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「持続可能な日本で最も美しい村」をめざして

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年1月7日

 岡山県新庄村長 小倉博俊氏 顔写真岡山県新庄村長 小倉 博俊

新庄村は岡山県の西北端で、鳥取県との境にある村である。中国山地の尾根部にあり、毛無山を主峰とする1000m級の美しい連山に囲まれ、岡山県下三大河川の一つ旭川の源流域にある。本村の面積は67.11㎢で山林が91%を占め、谷間に沿って標高450mから600mに集落が点在している典型的な山村地域である。年間の平均気温は、11℃であるが、年間の降水量は2300㎜もあり、冬の積雪量もかなりあって3月頃まで白銀の眺めとなる。

本村は、明治5年の村制施行以来一度の合併もなく、大字が無いのが特徴である。

さて、8年間の充電期間を経て、平成26年に村長に就任して直ちに人口減少ストップ宣言や雇用創出を掲げた。村の基幹産業でもあった農林業の再生は、雇用の場の確保にもつながる。現在30代の若者の山林事業への就労が増えて来つつある。今後は、間伐材を金に換える仕組みを作る予定だ。専用の集積場を設け、村外のバイオマス発電用燃料や、かつて産地であったシイタケ菌の培地として販売ルートを確保したい。

農業は、有機農業者を育成する研修所「村有機農業サポートセンター」を機能強化し、新規就農者の受け皿にできないか構想中である。また、村の特産品である餅米「ヒメノモチ」は、道の駅をリニューアルし、母体の㈱メルヘンプラザを中心に出口戦略に力を入れようとしている。今後は、標高の高い旭川の源流域という恵まれた環境にあることを広く発信していく。さらには、交流人口の増加も期待し、がいせん桜通りを中心としたグランドデザイン策定にも着手した。この通りの魅力は、人々の生活感が感じられることであるが、残念ながら空き家が点在するようになってきた。そこで、住民の声を聞きながら滞在型観光の拠点として、現代版宿場町の賑わいを取り戻していきたい。その第一弾として、今年度は念願であった古民家「旧須貝邸」を宿泊所に改修する工事に着手した。ここで提供する地元食材を使ったメニューの作成を、東京にある有名料理店と連携することも考えている。

また、がいせん桜通りには、最初の地方創生事業交付金を活用して古民家を改修しコワーキングスペースを設けた。インターネットを利用したテレワークに取り組んでいるが、引き続き地方創生として雇用の創出につなげていきたい。

悩みは地方の人口減少に歯止めがかからないことだ。子どもの数もしかり。10年前と比べて当村の中学生は、60%減少している。しかし、昨年一昨年と社会増が続いた。転入で目立つのが30代女性のUターンや移住。おかげで2017年の合計特殊出生率は1・92と県の1・54を大きく上回った。来春は保育所の定員30人を超過する見込で、嬉しい悩みとなっている。そこで、子育て世代を包括的に支援するセンターを設置し、移住につなげていきたいと考えている。

教育に目を向けると、新庄村には小学校と中学校が一つずつある。学校への人的及び財政的支援は手厚い。「教育立村」として、先人たちが守ってきた自負は今も受け継がれている。なぜ、平成の合併に参加しなかったのか。もし、周辺自治体と合併すれば、人口の少ない新庄村の学校は吸収されて消滅するおそれがある。これが合併をしなかった理由の一つでもある。それほどに教育は大事であるし、村の核となるものである。

学校現場も変わってきた。年度からいよいよ小中一貫教育校として新たなスタートを切ろうとしている。地域に根ざした特色ある学校づくりに学校・家庭・地域が一体となって取り組もうとしている姿が見えてきた。歴史と文化と美しい自然に恵まれた環境を充分に享受し、健やかに成長した新庄っ子が次世代を担う若者として活躍してくれることを心から願っている。

9月、6期目が始動した。地域の経済循環を高め、持続可能な日本一の村を実現していきたい。もちろん課題は多い。しかし、それ以上に夢と希望を感じている。