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建築のノーベル賞

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年5月13日

岐阜県大野町長 宇佐美 晃三岐阜県大野町長 宇佐美 晃三

このほど、2019年のプリツカー賞に磯崎新氏(87)が選ばれました。日本人建築家としては丹下健三氏(1987年)、槇文彦氏(1993年)、安藤忠雄氏(1995年)、妹島和世氏・西沢立衛氏(2010年)、伊東豊雄氏(2013年)、坂 茂氏(2014年)に続き8人目の受賞となります。

私も現在は岐阜県大野町長として行政の端くれに在籍していますが、中学生から建築を志して40年以上建築にかかわってきた者としてとてもうれしく思います。

この賞は1979年にアメリカ人実業家ジェイ・プリツカーにより設立された賞で、RIBAゴールドメダルやAIAゴールドメダルに比べて歴史は浅いのですが、建築業界では最も権威のある賞のひとつとされており、「建築のノーベル賞」とも言われています。

本来ならばもっと早く受賞できていたと思いますが、彼は賞設立から10年近く審査員を務めていたため、受賞が遅くなったと思われます。

彼は1931年大分県で生まれています。1954年に東京大学工学部建築学科を卒業し、丹下健三の指導で建築家としてのキャリアをスタートさせ、大阪万博のお祭り広場も手がけています。以来ポストモダンの旗手として活躍され、北九州市立美術館、つくばセンタービル、水戸芸術館、ティーム・ディズニー・ビルディング、カタール国立コンベンションセンター、上海シンフォニーホールなど、世界各地に100以上の作品を設計しています。

過去の受賞者としては、ルイス・バラガン、I・M・ペイ、フランク・O・ゲーリー、レンゾ・ピアノ、ノーマン・フォスター、ヨーン・ウッツォン、そしてあのザハ・ハディドらがいます。

まさに錚々たる顔ぶれで現代建築の代表的な建築家ばかりです。そして、彼らが設計した建築がそれぞれの地域で圧倒的な存在感を示して、地域の活性化や観光にも大きな役割を果たしていることは間違いありません。

たとえば、I・M・ペイが設計したガラスのピラミッドができてから入場者数が倍増したパリのルーブル美術館はもちろん、フランク・O・ゲーリーの設計によるスペイン北部バスク地方のビルバオに建つグッゲンハイム美術館や、妹島和世と西沢立衛が共同設計した金沢21世紀美術館には毎年100万人が押し寄せています。

ヨーン・ウッツォンが設計したシドニーのオペラハウスはコンペで勝利を収めたものの、技術的にも予算的にも当初は実現不可能と言われたそうです。しかしウッツォンや設計チームの努力で完成し、今ではシドニーの観光名所となりユネスコの世界遺産にも登録されました。

東京オリンピック・パラリンピックまであと500日を切りました。着々と工事が進む新国立競技場ですが、巨額の建設費をめぐって白紙撤回されたザハ・ハディド案を皆さんは覚えていますか?

私はなんとかあのデザインを実現して欲しかったと、今でもとても残念に思っています。彼女は2016年に急死してしまいましたが、アントニオ・ガウディのサグラダファミリアのように、残ったメンバーが最後まで彼女のデザインコンセプトを守りながら、世界に誇れる建築を作り上げてくれたに違いないと考えています。そして54年前に完成した丹下健三の国立代々木競技場とともに、新たな世界遺産に登録されたかも知れませんね。

私は、もうしばらく現職の立場にとどまり地域のまちづくりに全力で頑張る覚悟ですが、いずれ、カメラをぶら下げて日本中・世界中の建築を見て回ることを夢見ています。