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一人ひとりが輝いて明るく、強く、豊かな未来を実現

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年10月23日

佐藤 俊晴山形県中山町長 佐藤 俊晴​​

 中山町は、山形県の中央部の、奥羽山脈と出羽丘陵に囲まれた山形盆地の西部にあり、面積31.15km²、人口10,630人の面積が山形県内で1番小さな自治体です。町の境界が河川で、特に北には「山形県の母なる川」最上川が流れています。西側は山間地となっており、町の総面積の3分の1を占めています。町周辺は、山形県の県庁所在地である山形市をはじめとする5つの市町に囲まれており、どこへ行くにも交通アクセスがよい環境にあります。

 基幹産業は農業で、平地には豊かな水田が広がるほか、さくらんぼ、桃、りんご、ラ・フランスなどの果樹栽培も盛んで、特にすももは豊富な生産量を誇っており、町商工会のゆるキャラ「すもものしずくちゃん」は、町のイベントなどで活躍しています。ちなみに、私の名刺にも、このしずくちゃんがデザインされています。

国指定重要文化財の旧柏倉家住宅と紅花畑
▲国指定重要文化財の旧柏倉家住宅と紅花畑

 小さな町ではあるものの、「お達磨の桜」や「楯の大イチョウ」といった悠久の自然を感じさせてくれる記念木、国指定重要有形民俗文化財「岩谷十八夜観音庶民信仰資料」、ひろびろとした空間でスポーツを楽しんでいただける「ひまわりグラウンド・ゴルフ場」をはじめとする各種スポーツ施設など、誇れるものがたくさんあります。近年では、当町の岡地区にある「旧柏倉家住宅」が令和元年に国指定重要文化財に指定されました。旧柏倉九左衛門家は、江戸時代以降周辺の分家とともに米だけでなく紅花などを生産して発展した豪農です。現在でも、黒塀に囲まれた旧家の屋敷群として現存しています。里山と一体となった豪農屋敷群を一族で形成していることは全国でも珍しいものです。

 また、山形の秋の風物詩と言えば、「芋煮会」です。当町でも、秋になると、最上川の河川敷で鍋を囲んで家族連れなどのグループが芋煮会を楽しむ様子が見られます。最上川は江戸時代には酒田港からの舟運が盛んで、町内には舟運の川湊があり、船荷の積み替えが行われる要地として栄えていました。その舟運に携わる船頭や商人たちが、荷揚げや荷待ちの逗留の間、棒鱈と里芋を材料に、川岸の松の枝に鍋を掛けて煮て食べたと言われています。これが芋煮会の始まりとされており、「芋煮会発祥の地 中山」としてさまざまなPR活動を展開しています。

 毎年9月の最終土曜日には、「元祖芋煮会 in 中山」と称して、最上川の近くで誰もが芋煮会を楽しめるイベントを開催しています。また、昨年は、江戸時代の味を再現した「北前芋煮」と名付けた棒鱈を使用した商品が開発され、町の新たなお土産品として町内外の方々に好評を得ています。

 このように、最上川は、昔から私たち中山町民の暮らしを支え、文化を作り、豊かな自然をもたらしていますが、一方では、災害と紙一重である一面を持っています。

垂直避難拠点
▲令和4年度から2年計画で工事を進めている垂直避難
拠点。国土交通省と協力している事業で、河道掘削の土
を利用している。

 以前から、大雨が降ると、最上川や町内を流れる石子沢川が増水し、浸水被害に見舞われることが度々ありました。先人の方々の努力と国・県をはじめとする関係機関のおかげで、排水機場が整備されるなど、安全対策が講じられてきましたが、最近の気候の変動に伴い、令和に入ってからだけでも、2年の7月豪雨、そして、4年の8月豪雨と大きな災害が頻発している状況です。町においては、この石子沢川の内水問題が喫緊の課題となっています。この問題を解決していくために、国と県の協力が必要不可欠であるため、「石子沢川流域治水勉強会」を設立して課題整理を重ねてきました。その中においては特に、「特定都市河川制度」について焦点があてられました。この制度の活用により法的枠組みを活用した流域治水の推進ができ、ハード整備の加速化が見込まれることや、国、県、市町村、企業等が協働で土地利用規制や流出抑制対策に取り組むことが可能になるというものであり、先進地視察や話し合いを経て、現在、石子沢川の特定都市河川指定を目指す方向に進んでいるところです。

 中山町の歴史や文化を育んだ川と相対し、将来にわたり町の人々の暮らしを守るため、特定都市河川指定を目指すとともに、できる限りの対策を講じ、安全・安心な町を築きたいと決意を新たにしているところです。

 そして、そのうえで、明るく、強く、豊かな未来を築き上げ、一人ひとりが輝く町を実現させたい。それが、私の願いです。