全国町村会は、平成13年度政府予算編成をひかえ12月7日に政府予算対策本部を設置するとともに、同14日に常任理事会を開催し、自治省の石井税務局長から「平成13年度税制改正」について、同省の久保振興課長から「住民基本台帳ネットワークシステム」についてそれぞれ説明を聴取したあと、「地方分権の推進」、「町村財政基盤の強化」など11項目の重点要望を採択し、会議終了後、役員が自由民主党及び関係省庁などへ実行運動を行いました。
実行運動は、自由民主党、各省庁などに対し4つの班に分かれて実施。自由民主党へは、山本会長(福岡県添田町長)、佐々木(北海道えりも町長)、西田(石川県川北町長)、宇都宮(愛媛県宇和町長)の3副会長が11項目の要望を行いました。また、自治省へは河野(千葉県睦沢町長)、伊藤(新潟県黒川村長)、塚田(愛知県旭町長)の3常任理事と安井(滋賀県蒲生町長)、藤本(岡山県和気町長)の両監事が「地方分権の推進」、「町村財政基盤の強化」などを要請。さらに厚生省へは、菊池(青森県川内町長)、野中(京都府園部町長)、八木(香川県池田町長)、冨永(熊本県菊陽町長)の4常任理事が「介護保険制度の円滑な実施」、「国民健康保険制度の充実強化」などを、農林水産省へは関根(岩手県種市町長)、江原(山口県日置町長)の両常任理事が「農業の振興と活力ある農山村の建設」などを要請しました。
11項目の要望は次のとおりです。
1.地方分権の推進21世紀を目前に控え地方分権が実施の段階に移った今日、住民が誇りと展望を持った活力ある地域社会を構築することは、地方自治体にとって最も重要な課題である。よって国は、地方分権の一層の推進に向け、次の事項を実現されたい。 一、地方税・地方交付税等地方一般財源を確保するなど、必要な措置を的確に講じること。 二、今後、一層の事務・権限の移譲を推進すること。 三、権限移譲の「受け皿」整備の見地から市町村の合併を強制することのないよう十分留意すること。 なお、市町村合併の強制を意図した地方交付税算定の見直しは絶対に行わないこと。 2.町村財政基盤の強化町村は、自主税源が乏しい中、地方分権の進展を踏まえ、介護保険の実施など少子・高齢社会への対応をはじめ、低位にある生活環境施設の整備、厳しい条件下にある農林漁業の振興等、個性豊かな地域づくりの推進が求められている。よって、国は、これら施策を町村が自主的、自立的に遂行できるよう町村財政基盤を強化するため、次の事項を実現されたい。 一、地方税は、地方分権を実質的に担保する、地方自治の基礎を支えるものであり、地方の歳出規模と地方税収入の大幅な乖離を縮小するためにも、国と地方の役割分担を踏まえ、国から地方への税源移譲等により、町村税源の充実強化をはかること。 二、地方交付税は、税源の偏在による財政力格差を是正するとともに、地方公共団体に一定水準の行政を保障するうえで、極めて重要な機能を有するものであり、町村が安定した財政運営ができるよう、地方交付税所要額を確保すること。 三、財政投融資制度の改革後においても、地方債資金の調達に支障の生じないよう、良質な公的資金を安定的に確保すること。 3.ペイオフ凍結解除後における地方公共団体の公金預金の保護 ペイオフ凍結解除にあたっては、預金保険法の改正により、地方公共団体についても全額保護されることとなったが、歳計現金を除く預託金、基金等については平成14年4月から、また、歳計現金についても平成15年4月から凍結解除となり1,000万円超の部分について預金保険の保護措置がない状態となる。 4.安全で魅力ある地域づくりの推進 町村は、それぞれの地域がそれぞれの特性を活かした独自の魅力ある地域づくりの推進が求められている。 5.保育対策の充実わが国においては、近年の著しい少子化の中で、子ども同士のふれあいの減少などにより、子どもの自主性、社会性が育ちにくく、また、社会保障費用にかかる現役世代の負担の増大、社会の活力の低下等への影響が懸念される状況にある。