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誰もがいきいきと暮らせる町に

印刷用ページを表示する 掲載日:2024年3月18日

片山 篤岡山県久米南町長 片山 篤
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 久米南町は、昭和29年に一町三村が合併して誕生しました。岡山県のほぼ中央部に位置し、町の中心部を国道53号とJR津山線が通っています。町域の東西は約9㎞、南北は約11・5㎞で、総面積は78・56㎢。気候は比較的温暖で、積雪もほとんどなく、県下でも比較的暮らしやすい地域です。主な産業は、稲作を中心とする農業で、ブドウ、キュウリ、ユズ、野菜などの生産が盛んです。また、文化の面では、戦後の混乱期を乗り越えるため、人々が少しでも心豊かに暮らせるように、川柳が盛んに行われ、日本一の川柳の町となりました。324基の句碑が建立された「川柳公園・川柳の小径」は町の誇れる名所となっています。平成26年には、ギネス記録に挑戦。「世界最大の川柳教室」を見事達成し「世界一」を誇れる町となりました。

 美しく豊かな自然と文化の薫る町として着実に歩んできましたが、他の市町村と同様に少子高齢化が進み、合併当時、約1万1千人の人口が現在では、約4千4百人、今年度当初の高齢化率45・8%と、岡山県下で最も高齢化率の高い町となっております。高齢化率の上昇は憂慮すべき情勢ですが、いずれ、どの町村でも直面する問題であり、高齢化先進地と捉え、施策を展開してまいりました。

 高齢者の住民が、住み慣れた地域で安心して暮らせること、認知症にならないための予防策として大切なことは何かを検討し、生活に必要なものを買いに行けること、医療機関に通院できること、積極的に人と交流するための社会参加の促進が必要と考え、移動手段を確保充実することで、このような不安を解消する施策が喫緊の課題と捉えました。

 民間のバス事業者やタクシー事業者がすべて撤退したことにより、町民の交通の手段確保対策として、平成17年から、町が無償で運行する町民バス5路線を小中学生の通学や山間部の移動手段として公共交通体系を展開しました。しかし、基本となるのが通学で、一般住民のニーズに応えられないケースや、乗客が少なくても運行しなければならないため、時折、空車のまま運行することもありました。また、町民バスを利用できない公共交通空白地域もありました。こうした問題を解決するため、平成26年度末に公共交通網形成計画を策定し、平成27年度中にドアツードア方式によるデマンドタクシーの試験運行を行い、平成28年度からデマンド交通の本格運行を開始しました。この計画も令和元年度までの計画で満了し、また、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律が改正されたため、これに対応した地域公共交通計画を策定しました。計画の目標として、「町内にいる誰もが利用できる公共交通」、「まちの魅力を高め人がいきいきと交流できる公共交通」、「協働により守り、育て、未来につなげる公共交通」を掲げ、利便性を向上させ、「人」だけでなく「モノ」の輸送にも活用し、商品宅配サービスや個人宅間の荷物配送サービスの充実を図ることとしています。町民バスの運行からデマンドタクシーとなり、町民バス利用者の外出の頻度も増加するとともに、満足度もかなり上がり、新たな取組に期待ができました。

 地域公共交通を充実させることで、住民の移動を幅広く柔軟に確保し、より住民のニーズに沿ったものに近づけることができたと思います。高齢者が、不安なく日常を過ごすために基本となるのが、たとえ自動車運転免許証を返納しても、どこにでも行くことができ、必要な用事を済ませられることだと思います。まだまだ課題もありますが、中山間地域である当町が、誰でも安心していきいきと暮らせる町を目指してまいります。今後も各分野での課題に挑戦し、久米南町の振興計画で定めたキャッチフレーズ「たくさんの笑顔と元気 久米南町」を実感できる町づくりを進めてまいります。