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温泉は地球から贈られた奇跡の水

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年3月11日

北海道豊富町長 工藤 栄光北海道豊富町長 工藤 栄光

我が町、豊富町は明治36年に入植されて以来115年の歴史の浅い町です。日本の北端、稚内市から南へ約40㎞の人口4,000人弱の酪農と観光を主幹産業とする町です。開拓の歴史は日本全国苦闘の連続であったと思いますが、当町の歴史もまた、寒冷地で海抜5mという湿地帯で、3年に一度の冷水害との正に死と隣合わせであったと言われています。以来、生きるための産業の営みは、昭和30年前後より畑作から酪農への転換を模索し、数々の試練を経て現在の酪農の郷に至っており、先人の苦闘の歴史に大きく敬意を表すところです。

当町、先人の苦労に支えられて、現在、日本一を自負している財産が三つあります。

一点目が、先程の「酪農の郷」から生産される「豊富(サロベツ)牛乳」です。北海道内に一、100店舗を有するコンビニエンスストア「セコマ」の飲料牛乳とヨーグルトは、全て町内の工場「豊富牛乳公社」で製造され、町内牛乳生産量約68,000tのうち60%の46,000tを販売しており、味も格別の評価をいただいています。この高い評価の背景には、農業者の情熱に支えられた「土・草・牛」、つまり、良い畑づくり、良質な草づくり、そこから育つ優良な牛から生産される美味しい牛乳が日本一を自負する財産となっています。

二点目が「利尻・礼文・サロベツ国立公園」の玄関口となる「サロベツ湿原」です。ラムサール条約の登録地でありエゾカンゾウなど約七十種類もの花々が咲き、国内では唯一と言われている「シマアオジ」の繁殖地でもあります。この他にも、春秋には数千羽のオオヒシクイが羽を休めるなど渡り鳥にとって貴重な中継地で、最近では個体数の増加も要因の一つと言われていますが、タンチョウの営巣地にもなっています。本湿原は、低地における高層湿原としては日本最大と言われています。

三点目が、表題の「豊富温泉」です。日本最北の温泉郷でもある「豊富温泉」は油分を含んだ泉質で、アトピーや乾癬などの皮膚疾患に効能があると高い評価をいただいており、この効能を求めて全国から多くの湯治客が訪れています。このような泉質は、世界的に珍しく、「奇跡の湯」「救いの湯」とも呼ばれ、全国の皮膚科の医師等の紹介で療養に来られる方も多く、在学中のお子さんのために「湯治留学制度」を設けて道外からも小中学生を受け入れ、通学しながらの湯治療養も可能としています。また、湯治の中心となる町営入浴施設「ふれあいセンター」は平成29年7月に厚生労働省より「温泉利用型健康増進施設」の認定をいただき、入浴料や交通費が医療費控除の対象となることで、特に遠距離の方々には念願であったこともあり、昨年一年間で181件と全国21施設の中では突出して多く、驚異的な利用数とまで言われています。

この他にも湯治療養者に対する支援体制は、共感・共鳴していただく民間の方々の支援と共に、一歩一歩ではありますが、湯治療養者の体調管理や入浴方法、湯治についての質問にお答えするための健康相談員やコンシェルジュデスクの設置、長期療養者のための宿泊施設「湯快宿」などの整備をしています。我が町が誇る豊富牛乳を中心とした「健康な食」・「ストレスが解消される広大な大地」・「地球から贈られた奇跡の水・豊富温泉」で心と体を癒していただければ幸いです。