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「みちのく」に吹く新しい風を感じて

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年8月21日

青木 幸保 平泉町長岩手県平泉町長​​ 青木 幸保​​​

世界遺産のまち
 平泉町は、岩手県の南部に位置し、面積は63.39km²と県内で最も面積が小さく、人口約6,900人の自然豊かな歴史と文化の薫る世界遺産を有するまちです。

 平安時代末期、奥州藤原氏が約一世紀にわたり、栄華を極めたその中心地であり、国宝中尊寺金色堂、特別史跡・特別名勝毛越寺浄土庭園をはじめとする数々の遺産を巡りに全国各地から参拝客も多く訪れます。

「平泉の文化遺産」が世界遺産に認定されたのは、平成23年6月です。その3か月前に東日本大震災大津波が発生しており、未曽有の被害を受けた東北地方に一筋の光が差し込んだように感じたものでした。

平和の理念を発信
 振り返ってみると東北の歴史は絶えず中央の侵略や干渉、身内による争いに戦乱が絶えず、荒廃と多くの犠牲が払われました。肉親を殺害され、すべてを奪われ、恨みもしたはずです。

 しかし、先人は要塞ではなく寺院を選択し、戦いではなく平和を選びました。そして、その理念は自然との共生、生きとし生けるものすべての平等と平和であります。平泉の文化遺産に込められた、この平和への理念を広く世界に発信するとともに人類共通の遺産として将来に伝えていく大きな責務を感じています。

平泉世界遺産の日
 平成26年3月には岩手県により、「平泉世界遺産の日条例」が制定され、平泉世界遺産について広く国内外の人々の理解を深め、次世代に継承するとともに、遺産を活用した地域振興を図ることとし、以来毎年6月29日は平泉世界遺産の日として当町主催の「平和の祈り」を開催しています。

 昨年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、現時点でも食料やエネルギー等さまざまな分野に影響を及ぼしています。平和がいかに尊いものか、この現実を目の当たりにして実感する日々です。

多くの遺産を有するまち
 当町には世界遺産の他にも、平成28年には世界かんがい施設遺産として「照井堰用水」が認定され、また同年農林水産省が創設した「食と農の景勝地」(現在はSAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域))として「日本のもち食文化と黄金の國の原風景」が認定されました。

 令和元年には、日本遺産として、「みちのくGOLD浪漫−黄金の国ジパング、産金はじまりの地をたどる−」が認定を受け、さらに令和5年には、日本農業遺産として「束稲山麓地域の災害リスク分散型土地利用システム」が認定され、これら当町の計り知れない魅力を今後のまちづくりにどう生かしていくかが問われています。

コンパクトなまち
 県内で最も小さな町が当町の特徴であり、庁舎から車で10分あれば各地域へ辿り着くことができます。そのため町民の多くが顔見知りであり、情報共有もスムーズで毎年200人ほどの町民が集まって盛大に行われる新年交賀会や2年に1回全行政区を回って行う地域懇談会も当町ならではの取組の1つです。

 まちづくりを進めるうえでの主役である町民の皆さんとお互いの顔が直接見えるという関係性は、大きな魅力であり今後とも大事にしていきたいと考えます。

町民総参加のまちづくり
 令和5年度、当町では初めてとなる地域おこし協力隊員を3人(出身:練馬区、福岡市、東大阪市)委嘱しました。デジタル化社会に対応するため、また農産物を利用した6次産業化を促進するためでありますが、地域の方々や行政と一緒になって新しい風を送り込んでいただいております。将来的には町内で起業し、定住していただければと期待しています。

 令和3年に供用開始した平泉スマートインターチェンジ周辺の開発も具体化に向けて動き始めました。また同年にスタートしたプログラミング教室には全国から受講生が集まっており、交流人口の増加による移住、定住につながってきております。

 人口減少社会の中にあって、「まちづくりは人づくり」の理念のもと、奥州藤原氏の歴史・文化を守ると同時に、新たな産業や取組への熱意と未来の創造に向け町民総参加のまちづくりを進めてまいりたいと考えています。