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健康づくりの取組の中でわかってきたこと

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年2月14日

埼玉県鳩山町長埼玉県鳩山町長 小峰 孝雄​​

平成20年7月の町長就任以来、「健康づくりを町政運営の柱に」ということで取り組んできた。著しい高齢化に備えるためだ。

町は、昭和40年代後半からの民間デベロッパーによる宅地開発が進み、バブルの前後に人口急増期を迎えその後減少に転じた。その地域だけで鳩山町の人口の6割近くを占めたこともあった。現在でも5割を超えている。いわゆる団塊の世代の割合が多く、急速な高齢化が進んでいた。現在では高齢化率45%を超え、県内で最も高齢化の進んだ町となった。

東京都健康長寿医療センターと「健康なまちづくり共同研究事業」、大東文化大学スポーツ健康学部と「筋肉トレーニング教室」、女子栄養大学との「食生活改善運動」など大学や医療機関と連携して、健康づくりを進めてきたが、成果とともにわかってきたことが二つある。

一つ目は社会参加の重要性である。高齢者が転倒による骨折や生活習慣病からくる脳出血や脳梗塞などから、寝たきりになるケースが多い。転倒防止のための筋肉トレーニングや生活習慣病予防の観点から適度な運動の必要性、食生活の改善は、さまざまな角度から指摘されている。

この運動、栄養と並んで「社会参加」の重要性がわかってきたのだ。「社会参加」というとやや難しいので、私は、「生きがいを持って生活することが大切で、できるならボランティア活動など社会的な関わりの中で生きがいを」と住民の皆さんの前では話すようにしている。

鳩山町には「健康づくりサポーターの会」という有志の組織がある。この会が中心となって、町内4カ所で「地域健康教室」が30〜100人の参加者で毎週開かれている。参加者はもちろん、ボランティアの皆さんの取組への意気込みは素晴らしい。

町では、この健康長寿の秘訣を「運動・栄養・社会参加」と定式化し鳩山モデルと呼んでいる。

二つ目は、健康寿命が伸びると介護保険給付費の削減に直結するということだ。健康づくりの取組の成果として、鳩山町の健康寿命は伸びてきた。男性の健康寿命は平成26年から5年連続県内1位である。女性の健康寿命も平成26年から3年連続県内1位で、その後やや順位を落としたが、県内トップクラスであることは間違いない。

この健康寿命の伸びと並行して、介護給付費が抑えられてきたのだ。その結果、今年度標準介護保険料を200円引き下げることができた。月額3,800円で、県内で最も低くなっているだけでなく、全国町村の中でも、低い方から4番目となっている。

考えればもっともなことだ。厚生労働省は、健康寿命について介護の必要がなく健康的に日常生活が送れる期間を示すとしている。健康寿命が長ければ、必然的に介護認定率は低くなり、介護給付費も抑えられるというものだ。結果として、介護保険料も低く抑えられる。

一方で、健康づくりを医療費の削減で語られる場合が多い。しかし、医療費は、高齢化が進めば進むほど高くなるので、自治体間の一人当たりの医療費を比較しても、健康づくりの成果を検証しにくい。

唯一、高齢化率を補正した医療費指数というのがある。各自治体の一人当たりの国保医療費を年齢補正したもので、全国平均を1としている。最新データでは、鳩山町の場合0・84で、年齢構成が同じならば、一人当たりの医療費は全国平均の84%で済んでいるということになる。県内でも低い方から4番目であるが、この医療費指数は認知度が低い。

健康のためには必要な医療もあり、他にも医療費はさまざまな要因で左右される。一概に健康づくりとの関連を直接的に比較するのは難しい。それに比べると介護認定率は直結している。

以上、鳩山町の健康づくりの取組の中でわかってきたことは、生きがいを持って生活する社会参加の重要性であり、健康づくりは介護認定率を低く抑え、結果、介護給付費や介護保険料を抑制することに直結するということだ。