との交流等により町を活性化していきたいと考えています。こうした中、令和5年11月には、地域住民が主体となり、「新しいことに挑戦できるまち」をめざし、「サッカーの親善試合に参加した最多人数」のギネス世界記録®へのチャレンジを企画しました。町内外から2,391人が参加し、見事に2016年に南米チリで樹立された2,357人の記録を上回る結果となり、当町の町民の約8人に1人がこの記録を保持していることとなりました。

 今後も、地域住民の皆さまと協働しながら、地域全体の活気を高める取組を続けてまいります。豊かな自然や文化、ここにしかない地域資源を最大限に活用し、当町ならではの独自性を発信することで、町の持つ凄みを広く伝え、次世代へとつなげていくことが私たちの使命です。

 私自身は、いつも「問うこと」を考えています。そして町の凄みを導き出したい。幸せ、自然、町のすばらしさを伝えつなげていくまちづくりに取り組んでいきます。