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花はすとの出会いとまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年2月4日

福井県南越前町長 岩倉 光弘福井県南越前町長 岩倉 光弘

南越前町は、平成17年1月に南条町、今庄町、河野村の3町村が合併し誕生した、自然豊かな海・山・里と歴史的な文化遺産に恵まれた町であります。

当町における花はすの歴史は、福井県農業試験場に勤めておられた地元の方が、人間魚雷「回天」特攻隊として昭和19年に戦死した友人の供養花として、昭和49年に花はすの試験栽培を開始したことが始まりであります。

切り花としての花はすは、7月の新盆に東京方面、8月の旧盆に大阪方面への出荷時期を迎えるため、その時期に蕾であることが重要でありますが、当町の気候・土地条件が適合したこと、米の生産調整による補助金があったことなどが好条件となり、昭和51年に16戸の農家で花蓮生産組合を結成し、面積15‌haの日本一の生産団地が出来ました。

平成元年頃、竹下登元総理大臣によるふるさと創生が盛んに叫ばれ、1億円を活かした地域おこしが全国的に行われていました。私はその当時、南条町役場の職員であり、地域づくりの担当として、日本一の生産を誇る花はすを活かしたまちおこしを進めようと、花はす公園の整備に取り組みました。

花はす公園は、平成5年6月にオープンし、それ以降毎年「はすまつり」を開催しており、昨年で26回目を迎えました。開園にあたっては、京都フラワーセンターに大変お世話になり、当初2ha‌36品種でのスタートでしたが、2年目からは中国浙江省杭州市と友好交流を図り、さらに日本花蓮研究会の皆さん方と交流を深めながら、世界の花はすを含め品種を135品種に増やし、栽培面積も4haと規模を拡張してまいりました。湖や沼に自生している蓮を除くと、面積・品種どれをとってもまさに日本一の花はす公園であると自負しているところであります。

花はすは、非常に神秘性があります。早朝花が開くときに開花音がすると昔から言われており、また清らかさの象徴として称えられ、極楽浄土に生まれ変わる際には、蓮の花の上に生まれ変わると言われております。明け方の空の光を浴びて開花するその瞬間をカメラに収める早朝撮影会は、はすまつりのメインイベントとして人気があります。

ただ、花はすは、お盆にお墓に飾る花(仏の花)の印象が強く、暗いイメージがあるため、まちおこしのために明るい「はす坊」のキャラクターを製作し、町のシンボルとして集落案内板や公共施設にも活用してきました。

また蓮は、葉っぱから根っこに至るまで薬用効果があり、特に蓮の実は、中国では漢方薬として使われ、「百年を経た蓮の実を食すると髪黒くして老いず」と不老不死の薬と言われております。千葉県検見川で2000年前の地層から出てきた蓮の実が開花した大賀蓮は有名であり、蓮の実の生命力の強さを物語っています。この薬用効果を活かした蓮料理や土産物の研究は、観光産業の必須条件であり、これまで研究を重ね、商品開発を行ってまいりました。

私が町長に就任してからになりますが、平成30年5月に、台湾の台南市白河区と友好交流の協定締結をさせていただきました。白河区は、蓮の産地で有名であり、レンコンと蓮の実を中心に食用として活用しています。一昨年から交流がスタートし、お互い3品種ずつ種を交換して栽培し、それぞれのはすまつりで見事開花したことを大変うれしく思います。白河区とは、蓮を通したスタートでありましたが、今後は、教育・文化・観光など幅広い分野で交流を深めていきたいと考えております。

さて、4年後には北陸新幹線が福井県敦賀市まで開業します。その際には、7月から8月にかけて、ぜひとも南越前町の日本一のはす公園にご来場ください。