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小さな村にある大きな希望

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年9月17日

岩手県普代村長  柾屋 伸夫岩手県普代村長  柾屋 伸夫

北緯40度線上にある普代村は岩手県にある太平洋に面した村で、北緯40度線上では世界最東端に位置しています。人口約2,700人、面積約69平方キロメートルと小さな村ではありますが、雄大な自然に囲まれた大きな希望あふれる村です。

世界につながる青の国

基幹産業である水産業は、暖流と寒流が交わる海を利用し、定置網漁やウニ、アワビの採取が行われています。ワカメやコンブの養殖業も盛んで、漁期に入ると家族総出のフル回転で作業を行います。農林業ではホウレンソウのハウス栽培や冷涼な気候を生かした原木シイタケ作りも盛んです。どちらの産業でも後継者不足が懸念されており、漁業就業者育成協議会の設立や新作物チャレンジなど、さまざまな支援も行い、担い手育成のための助成などにも努めています。

観光資源の中心は雄大な自然景観といにしえを伝える歴史です。観光交流の拠点となる普代浜園地「キラウミ」では、ビーチバレーボール大会やバーベキューなどのおなじみのイベントに加え、新しい試みのビーチヨガ、グラウンドゴルフ大会など、新しい観光の在り方も創出しています。伝統文化の中心となるのは「鵜鳥神楽」。新春の三陸沿岸各地を巡行する廻り神楽で、平成27年には国の重要無形民俗文化財に指定されました。このほか、迫力の演奏が魅力の「ふだい荒磯太鼓」などもあり、新しい郷土芸能として人気を博しながら、伝統を作っています。

普代村を訪れた人たちは普代を「青の国」と呼びます。普代村の青い海、青い空は世界中につながり、この地で行われる営みは魅力となり、青を通じて世界中に発信されています。

大震災からの復旧復興

たくさんの魅力にあふれる普代村ですが、平成23年3月11日に発生した東日本大震災による大津波ではその被害を免れることはできず、先に紹介した産業、観光は大打撃を受け、伝統文化も存続の危機に立たされました。ですが先人が築いた防潮堤・水門が効果を発揮し、多くの村民の生命と財産を守ってくれました。その誇り高き先人の血を受け継ぐ我々村民は、決死の努力で復旧復興に取り組み、完全復興を成し遂げることができました。県内外の市町村や企業をはじめ、本村に縁のある全国の皆さまからいただきました数多くのご支援に改めて感謝を申し上げます。

押し寄せる人口減少の荒波にも「消滅してたまるか」との熱い思いを胸に、力強く抗うよう、地方版総合戦略の展開に力を入れています。具体的には村の魅力発信や観光・交流の拡大をけん引する村づくり会社「㈱青の国ふだい」を設立し、改修した三陸鉄道普代駅の観光センターでの本格稼働にこぎつけました。さらに「華のまち普代村構想プロジェクト」として静岡県河津町から河津桜の苗木を寄贈いただき、役場庁舎を含め、村内各地に植樹することができました。

結婚や子育て、安心な暮らしなどの支援、若年層の定住などの対策も行い、出生数の大幅な減少には歯止めをかけることができました。しかしながら、依然として人口減少が続く厳しい状況となっています。今後も若年層の支援などにも一層努めてまいります。

総合戦略にも掲げる「『まち』が元気で、『ひと』が輝き、『しごと』と『くらし』が調和する村づくり」を達成できるよう、今後も総合戦略の総仕上げを図りつつ、後期総合発展計画事業の着実な推進を図り、魅力などがますます高まる「青の国」づくりに、総力を傾注して取り組んでまいります。