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地域活動に原点あり

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年7月30日

兵庫県神河町兵庫県神河町長  山名 宗悟

雪彦峰山県立自然公園は、兵庫県のほぼ中心部に位置し、日本三彦山の一つとして知られる雪彦山や福知渓谷とあわせて峰山・砥峰高原からなる山岳高原地帯で、あるがままの自然が保存されていることから四季折々にふれ様々な表情を見ることができます。

この中にある約90に及ぶススキの群生地「砥峰高原」の麓、川上区で60年前、私はこの世に生を享けました。このススキの群生を未来に残していくために、川上区では、毎年3月に「山焼き」を行っており、山火事を事前に防ぎ、また新芽の発芽を促しています。この行事は戦前から行われており、伝統行事として定着しています。

さらに毎年8月23日には川上区で地蔵盆が開催されます。その際に各隣保で「花だんご」が作られ、福田寺境内にある「壇の地蔵」にお供えされています。この「壇の地蔵」は「安徳地蔵」とも呼ばれており、源平合戦最後の壇ノ浦の戦いで入水された安徳天皇と平家一族の冥福を祈るための地蔵です。同地区は平家落人伝説が今なお残るなど、伝統と歴史薫る区として活動しています。

このような区の活動を、地域活性化の起爆剤として捉え、多くの方に高原の魅力を知ってもらいたいとの思いで、平成10年(1998年)に「砥峰高原」四季彩実行委員会を立ち上げ、4月には「山焼き」、9月には「観月会」、10月には「ススキまつり」と年3回のイベントを開催することを決定しました。今ではイベント日のみならず、ススキの新芽で一面が緑の絨毯となる初夏から、背丈を越えるほど成長するススキが映える晩秋にかけて、多くの来場者で賑わうほどまでの観光地に成長してまいりました。

町長就任後には、世界的著名な小説家村上春樹氏原作で2010年公開映画「ノルウェイの森」のメインロケ地になったことから、砥峰高原の魅力を全国に発信することができました。その後も、大河ドラマ「平清盛」や「軍師官兵衛」のロケ地になるなど、神河町を代表する観光イメージリーダーとなったと確信しています。

また昨年、神河町に新たな宝ものが二つ誕生しました。まずは、昨年4月に日本遺産登録された「銀の馬車道・鉱石の道」、その遺構であるマカダム式舗装された馬車道が現存することが確認された吉冨畑川原付近に、中播磨地域初となる道の駅「銀の馬車道・神河」が11月25日にオープンしました。既に7万の来場者を迎え、神河町の観光情報の発信基地としての役割を発揮しているところです。

さらに、砥峰高原に隣接する峰山高原に、国内では14年ぶりとなるスキー場「峰山高原リゾート ホワイトピーク」が12月16日、産声を上げました。このスキー場建設は、高原内に建つホテルの冬の魅力づくりとして、標高930~1、077mの立地で人工降雪機によるコース形成をしました。阪神間からのアクセスの良さ、また、高原の地形や頂上からの眺望の素晴らしさなど、町としても高原の冬の集客と雇用の創出が見込めることから、地域資源に磨きをかけて再生させる、神河町地域創生の一大プロジェクト、そして企業誘致の視点でスキー場整備に着手しました。

オープン当日は、白銀の世界で多くの方々に思い思いのシュプールを描いていただくとともに、シーズン総来場者数は6万人を超え、大いに賑わいを見せました。この新たな人の流れを、確実に四季を通じた人の流れに繋げるとともに、町内全域に広げていきたいと考えています。

最後に、私は、町長に就任する前、第2代「砥峰高原」四季彩実行委員会の委員長を務めさせていただきました。「地域資源の魅力を最大限活用した交流人口の更なる増加から移住・定住につながる仕組みや仕事づくりに取り組み、その魅力発信に努める」ことを中心にまちづくりを進めていますが、今思い起こせば、私の地域創生の原点は、「砥峰高原」四季彩実行委員会で実践してきた経験であり、どんな困難が立ちはだかったとしても乗り越えていけると考えられるようになったと思っています。

引き続き、先人たちが守り続けてこられました地域資源を大切に保存していきながら、さらに磨きをかけ、まちの宝ものとして大切に育てていき、多くの人が集うまち『神河町』への挑戦を全力で取り組んでまいりたいと思います。