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“胸湧きたち 未来へ歩み続ける 湯の郷・野沢温泉”を目指して

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年1月10日

長野県野沢温泉村長長野県野沢温泉村長 富井 俊雄​​

野沢温泉村は長野県の北部に位置し、三国山脈の傍系としてそびえる毛無山(1、650m)を頂点として、西側に流れる千曲川に向かって傾斜した山谷形で起伏の多い地形となっています。気候はアジア大陸からの影響を受ける典型的な日本海側気候で、日本屈指の豪雪地としても知られ、平成26年には1日の最大積雪量が110cmを記録しています。また、鎌倉時代中期から「湯山村」として歴史に登場してくる古くからの湯治場としても知られ、村内には数多くの源泉があり、「湯仲間」という組織が管理する共同浴場の「外湯」が13箇所点在しています。さらに、全国的に有名な漬物「野沢菜」の発祥地でもあり、秋になると温泉で野沢菜を洗う「お菜洗い」が風物詩となっています。

先人たちは、この「雪」「温泉」といった天然資源や「農業」などを有効に活用して、小さな村を観光地として発展させてきました。1911年(明治44年)日本にスキーが伝来して間もなく、野沢温泉スキー場の歴史は始まります。その後スキー場にはジャンプ台が整備され、昭和25年には第1号のリフトが建設されるなど設備が充実し、日本でも屈指の規模と設備を備えたスキー場として発展しました。平成30~31年のスキーシーズンには、人口3、500人足らずの村に40万人を超えるお客様にご来場いただきました。しかし、令和元~2年のシーズン以降、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴いお客様は激減しています。そんな中ではありましたが、平成2年の建設から30年が経過し老朽化した長坂ゴンドラリフトを世界最新鋭のゴンドラリフトに架け替えるとともに、地球温暖化による雪不足に対応するためスノーマシンを導入しました。ゴンドラリフトは令和2年12月に運行を開始し、スノーマシンの稼働によりシーズン当初から雪の確保ができたことで、多くのウィンタースポーツ愛好者にご利用いただくことができました。グリーンシーズン期には、日影ゲレンデに夏でもスキーができるサマーゲレンデ、ゲレンデ最上部から空中散歩を楽しめるジップラインを、上ノ平高原には山野草を楽しめるピクニックガーデンを整備し、通年観光を目指しています。これらの施設整備によりコロナ禍においても多くのお客様に訪れていただけたと考えています。

また、令和元年8月に国道117号線沿いに道の駅野沢温泉が開業しました。村内でとれた新鮮野菜の直売所や、地元野菜を多く用いた農家レストランも営業。なかでもオリジナルメニューとして野沢菜をルーに練り込んだ117っぱ(イイナッパ)カレーも好評です。翌令和2年には、原材料の生産、加工、販売を一体として行う6次産業化施設も整備し、豆腐と湯葉の製造を開始。道の駅のショップでお土産として販売するとともに、農家レストランや地元旅館・民宿でも提供しています。コロナウイルスによる緊急事態宣言が発出されたことで来場者は減少しましたが、宣言解除後の10月の来場者は大幅に増加しており、農業と観光の連携による農村地域の活性化の中心的な施設となっています。このように当村では、観光立村を掲げ村内の資源を最大限活用した観光振興に取り組んでいます。

近年、地球温暖化の影響から、いたるところで異常気象によるゲリラ豪雨や大型台風に起因する災害が発生しています。この異常気象はスキー場にも影響を及ぼしており、降雪時期の遅れや、降雪量の減少などの影響が出始めています。このような状況にある中、当村でも温室効果ガスの排出量を少しでも減らしたいと考え、農業水路を活用した小水力発電施設整備、公共施設を利用した太陽光発電など再生可能エネルギーの活用に取り組んでいます。今後も地域内の利用可能な資源の利活用を進めていければと考えています。

これらの取組により、第6次野沢温泉村長期振興総合計画に示されている将来像、“胸湧き立ち 未来へ歩み続ける 湯の郷 野沢温泉”実現に向けて地域住民、行政が一体となったむらづくりに邁進してまいりたいと思います。