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県・近隣市町村と共に進めるまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年10月21日

奈良県町村会長 高取町長 植村 家忠奈良県町村会長・高取町長 植村 家忠

高取町は、日本の古代史のふるさと・飛鳥地方に位置する人口約6、700人の町です。町内には、古墳時代から飛鳥時代の貴重な遺跡が数多く残っています。また、日本三大山城といわれる高取城は、平成18年に日本百名城に認定されたことに加え、昨年放送されたNHKの特別番組では、「日本最強の城」の称号を与えられました。産業の面では、古くから薬の町として栄え、今でも製薬産業は町の主要産業です。

しかし、財政基盤は脆弱で、平成16年度から20年度までの5年間、実質収支が赤字となりました。私は平成20年3月に町長に就任して以降、町民の皆さんや町職員と一丸となって財政再建・行財政改革を推し進め、近年ようやく厳しいながらも安定的な財政運営を行えるようになりました。

また、全国的な人口減少・少子高齢化の波は、わが高取町にも押し寄せています。この10年で人口は約1、000人減少し、高齢化率は約40%に達しています。

このような中で、限られた財源とマンパワーを有効に活用して町の活性化を図るため、奈良県とまちづくり包括協定を締結しました。これは、まちづくりに前向きでアイデアや熱意のある市町村において、その方針が県の方針と合致するプロジェクトについては、県と市町村で協定を締結し協働で実施するというもので、本町は平成27年に町村で初めて協定を締結しました。協定に基づく計画には、現時点でハード・ソフト合わせて50以上の事業を計上し、県の支援を受けながらまちづくりを進めています。

そのうちの主な事業として、高取城跡の保存と活用を計上しています。上述のとおり高取城はまちのシンボルともいうべき史跡ですが、国指定史跡であるため整備が制限されることや、標高583メートルの山中に位置するという地理的条件等により、これまで本格的な整備が行われてきませんでした。町としては高取城跡を町の活性化に活用するとともに次の世代に引き継ぐため、トイレや案内サインといった周遊拠点の整備、景観向上のための支障木の伐採、倒木により通行に支障が生じている登城道の整備等を計画として計上しています。

高取城の城下町筋である土佐街道沿いには、今年度中のプレオープンを目指して新たな交流拠点施設を建設中です。ここでは定期的なワークショップを開催や、「薬の町」にちなんだハーブティーカフェのオープンを計画しています。この場所が都市住民と地域住民を結ぶ場として機能し、ここで生まれた新たな人間関係が将来的に高取町への移住のきっかけになってくれることを期待しています。

また、町内に数多く存在する古墳群を活かすため、古墳を通じたまち・地域の魅力化に関する事業も計画として計上しています。従前から継続して行っている古墳群の整備とあわせて周遊ルートや案内サインの整備を行うもので、隣接する橿原市・明日香村にまたがる広域的な整備を目指すものです。

そのほか、農業関連の事業も計上しています。ハード面ではバーベキューも可能な農業拠点施設の整備、ソフト面では高取町産農産物のブランド戦略展開事業や新規就農者の受け入れ・フォローアップ、また、空き家と農地を一体で提供できる仕組みづくりの研究等により、高取農業の魅力化を目指しています。

県との協定のほか、近隣市町村との連携も図っています。橿原市・明日香村と高取町の3市町村で「飛鳥広域行政事務組合」を結成し、観光や地域のPRだけでなく、廃棄物処理といった共通する行政課題にも取り組んでいます。この飛鳥地域の連携の成果は、奈良県内の市町村の先進的なモデルといえるものです。

また、古来より相互に交流がある飛鳥川流域の5つの市町村(橿原市・明日香村・田原本町・三宅町・高取町)により、地方版ナンバープレートの導入を目指し取り組んできました。昨年国土交通省において導入が決定され、一般アンケートによりデザインが選定された「飛鳥ナンバー」が、来年から交付されます。これにより、地域の知名度の向上、地域振興、観光振興などへの効果が期待されます。

このように、県や近隣市町村と連携した取組を進めることにより、高取町のポテンシャルを最大限に引き出し、この町の魅力をさらに高めてまいります。