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地域資源を地域の活力に-グリーンエネルギーを活用したまちづくり-

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年7月3日

北海道寿都町長北海道寿都町長 片岡 春雄​​

寿都湾の恵みにより育まれた町

寿都町は、北海道南西部の日本海に面し、北海道後志管内の西部、道都札幌市と南の中核都市函館市のほぼ中央に位置します。

人口2,690人(令和5年4月30日現在)、地勢は寿都湾を取り囲むように弓場に形成され、総面積は95.25km²と北海道内179市町村中164位と狭いですが、海岸線は28.9㎞あり、漁業の営みを中心に集落が形成されてきました。

海岸に面している地勢であることから、基幹産業は漁業と水産加工業であり、かつて、明治、大正期にニシン漁の千石場所として栄華を極めましたが、現在は年間水揚量のうち約50~60%をホッケが占め、サケ、いかなご、ブリ、なまこ、ウニなど豊富な種類の水産物が水揚げされます。近年においては、原油価格高騰や海の環境変化に伴う漁獲量等に対する影響など不安定要素を解消すべく、活〆技術の導入など鮮度保持・品質管理の徹底や、放流や養殖にも積極的に取り組んでおり、「育てる漁業」の代表として、町の名前にちなみブランド化された「寿かき」は、4月下旬から7月上旬頃に旬を迎える町を代表する特産品の1つとなっております。

また、特産品の多くは寿都湾で水揚げされた魚介類を活用した水産加工品で、中でも「いかなご」を原料とした「生炊きしらす佃煮」は町内8社ある水産加工業者すべてで生産されている町を代表する特産品です。水産加工品はふるさと応援寄附金の主力返礼品となっており、直近5年間の納税額は1年あたり10~13億円で推移しており、大変ご好評をいただいております。


“負”の地域資源を逆手にとった風力発電事業

寿都町は、同緯度地域と比べて暖かく、年間降水量も少ない温和な気候と言えますが、全国でも有数の強風が吹く町です。「だし風」と呼ばれる強風は、漁業者等にとって大きな悩みの種でしたが、この地域特有の気象を逆手にとり、有効活用することを目的に、1989年に全国の自治体としては初の取組となる風力発電施設を設置しました。さらに、売電収入を目的とした風力発電施設を2003年に3基導入し、その後、2007年、2011年、2023年に発電規模をステップアップしながら増設し、現在は13基の風車が稼働しており、売電益は町の貴重な財源となっていると共に、町のシンボル的な存在ともなっております。


グリーンエネルギーを活用したまちづくりを将来へ繋げる

全国に先駆けてグリーンエネルギーを活用したまちづくりを推進してきましたが、その最中、2011年の東日本大震災による福島第一原発の事故は、エネルギー構成が大きく見直される契機となり、さらに2018年の北海道胆振東部地震により発生した北海道全域に及ぶブラックアウトでは多くの道民が改めて電気の有難さを実感することとなり、エネルギーの供給体制が注視されることで国のエネルギー政策に多大な影響を及ぼしました。

地球温暖化など環境問題が叫ばれる中、エネルギー資源をめぐる世界情勢の不安定さと国内の発電施設の安全面に対する規制の高まりを受け、さらなる再生可能エネルギーの利活用が望まれておりますが、本町においても、グリーンエネルギーを活用したまちづくりを次世代へとつなげ、今後の再生可能エネルギーを取り巻く情勢を見据えながら、町営での風力発電事業の運営という視点だけではなく、民間事業者との連携による、より効率的・効果的な事業展開が必要であると考えております。

地域で生産したエネルギーを地域で活用するエネルギーの地産地消や自給自足など、これまで培ってきたノウハウを最大限に活かしながら、新たな地域産業や雇用の創出へつなげ、地域経済を強化し、一方で、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」や北海道が提唱する「ゼロカーボン北海道」の方針に沿った、脱炭素の取組を進めることも求められております。

カーボンニュートラル実現へのチャレンジを進め、環境問題にしっかりと向き合うと共に、グリーンエネルギーを有効活用した本町ならではの地域の振興に寄与する施策を推進し、「みんなでつくろう寿の都」をスローガンに、今後もさらなる地域活性化に向け取り組んでまいります。