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自然の恩を次世代に-「サンゴの村宣言」持続可能な村づくりを目指して-

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年10月30日

長浜 善巳沖縄県恩納村長 長浜 善巳​​

 恩納村は、海山に恵まれた自然豊かな村です。私が幼い頃は、海や山で幼児から中学生までが皆で一緒に遊びまわり、その様子を地域の方々もわが子のように温かく見守る、共同体意識の強い集落でもありました。その中でも、当時遊んだコバルトブルーに輝く海、サンゴ礁の群落は、今も胸に焼き付いています。

 現在は、観光地のイメージを持たれる方が多いのかもしれませんが、元々は半農半漁の村で、村民の暮らしを支えるのは漁業と農業でした。1975年、沖縄県で初のリゾートホテル「ホテルムーンビーチ」が開業したことをきっかけに、多くのリゾートホテルが軒を連ねていき、今では県内屈指のリゾート地として発展しました。

 リゾート地として発展する一方、先達が引き継いできた自然豊かな恩納村を次世代の子どもたちにも引き継いでいきたい、郷土の景色を誇りに思ってほしいという思いを抱くようになりました。恩納村のためにできることはないかと考え、恩納村議会議員を2期務めたのち、村長選に出馬し、現在、3期目になります。

 村長就任後、施策の一つとして海の活気を取り戻すことを考えました。海と向き合うことは、自ずと自然とその周りの環境についても思いを巡らせることとなります。健全で豊かな自然環境の保全は、村民が健康で文化的な生活を営むうえでも重要になります。

 この恵まれた自然環境を次世代に引き継いでいくことは、私たちの責務でもあり、改めて自然の恩恵なしでは生きていけないことを認識する必要があると考え、2018年に行政、村民、事業者が一体となった自然環境に負荷が少ない持続的発展が可能な社会構築に向け、世界一サンゴと人にやさしい村として「サンゴの村宣言」を行いました。

 サンゴの村宣言は、サンゴの保全を中心に環境、経済、社会の施策間で相乗効果を生み、村内のさまざまな課題を解決し持続的発展が可能な村づくりを実現しようとするものであります。

 2019年には、その取組が内閣府より認められ、SDGs達成に向け優れた取組を行う都市として、「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。

一例として、毎年実施しているサンゴの健康診断リーフチェックや、赤土流出防止対策として実施している「Honey&Coral Project」、3月5日(サンゴの日)には「Save The Coral Project」と題し、村全体を挙げビーチクリーン、陸の清掃、サンゴ苗の植え付けを行いサンゴ礁の再生に取り組んでいます。

 また、日本での導入は初めて、自治体単位では世界初となるGreen Finsを取り入れました。Green Finsとは、ダイビングやシュノーケリング事業者に対し、環境に優しいマリンレジャーの国際的なガイドラインを普及させていくことを通し、サンゴ礁など海の環境を保全することを目的としています。この取組を通して、海を守りながら楽しむという持続可能な海との共存を実践しています。

 さらに、恩納村には世界から優れた研究者が集まる沖縄科学技術大学院大学(OIST)があり、恩納村と連携したさまざまなイノベーション施策を行っております。

 養殖研究では、恩納村漁業協同組合と連携し、沖縄土産でも人気の海ぶどうや拠点産地に認定されている、モズクの養殖技術を進化させる取組を行っています。また、先進の解析機を駆使して、遺伝子レベルで健康管理し、品質や生産向上に役立てています。

 遺伝子研究では、世界で初めてOISTがサンゴの遺伝子を解読しており、サンゴ養殖・移植に活かして、環境変動に対応できる多様性に満ちたサンゴ礁の再生を目指しています。

 恩納村の恩という字は「めぐみ」とも読むそうです。恩納村は昔から海と山からめぐみを充分に受けて成長してきました。恩納村の観光業も漁業も海からのめぐみを受けています。豊かな自然から受け取った「恩(めぐみ)」を次世代につなぐために村民の声を聴き、協働で持続可能な村づくりに取り組んでまいります。