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地域に学ぶ

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年10月16日

池田 三男高知県町村会長・津野町長 池田 三男​​

 津野町は、高知県の中西部に位置し、高知市中心部から車で約1時間、面積197.85km²、人口5,300人ほどの小さな町です。

 高知県は、全国一森林率が高い県ですが、本町は四国山地に抱えられた急峻な地形で、町の約89%を山林が占め農地や宅地の面積比率は低く、西は日本最後の清流四万十川、東は日本カワウソが最後に確認された新荘川の源流域で、それぞれの川沿いに集落が点在しています。

 本町は、平成11年から国主導で進められた市町村合併の町です。三位一体の改革で地方財政の厳しさが増す中で、近隣市町村とのさまざまな合併パターンを模索しながら、合併について激しい議論が重ねられ、平成17年2月に2つの村が合併し誕生しました。この合併業務を職員として担当し、連日連夜の会議や住民説明会、住民投票の実施など大変な苦労もありましたが、貴重な行政経験をさせていただきました。特に、自分たちの地域は自分たちで守り活かそうと自分たちならではの地域をつくっていこうとする住民が多く、故郷への思い、誇りこそが地域の元気の源であることを学び、就任以来、毎年、各地区や各団体、グループとの座談会を行うなど住民に寄り添った行政を心掛けています。

 本町は、高齢化率が現在45%を超えており、限界集落ともいえる集落を含め83の集落があります。それぞれに課題を抱えており、町としても地域の特性に即した課題解決に取り組んでいます。こうした中、地域に住む人たち自らが地域を守り活性化を図っていこうとさまざまな活動を活発化させています。

 床鍋という集落では、小学校の廃校以来、急速に高齢化が進んできたことから、若者が中心になって「何とかしよう」と話し合いが重ねられ、平成15年に人を呼び込み賑わいをつくろうと旧校舎を宿泊施設と商店(集落コンビニ)、居酒屋がある施設にリノベーションし、集落で組織した団体が「床鍋森の巣箱」として運営しています。ここは、廃校利用では全国的にも早く、平成19年度の過疎地域自立活性化優良事例として総務大臣賞を受け、現在も地域の憩いの場として、また、見守り支えあいの活動拠点となっています。

 また、町内では、この「床鍋森の巣箱」の事例に学び、廃校となった小学校がある3つの地区が、農家食堂や豆腐などの加工品の生産販売、集落営農、田舎体験など、地域の特性を活かした活動を行いながら地域活性化に取り組んでいます。その他にも、棚田オーナー制度で棚田保全に取り組んでいる集落や坂本龍馬が脱藩した道を活かしたイベントで頑張っている集落など、自分たちの地域を元気にしようと活動を活発化させており、町の元気につながっています。

4年に1度開催される農村歌舞伎


▲4年に1度開催される農村歌舞伎。開催に向けて連日
連夜舞台づくりや稽古が行われ、集落は歌舞伎一色に染
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 こうした地域活動の中で、伝統文化の伝承を通じて活動している団体の1つに、高野地区の地芝居団体高野農村歌舞伎があります。昭和52年に茅葺屋根の回り舞台が重要有形民俗文化財として指定を受け、これを機に地域の住民の皆さんが復活させ伝承されています。4年に1度の上演ですが、その年の3ヶ月間は、連日連夜、地域総出で舞台づくりや稽古が行われ、集落は農村歌舞伎一色に染まります。その地域の活力はものすごく、伝統文化を守りながら地域の絆を強めている活動は、地域力、住民力のすばらしさを学ぶことができます。

 今、本町では、この住民力を観光振興につなげようと取り組んでいます。本町は、日本三大カルストの1つ四国カルストや日本最後の清流四万十川の源流点もあり、四国カルストは、四季折々の雄大な自然が織りなす風景や大自然が体感でき、近年は美しい満天の星空が見える場所としても多くのお客様にお越しいただいています。また、この観光で訪れた人たちに、町ならではの体験を提供する体験マルシェ「つのつねづね」を住民のアイデアで行っており、こうした住民主体の観光振興の動きにも期待を膨らませています。