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島づくりへの思い

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年7月24日

東京都新島村長 青沼 邦和東京都新島村長 青沼 邦和​​

新島村は、東京から南へ156㎞、伊豆半島下田から南東へ35㎞に位置し、総面積27.54km²で、新島・式根島、それに鵜渡根島、地内島、早島の3つの無人島から形成されています。

新島は南北11.5㎞、東西3.1㎞の二頭形台地状の島であり、南側は標高300.7mの大峰山と抗火石を産出する石山があり、中央には本村集落、北には標高428.5mの宮塚山を境に若郷集落があり、2つのトンネルで結ばれています。

式根島は、新島の南西5.0㎞に位置し、南北2.3㎞、東西3.0㎞で周囲12.2㎞の海岸線は複雑に入り組んでいますが、最も高い神引山が標高98.5mと、起伏の少ない台地状の地形となっています。

令和2年初頭からの新型コロナウイルス感染症の世界的流行など、生活様式を一変させてしまう事態も発生し、当村も例外ではなくさまざまな面において影響を受けてしまいました。その新型コロナウイルス感染症も5月8日に国の感染症分類が2類から5類に移り、観光産業を主要産業とする当村は、やっとスタート地点に立つことができました。アフターコロナを見据えて、コロナ前のように多くの来島者を迎えて活気あふれる島に戻れるように、夏場の繁忙期を前に行政、村民一丸となって誘客にあたる覚悟で、さまざまな周知活動を行い始めたところです。

その矢先に、日本の各地において大規模な地震が発生し、地震の多い当村も他人事とは思えず心配しているところです。さらには、近年は大きな台風の襲来も見られ、科学の進歩や生活がどんなに向上しても、「自然と共生していることを忘れるな」と示唆しているように感じております。当村も、以前すでに大規模地震・台風の甚大な被害を受けており自然災害の恐ろしさを身をもって痛感しているところです。島で暮らす私たちにとって、自然との共生を開発の原点にした生活を築き、未来につながる住みよい島にするため全力を傾け、次世代にバトンを渡すことが、与えられた責務であると考え村政を進めているところですが、当村を取り巻く課題は多様化、複雑化しています。特に、人口減少、少子高齢化の進行は生産年齢人口の減少や社会保障費の増加等、さまざまな面での影響が懸念されます。

地域内の人口減少やコロナ禍で疲弊し、多くの従業員を抱えながらも後継ぎがなく高齢のため事業を閉じていく方など多くの問題を抱えた事業所があるのが現状です。事業所や店が閉じればそれに関連した人たちが影響を受け、ますます地域の産業が輝きを失っていきます。狭い地域の産業が輝きを失わないためにも、もう一度、地域の産業に従事し経営をしている方々の将来設計を伺い、行政として何ができるかを検討し、地域の産業の立て直しを今やっていかなければならないと痛感しているところです。また、アフターコロナを見据え、村の施策でさまざまな事業展開を行っていくうえで、今まで以上に住民の声を聴くために住民参加型の形態を多く取り入れながら、住民と一緒に考え、財政的に許される範囲で、将来につながり、住民が望む事業を行っていくことが大切であると考えております。

コロナ禍でも積極的に進めたことは、災害、特に南海トラフ巨大地震による津波から住民や来島者の生命を守るための事業の展開です。津波避難タワーの完成や新たな避難所施設の整備等を優先的に行い、さらに、大規模地震による津波からの避難方法も各地区の住民代表と検討し、最善の避難方法を住民へ周知徹底してまいりました。この対策が、もしもの時、住民や来島者の多くの生命を守ることにつながればと思っております。

地域住民が安心して暮らせるように生活環境・防災体制を整え、さらには、来島者の受け入れ態勢を充実させ、万が一に備えながらも楽しく、安心して島で過ごせる空間を多くの方に提供してまいります。

ぜひ新島村にお出でいただきたいと願っております。​