全国町村会(会長 山本文男 福岡県添田町長)と全国市長会、国民健康保険中央会は平成14年12月19日、17日に厚生労働省が示した「医療保険制度の体系の在り方」「診療報酬体系の見直し」について(厚生労働省試案)に対して、下記の意見書を決定しました。(PDFファイルで一括ダウンロード (PDFファイル:11KB))
平成14年12月19日
全国市長会
全国町村会
国民健康保険中央会
全国市長会、全国町村会及び国民健康保険中央会の国民健康保険関係団体は、国民全体の給付と負担の公平を図り、安定した財政運営による国民皆保険体制を堅持するため、すべての国民を通ずる医療保険制度の一本化を主張してきた。
今般、厚生労働省試案として「医療保険制度の体系の在り方について」が公表され、同試案において給付と負担の公平の観点から医療保険制度の一元化を目指すことが示されたところであるが、医療保険制度の一本化の視点からみると、主に、次のような課題がある。
国民健康保険は、著しく加入者の平均年齢が高く、所得が低いといった構造的な問題を抱えており、その財政運営は、市町村がやむを得ず行っている一般会計からの多額の繰入れによって、かろうじて運営されているのが実態である。しかし、地方財政は益々厳しさを増しており、一般会計からの繰入れはもはや限界という危機的状況にある。
今回の試案においては、「医療保険制度の一元化」が示されているが、その内容は、被用者保険と地域保険との制度間の調整が極めて不十分なものとなっている。国民健康保険の構造的な問題を抜本的に解決し、すべての国民に通ずる給付と負担の公平と国民皆保険制度の堅持を図るためには、国民健康保険と被用者保険との制度間を通じた一本化が不可欠であり、その道筋を明確にする必要がある。
試案において、将来の保険運営を都道府県単位で行うこととし、そのため医療保険各保険者の再編・統合を進めていくこととしていることは、将来の制度の一本化の方向からみれば評価できるものである。
しかしながら、国民健康保険について言えば、保険者を都道府県単位にするだけでは財政運営は改善されることはなく、さらに保険者機能・保険料(税)徴収等の問題が生じることが懸念され、これらの問題の解決も含め国民健康保険の財政運営の改善に繋がるような財政措置等を併せて講じる必要がある。
また、政管健保では財政運営のみを都道府県単位とし、健保組合等では全国展開健保組合を存続させるなど、保険者の再編・統合のあり方が国民健康保険の方向性と異なっており、統一性が取れておらず、制度の一本化の実現を図ると言う観点から問題である。
高齢者医療制度については、「制度を通じた年齢構成や所得に着目した財政調整を行う案」及び「後期高齢者に着目した保険制度を創設する案」の2案が示されており、前者の案については、年齢調整を全年齢に拡大しており、それなりに評価できるものである。
しかし、いずれの案とも多くの問題があり、制度の構築にあたっては、次のような対策を講じる必要がある。
(1) 「制度を通じた年齢構成や所得に着目した財政調整を行う案」では、各保険者の負担の不均衡を生じさせないため、年齢構成や所得について保険者間で調整を行い、被保険者間の保険料負担の公平を図ることがねらいであると明記されている。しかしながら、この案では所得に着目した調整が、国民健康保険・被用者保険それぞれの制度内において行われることとなっており、これでは国民の間の負担の不均衡は是正されない。よって、医療保険の全保険者による年齢構成及び所得に着目した調整を実施すべきである。
(2) 「後期高齢者に着目した保険制度を創設する案」では、後期高齢者の自立を基本として、75歳以上の後期高齢者を対象とした医療保険制度を構築する内容となっている。しかし、この制度では若年者からの負担が加入者数に応じて支出することから所得の低い国民健康保険の被保険者が過重な負担になるとともに、1人当り医療費が高い60歳から74歳の中高年齢層が多い国民健康保険に負担のしわ寄せがくることは明らかである。また、財政試算においても、国民健康保険の負担が現状よりも増大することは、大きな問題である。よって、若年者負担の在り方及び74歳未満の医療費の公平な負担について必要な対策を講じるべきである。
上記のことから、今年度中に策定する基本方針については、国民健康保険関係団体の意見を十分尊重し、国民健康保険が抱える構造的な問題を解決するとともに、医療保険制度の一本化への道筋を明らかにするよう要請する。