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未来に向けた文化の融合

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年9月16日

千葉県横芝光町長 佐藤 晴彦千葉県横芝光町長 佐藤 晴彦

平成18年3月27日に山武郡横芝町と匝瑳郡光町の旧2町が郡界を越えて、千葉県内では唯一、合併して市制に繋がる特例要件である3万人に満たない人口約2万7千人の横芝光町が誕生しました。

成田国際空港の南、太平洋に面した九十九里海岸のほぼ中央に位置し、東京都心から車で一時間足らずの立地にありますが、ほとんどが平地であるという地形を利用した農業中心の町です。高齢化率は35%を超えており、少子高齢化と人口減少対策のため、地方創生を極めて積極的に推進しています。

合併前の横芝町と光町は、平安時代以前から現在の町の中心を流れる栗山川を境に、「上総の国」と「下総の国」と別々の国で各々の文化を形成してきました。

横芝地域には多くの古墳が確認されており、土器など貴重な文化財が出土されています。中台地区の大宮神社では毎年夏の終わりに「風祭」が開催され、梯子の上で演じられる珍しい「梯子獅子」が奉納されます。

一方、光地域の虫生地区の広済寺には800年以上の昔から現在まで、わずか30世帯足らずの小さな集落で受け継がれている仏教劇「鬼来迎」が、8月16日のお盆の終わりを告げる施餓鬼供養の後に奉納されます。この演劇は国の無形文化財に指定されており、地域の皆さん総出で上演され、県内各地から酷暑の境内に多くの観客が訪れます。また、1080年前に東国の平定のため京都から送られた成田山新勝寺のご本尊は、大阪からはるばる船で運ばれてきて、当町の尾垂ヶ浜に上陸しました。現在は浪切不動尊像が建立されており、年2回、成田山新勝寺の僧侶らによる大法会が開催され、当町の景勝地として子供たちを含む地域の皆さんにより美しく整備されています。

このように長い歴史の中で、今に繋げて築き上げてきた各々の文化を融合させて、新たな文化の創造ができればと切に願うものです。

しかしながら、合併して13年が過ぎた現在に至っても郡界を隔てた合併の弊害は残っており、環境衛生行政、水道行政が別組織のままで各々の料金設定も統一されておらず、衆議院小選挙区も別々であるため、衆議院選挙の際には2か所の開票所が必要になります。

また、町民の日々の暮らしの中にも文化の違いを感じとれますし、農業の営み方にも違いがみられます。

平成30年3月13日には、「成田国際空港の更なる機能強化」に合意をいたしました。

現在ある成田国際空港の2本の滑走路延長線上に位置する当町は、開港以来、航空機騒音と落下物の不安に悩まされてきました。また、成田国際空港周辺の自治体のうち、空港施設がある地域は都心へのアクセスが向上し、また税収入が潤沢となった一方で、当町の場合、空港から都心へのアクセス経路から外れていることや、滑走路、上屋といった施設本体が当町にないことにより、空港からの恩恵を受けている実感は少なく、自治体間で地域振興や財政面での格差が顕著になっている現実があります。

そのような中で、当町が航空機騒音をほぼ一手に引き受ける3本目の滑走路建設と夜間飛行制限の緩和を内容とする機能強化案が発表されましたので、町内の意見調整は非常に厳しいものがありました。私は悩みに悩みましたが、機能強化案の影響や今後の効果を総合的に判断し、この機会に乗り遅れることなく町発展に向けた取組を行おうと決断しました。

現在、町では九十九里海岸や栗山川などの自然を活かした観光事業の検討などを行っていますが、第2次横芝光町総合計画をはじめとした各種計画を実践することで少子高齢化と人口減少に歯止めをかけるよう、20年あるいは30年先の将来を見据えた政策を積極的に進めてまいります。