北海道礼文町長 小野 徹
礼文町は、今年指定50周年を迎える利尻礼文サロベツ国立公園の日本海に浮かぶ最北の離島で「花の浮島」と呼ばれている町です。
町民の皆さんからふるさとの舵取りを託され町長に就任してから19年が経ち、 「声なき声にも耳を傾け、安心して暮らせる礼文島をつくりたい」との思いを胸に、財政の健全化に努め、子供たちの夢の実現、働く人たちの元気づくり、安心の生活づくりを意識しながら、「近者悦遠者来」のまちづくりをめざして未来に元気のタネを蒔いてまいりました。また、礼文島にある三つの宝物により「もっと故郷礼文島に賑わいを取り戻し、もっともっと元気な町にしたい」と思い「元気の出る礼文づくり」を進めてきました。
~「海の宝」~
さらなる元気を創り出すためには、漁業をさらに発展させることが必要で、「地域で稼ぐエンジン」として、生産基盤の整備と保全、担い手の確保に努め、漁業振興を図らなければなりません。
今、漁業を取り巻く情勢は大きく変化しており、主要魚種の資源減少に加え、海洋環境の変動による魚種の変化や水揚げ減少、価格の低迷など、先行きの不透明な厳しい状況におかれています。特に、漁業は沖での仕事だけでなく、陸での網外しの仕事や加工にも人手がかかる島では総合的な産業で、陸にも雇用が創出されるのです。今後は礼文島のブランド品として付加価値を高めるなど、漁業振興対策と漁業者の経営安定対策に関係機関と連携して取り組み、漁業者の皆さんがもっと安心して操業できる環境づくりを進めてまいります。
~「山の宝」~
可憐で希少な高山植物などの自然保護と観光の振興は、自然環境の保護と観光への活用という極めて難しい対応が求められるところであり、特に、高山植物が咲く花園と人々の生活の場が隣り合っている礼文島では、地球温暖化の影響を大きく受けているため、これからは、地球温暖化を解消または軽減して持続可能な自然を守る「カーボンニュートラル」などSDGsの取組が必要と考えています。私たちすべてが、自然へのやさしい思いやりの心を持ち、自然環境にやさしい取組を進めることと、工夫しながら温かいおもてなしの気持ちで観光客の皆さんをお迎えすることがとても大切だと思っており、そのことが礼文島を他の観光地とは違った礼文島観光をつくり上げることになると考えています。
~「地の宝」~
礼文島にはいたるところに「学術価値が高い古(いにしえ)からの貴重な埋蔵文化財」があり、国の重要文化財に指定された「船泊遺跡」、古代オホーツク文化発祥の地「香深井Ⅰ遺跡」、世界が注目する4000年の歴史を刻む「浜中2遺跡」など、縄文時代からアイヌ文化期までを語る遺跡遺物が発掘されています。
特に、礼文島の冷涼な気候により、良好な保存状態であることから、その情報量の豊富なことによって、わが国はもとより世界的にも、考古学において極めて重要な位置を占めており、日本人の起源を探る大きな成果に結びついています。
これら貴重な遺跡遺物は、観光への活用はもちろん、児童生徒学生はじめ研究者にとっても「学びの島」として大きな夢や役割を有していることから、新たな交流が期待されるところであり、今後は「見せる埋蔵文化財」などさまざまな活用を通して、新しい礼文島の「学びの島」の魅力を世界に発信してまいります。
【地域で稼ぎ、誰もが健康で活躍する元気な礼文づくり】
地方が独自の魅力をつくり出し維持していくためには、自分たちの価値観をもって「継続的に稼げるしくみ」をつくることが大事であり、個別の商品力を高め付加価値を上げる取組が重要だと思います。漁業でも、水産加工でも、観光でも、今までの売り方、作り方に変化をもたせることによる付加価値を向上させることが大事で、「稼いで投資し続ける」好循環をつくる必要があります。
地方創生に必要なのは「おカネそのもの」ではなく「おカネを継続的に生み出すエンジン」をつくり出すことです。
真面目に務める姿は、人を動かす力があると思っています。行政が誠実かつ熱意をもって日々の仕事に取り組むことによって、町民皆さんから信頼をいただき、ともに、町づくりを進める大きな力になると考えています。
町づくりの目標である「地域で稼ぎ、誰もが健康で活躍する元気な礼文づくり」のため、頑張る人には活躍できるステージを用意し、その覚悟と決断に責任をもつのが私の役目だと思っています。
そして、これを「次世代につなぐ新たなステージ」としていくため、これからも、町民の皆さんに寄り添う「人の和」、「絆」が広がる「魅力あふれる礼文づくり」を進めていきたいと考えています。