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リニアで甦る伊那谷スマートバレー

印刷用ページを表示する 掲載日:2024年4月8日

長野県豊丘村長 下平 喜隆長野県豊丘村長 下平 喜隆​​

 豊丘村は、長野県の南部に位置し、東に南アルプス、西に中央アルプスがそびえ、その間を諏訪湖から南下し太平洋へ注ぐ天竜川の浸食により形成された伊那谷の中ほど、左岸にあります。東側の山地から西方の天竜川に向かって里山、里地を形成しており、雄大な自然と変化豊かな河岸段丘が特徴的で、産業のバランスがとれた村です。

 農業所得の向上を図り、遊休農地の拡大を防ぐための、さらには豊丘村の経済、観光、文化の中心地としての機能を合わせ持つ、道の駅「南信州とよおかマルシェ」を平成30年4月に開設しました。

 さらには、村民が安心して暮らせるために必要な生活サービス機能を集約、確保する「小さな拠点」を、この道の駅「南信州とよおかマルシェ」に核として整備しました。あわせて、この「小さな拠点」を管理運営する「株式会社 豊かな丘」を、村、村民等個人、地元企業から出資をいただくなかで「私たちの課題を解決する、私たちの会社」として設立し、内閣府の小さな拠点税制の第一号の認可を受けました。

 開業6年を迎えた現在、年間約100万人近くの方々にご来場いただき、年間を通じての集客力も上がるなか、秋には日本一の収穫量と品質を誇る松茸を始め、豊富な果物の品揃えも充実し、成功事例として紹介いただくことが多くなっています。さらに、令和2年5月には道の駅の隣地に、サイクルツーリズムなどを取り入れた観光拠点施設「とよおか旅時間」も整備しました。

 さて、最も速い高速道路を利用しても東京から4時間以上掛かるため、今は陸の孤島と呼ばれて過疎化の進んでいる飯田下伊那地方です。

 しかし、千年以上昔、五畿七道の一つ、現在の滋賀県の瀬田市から宮城県の多賀城市まで結ぶ東山道がこの地に開通したことから、当時の都と東国のゲートウェイとして大いに栄えていました。その証拠に、当時の豪族の富の象徴である前方後円墳が多数存在し、万葉集や源氏物語などにも、数多くの優れた短歌が残されています。現在でも皇室の歌会始には、この地の作者の短歌がたびたび入選しています。

 なんと、今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」では、源氏物語に収められている光源氏の恋心を、近隣の岐阜県境、阿智村園原の帚木と呼ばれる、箒の形をした大木に見立てた短歌が取り上げられるようです。

 そして、豊丘村のある南信州伊那谷には、時速500キロで走行するリニア中央新幹線が開業することになりました。品川から45分、名古屋から25分という時間距離を得ることになります。そのころまでには南信州と愛知県、静岡県を結ぶ三遠南信道も全線開通します。まさに千載一遇のチャンスとはこのことではないでしょうか。

 南アルプスと中央アルプスに囲まれた雄大な自然と、天竜川沿いの河岸段丘と農地が織りなす、日本の原風景を守り備えることで、大学誘致や、研究・開発機関、さらには観光開発やさまざまな企業や公的機関、住宅やマンションの進出も可能となります。人口増加が実現すれば病院やショッピングモール、アミューズメント施設なども充実し、都市部や海外へとつながるスマートタウンとして生まれ変わる可能性も大いにあります。

 さらには記録で遡れる約1400年間で、直下型の大地震が起こったことは、1718年の静岡の県境に近い、遠山地震一度だけです。火山からも離れていて、豊丘村の位置する伊那谷は、防ぎようのない天災の発生確率はかなり低く、安全性も兼ね備えていると言えます。

 リニア中央新幹線の開業により、国内でも特筆すべき可能性を秘めた豊丘村、さらには飯田下伊那地域の発展のために、官民一体となり、共に力を合わせて、時代に即した確実な舵取りを着実に務めてまいりたいと考えています。