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心地よく健やかに暮らせるために みんなでつくる鳴沢村

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年6月1日

山梨県町村会長 鳴沢村長山梨県町村会長・鳴沢村長  小林  優

鳴沢村は、平成25年に世界文化遺産として登録された「富士山」の北側に位置する高原の村で、鳴沢と大田和の2つの集落で構成するコンパクトな村です。また、集落の南側には、鳴沢村「字富士山」が広がり、赤松や唐松を主体とした森林には、約460haの別荘地が広がり約3千棟の別荘や保養所等が点在しています。この「字富士山」は、富士山頂まで続いており、夏の観光シーズンには、鳴沢村の人口を超える大勢の方が高原でのスローライフを楽しんでいます。

鳴沢村は、富士五湖地方のほぼ中央に位置し、集落を東西に走る国道139号線によりGWから11月上旬の紅葉シーズンまで大勢の観光客で賑わいます。鳴沢村に春を告げる花として、4月下旬には、道の駅「なるさわ」周辺に自生した約2千株の「ミツバツツジ」が開花し赤松林は薄紫色に染まり、GW前半には、大勢の観光客が観賞や撮影に訪れます。観光最盛期の7月・8月は、道の駅において「なるさわ収穫祭」、「ブルーベリー祭り」などのイベントを開催し、道の駅で販売されるキャベツ、スイートコーン、ブルーベリーなどの新鮮野菜を求める県内外の観光客により活気に溢れています。

村から見る富士山は、左右対称で山頂の中央部に「白山岳」の峰がそびえ、その左右に小さな峰を見ることが出来ます。村の年配者は、子どもの頃から富士山を描くとき3つの峰を必ず描きます。この峰が3つある富士山を「三峰富士」と呼び、富士山周辺の市町村でも限られた場所でしか見ることが出来ません。特に、紅葉台から望む富士山は、均整の取れた富士山で、東に広がる稜線は、障害物がなく葛飾北斎が描いた「山下白雨」を重ねることが出来る場所の1つと考えています。

村の平成30年3月1日現在の人口は3,162人で、平成24年をピークに最近は若干の減少傾向となっています。少子化が進行する中で転入者による社会増により人口減少は小幅に留まっていますが、人口減少対策は鳴沢村が抱える課題の1つと捉え、無医村だった鳴沢村にクリニックを誘致しました。このことは、村民にとって身近な村内で医療を受診できるという安心感の向上に繋がります。今後は、着実に到来する高齢化社会を見据えた在宅医療などに、クリニックと連携し積極的に取り組む必要があります。

昨年11月18日には、山梨県町村会と山梨大学が協働した地域の農業、食、環境、経済の課題解決と若者の定住促進により持続的に繁栄する地域社会の構築を目的とする連携リレーシンポジウムが開催されました。平成30年度では、新たに山梨大学と連携協定を結び、鳴沢村における、今後の観光まちづくりビジョンを策定するための共同研究や地域の関係者を含めたワークショップの開催を予定し、将来の観光の在り方を探っていきたいと考えています。

鳴沢村には、伝統野菜の1つであり、鳴沢村が原産とされる地菜の「鳴沢菜」が江戸時代から富士北麓地域で広く盛んに栽培され、長く厳しい冬場の貯蔵野菜として活用されていました。近年では、野沢菜などのアブラ菜科との近親交配により品質の低下が見られるようになったため、平成17年に産官学共同研究により優良系統の選抜を行い、根が太く葉がしゃきしゃきしているなど、本来の性質を持ち合わせた系統の育成に成功しました。それぞれの地域には、長年培われた伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地の特性が、品質などの特性に結びついている産品があります。鳴沢村では鳴沢村農業協同組合が中心になり、この「鳴沢菜」の名称を知的財産として登録し、保護することを目的に、農林水産省へ地理的表示保護制度の申請を行うことに対し登録費用の助成を行います。また、鳴沢菜の生産拡大を推進するために生産農家に対し助成を行います。

町村週報の読者の皆様におかれましては、富士北麓地域に来られた際に、一度鳴沢村に立ち寄り大自然が作り出したおいしい水、おいしい空気、新鮮な野菜や鳴沢村から見る富士山を思いっきり堪能して頂きたいと思います。

結びになりますが、子どもからお年寄りまで、安全に安心して暮らせることができ、若い力の溢れる賑わいのある村を目指して「心地よく健やかに暮らせるために、みんなでつくる鳴沢村」を村民の皆様と築くことに全力で取り組んで参ります。