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人をつなぎ、地域をつなぎ、未来へつなぐまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年7月27日

石川県能登町長  持木一茂石川県能登町長 持木 一茂

能登町は、平成17年「平成の大合併」により、能都町・柳田村・内浦町が合併し誕生しました。能登半島の北東部に位置し、富山湾に面しており、海岸線の大半は能登半島国定公園に含まれています。テレビなどでよく観られる冬の日本海の映像のような外浦の豪壮な海食景観とは違い、日本百景にも数えられる「九十九湾」など内浦の柔和な景観を有し、山・川・海の豊かな自然環境に大変恵まれている町です。

能登地域は、自然の恵みへの感謝の気持ちや神への信仰心が篤い地域でもあります。里山里海を活かし自然と調和した暮らしは「世界農業遺産」として登録されており、国内外から高く評価されています。

この里山里海の恵みを活かした私たち能登町の「まちづくり」の一端をご紹介します。

まず、里山を活かしたまちづくりです。町花「のとキリシマツツジ」は、能登にあるキリシマツツジのことで、18世紀に能登へ移入されたと言われ、樹齢100年以上、長いものでは200年を超える古木が愛好家やNPOによって保護・育成されてきました。平成28年には能登半島に分布する古木群が日本遺産の石川県版「いしかわ歴史遺産」に認定されています。現在、英国の富豪ロスチャイルド家が所有する巨大庭園「エクスベリーガーデン」へ寄贈する計画を進めており、インバウンドの増加が期待されます。

また、国会の場でも紹介された農家民宿群「春蘭の里」では、豊富な里山暮らし体験メニューを活かして県外から多くの修学旅行を誘致するなど交流人口の拡大に取り組んでいます。

次に、里海を活かしたまちづくりです。町には、恵まれた海洋環境を活かした、海洋深層水施設、のと海洋ふれあいセンター、石川県水産総合センター、金沢大学臨海実験施設など海に関する施設が多くあります。

昨年6月には、新たに金沢大学理工学域能登海洋水産センターを誘致し、新たな教育組織、生命理工学類に海洋生物資源コースを設立しました。多くの研究者や学生が集い、研究や開発が活発に展開され、地域と密着した新技術・新産業の創出や交流人口の拡大につながるものと大いに期待しています。

そして本年6月には、のと九十九湾観光交流センター「イカの駅つくモール」がオープンしました。観光案内所、レストランに加え、町の基幹産業であるイカ漁の展示スペースを設けました。また、遊覧船の運航、シーカヤックやサップの体験ができる海を身近に感じる施設となっており、交流人口の更なる拡大を期待しています。

最後に、この里山里海を活かした、まちの未来担うひとづくりの施策です。町内の小学校においては、町立小木小学校が文部科学省の教育課程特例校に指定され、小学校5・6年生において、年間35時間の「里海科」をカリキュラム編成し、里海の生き物や海洋環境、漁業や水産業など海に関わるさまざまな学習を実施しています。

また、町内唯一の県立高校の発展は町の発展になると捉え、平成28年に能登高校魅力化プロジェクトを立ち上げました。公営塾「まちなか鳳雛塾」の運営や、高校授業での連携などの取組に加え、令和2年度からは内閣府の「地域留学」事業に採択されました。全国で12校が認定されたこの事業では、将来の関係人口創出を見据え、他地域の高校2年生を1年間、能登高校に受け入れるものです。能登の里山里海を体験し、在校生や町民との絆が生まれることによって、生徒の成長や関係人口の創出に繋がるものと期待しています。

終わりに、以前は交通の便も悪く、能登へ訪れるにはかなりの時間を要しましたが、のと里山空港の開港、北陸新幹線の金沢開業に伴い能登へ訪れる観光客も増加するなど新しい人の流れができています。この新しい人の流れを止めることなく、町の基本目標である「人をつなぎ、地域をつなぎ、未来へつなぐまちづくり」を進めてまいりたいと考えています。