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世界とつながるアウトドアのまち

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年12月18日

鳥取県大山町長 竹口 大紀鳥取県大山町長 竹口 大紀 ​​

はじめに
 鳥取県大山町(だいせんちょう)は人口約1万5000人、中国地方最高峰の国立公園大山(だいせん)山頂から日本海までが、直線距離20㎞の中に収まる自然豊かな町。スキー、登山、キャンプ、サイクリング、サーフィン、フィッシングなど、多様なアウトドアアクティビティが楽しめます。
 一方で、全国の過疎地域に共通するような課題が山積しており、それらの課題に対応すべく取り組んできた政策の一端をご紹介します。

アウトドアライフ構想
 大山町総合計画に基づく各種政策において、行政の展望や未来像を視覚化するためにビジョンマップとして掲げる「大山町アウトドアライフ構想」。それをもとに、バリエーション豊富で恵まれたアウトドアフィールドを活かしたまちづくりを進めてきました。
 大山町が考えるアウトドアライフ構想とは、アウトドアアクティビティによる観光誘客のみならず、地元に暮らしている住民が日常にアウトドアを取り入れた生活、趣味、健康、教育、文化、環境、経済、防災などのほか、広義でのアウトドアとして第一次産業の発展など、ほかにはない唯一無二の地理的条件を最大限に活かすことで、アウトドアライフが地元にとっての強烈な誇りとなることをイメージしています。

人口減少対策
 毎年200人程度の人口減少が進む大山町。少子化対策とその副次的な効果としての移住定住の促進を、人口減少対策の基本としています。
 政府等のアンケート調査で、「希望する子どもの数」と「実際の子どもの数」に差がある理由のトップが「お金がかかりすぎる」。この要因を解消するため、小中学校の給食費無償化、教材費、入学時の学用品費、制服代、修学旅行代金の補助、高校生の通学費助成、大学等の奨学金返還支援助成など、公教育の経済的負担を限りなくゼロに近づけました。
 そのほかに、18歳以下の医療費無償化、産後ケアの無償化、妊産婦や子育て家庭向けに医師などの専門家による無料のオンライン相談など、出産から子育てにかかる不安や負担を軽減する施策も進めています。
 子育て世帯だけの負担から、地域全体で子育てに協力するまちを目指してきた結果、移住定住も促進され、平成30年には初の人口社会増を達成し、転入出人口の均衡を維持できるような状態になってきました。

英語教育
 大山町の教育における特色の1つは、英語教育。姉妹都市の米国テメキュラ市への中学生派遣、児童生徒が海外のネイティブスピーカーと1対1(25人のクラスであれば25対25)で行うオンライン英会話、すべての小中学校に各校専属のALTを配置するなど、世界とつながるための異文化コミュニケーションを推進してきました。
 さらには、小学校の授業を英語で行う「イマージョン教育」の実現可能性を探るとともに、ハワイ州の私立学校と連携した短期語学留学プログラムの検討、時差が少ないニュージーランドの日本語コースがある学校とのオンライン相互交流など、次なる異文化教育に向けた企画立案を進めています。
 ただ単に言語を学ぶのではなく、異文化を理解するための環境をつくり、異文化を理解することによって大山町への郷土愛も育んでいく。そのような環境で育った子どもたちは、世界で活躍する人材になるとともに、いつまでも大山町と関わり続けてくれることでしょう。

むすびに
 「予算における目標と成果は?」「費やした時間に対する効果は?」。何かと数字を求められ、行動の一つひとつに意味を持たせなければならない昨今。当コラムの執筆に費やした時間の効果として、「大山町へ視察に行ってみたい!」と感じてくださる方がゼロではないことを願っています!