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若者の力で元気で豊かなまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年8月19日

宮城県丸森町長 保科 郷雄宮城県丸森町長 保科 郷雄

丸森町は宮城県の最南端に位置し、町の中央を流れる阿武隈川とその支流が形成する美しい渓谷や貴重な動植物が存在する風光明媚な町で、町域の70%が山林ですが、宮城県の県立自然公園に指定されている内川渓谷など森と川が織りなす自然景観は人気が高く、その中にある不動尊キャンプ場などはこれからの季節多くの入場者で賑わいを見せます。

本町は藩政時代から明治にかけて阿武隈川の舟運の中継所として栄えた歴史があります。今もそれを偲ばせるような阿武隈ライン舟下りや豪商の齋理屋敷が残っており、町を訪れる観光客の皆さんの目を楽しませています。特に、毎年夏に開催される齋理幻夜は、ひと晩だけの大正ロマンの町を蘇らせるというコンセプトの夏まつりで三十年の歴史があり、千基を超す絵とうろうが会場を彩り、幻想的な趣を醸し出して好評をいただいています。

町の位置が福島県に入り込んだような形になっており、東日本大震災の際には東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染被害が発生しました。何とか町民の安全・安心を回復しようと全戸除染や子どもの甲状腺検査、農林産物の検査体制の整備に努めました。事故現場から町中心部まで僅か60㎞、町最南端部では40数㎞の距離しかないのにも関わらず、県境を越えるがゆえに福島県と同様の支援が受けられなかったことには今でも釈然としない思いがあります。一時は風評被害もあり若者の町外流出や入込客数の減少に苦しみましたが、ここに来てようやく風評被害も和らぎ、入込客数も震災前の水準まで回復して来ました。しかしながら、まだ町内には除染作業で発生した廃棄物が25か所の仮置場に保管されたままであり、この処理が終わらないうちは本当の意味の復興は終わらないと考えているところです。

さて、本町は全域が過疎地域であり、最大の課題は少子高齢化と人口減少です。私は震災直前に町長に就任しましたが、これまで8年余に亘り、「豊かで元気なまち」を目標に、若者が住める町、若者が残れる町をめざして企業の誘致に力を入れ雇用の場を確保する一方、子育て支援のためいち早く第二子以降の保育料無料化や18歳までの医療費の無料化などを行ったほか、若者向けアパートの建設、宅地造成などを行って来ました。

これらの施策は一定の効果はあったものと自負してはいますが、それでもなお町の人口は8年間で14%減少しており、新たな発想にもとづく施策の強化が必要と痛感しています。

昨年度までの4年間、町は職員の政策研修として「一丸塾」を実施しました。町の課題を取り上げ、解決へ向けた若い考え、力を引き出すために私自身が塾長となって、まちづくりへの思いを伝えながら、町の将来に常に携わって行く職員の力を高めることに意を用いたところです。

「まちづくりは人づくり」にあるように、いかに能力を引き出し、手立てを講じ、町の発展につなげていくかが重要です。誰しもが自由闊達に物が言える風通しの良い環境で、お互いが理解しあいながら職員が伸びること、自ら課題を見つけ取り組むことが必ず町発展のため、町民のためになるものだと考えていますし、職員もそのような考えを共有しながら自らが進んでやるべき仕事を見つけることが出来れば、そこには自ずと夢と希望が見えてくると信じています。

今、町はいろんな発想を持っている若者が活躍できるよう、地域おこし協力隊の活用を進めています。自分なりの夢を持ち、色々な取組を進める十数人の隊員が町で活動しており、定住に結びつきつつあります。見知らぬ土地で活動している若者を見ると、実に頼もしく見えます。

人口減少に歯止めをかけるのは厳しい現状ではあるものの、希望を失わず、発想を変え、自分たちが住みたい町はどんな町なのかを考え行動できる若者が一人でも多く増えることを願っています。