このため子ども自身が健やかに育っていける社会、子どもを安心して生み育てることのできる環境づくり等の強力な推進が求められており、国は子育て支援のための対策を総合的、計画的かつ緊急に推進することが必要である。よって、国は次の事項を実現されたい。 一、新エンゼルプランの着実な実施をはかること。 二、保育所運営費の基準の改善をはかるとともに、特別保育にかかる財政措置を充実すること。 6.介護保険制度の円滑な実施高齢化が著しく進行する我が国において、高齢者介護は現下の最大の課題であり、国、都道府県、市町村が一丸となって取り組むことが何よりも重要である。こうした中、介護保険制度が本年4月から施行され、町村においては高齢者に対する必要かつ十分な介護の提供に懸命の努力を傾注しているところである。 一、保険料について(1)低所得者に対する保険料については、減免措置を講じるとともに、同措置にかかる国、都道府県による財政補填制度を創設すること。 二、財政調整について(1)国の負担25%のうち5%が調整財源とされているが、調整財源については25%の外枠とし、必要額を措置すること。 三、要介護認定更新の際、状態に変化が生じていない者については、認定期間の有効期限を延長する等手続きの簡素化を図ること。四、介護報酬の特別地域加算に係る影響額については、利用者負担を含め財政措置を講じること。五、家族介護に対する評価について
六、市町村介護保険事業計画に基づき、介護サービスが適切に提供できるよう、介護基盤整備については、人材の育成・確保等にかかる支援策を含め十分な財政措置を講じること。七、市町村における介護保険の事務の執行については、十分な財政措置を講じること。八、訪問通所および短期入所サービスの支給限度額一本化のシステム改修費用については、過重な負担とならないよう十分な財政措置を講じること。7.国民健康保険制度の充実強化国民健康保険制度は、被用者保険に比べ低所得者層が多く、さらに老人加入率が高い等その構造的な体質のため、財政的に脆弱であるうえに、医療費の増嵩等により保険料(税)の負担および一般会計からの繰入れはすでに限界に達しており、永年に亘る負担により、町村における各種福祉施策の推進を大きく阻害している。よって、国は次の事項を実現されたい。 一、各種医療保険制度間における負担と給付の公平化をはかるため、医療保険制度の一本化を早急に実現すること。 また、一本化にあたっては、国、地方団体、民間等の役割分担を明確にし、保健、医療、福祉の諸制度が相互に連携し合い、一貫した運用ができる制度を確立すること。 なお、一本化が実現するまでの間、制度の維持運営に支障をきたさないよう、国庫負担の拡充等十分な財政措置を講じること。 二、老人医療対策の充実強化 (1)老人医療費に対する国の負担割合を拡充すること。 (2)老人医療費拠出金の算定にかかる老人加入率の上限を撤廃すること。 また、退職者にかかる老人医療費拠出金の全額を退職者医療制度で負担すること。 (3)老人保健事業にかかる財政措置を充実すること。 三、慢性期医療等に対する包括払いの積極的な活用等診療報酬制度を見直すとともに、薬価基準制度を抜本的に改正すること。 四、国保財政の健全化および保険料(税)負担の平準化に資するため、新たな国庫負担措置を講じること。 なお、国保財政安定化支援事業については引き続き措置すること。 8.農業の振興と活力ある農山村の建設一、「食料・農業・農村基本計画」において示された食料自給率の目標を確実に達成するため米の計画的生産および麦・大豆・飼料作物等の本格的生産の定着・拡大をはかる施策を強化すること。 9.森林・林業対策の推進一、森林の有する国土保全、水資源かん養等公益的機能の持続的発揮、安定した森林の管理・経営システムを構築するとともに、山村地域の活性化をはかるため、新たな林業基本法を制定すること。 10.水産業対策の充実一、わが国の水産業は、担い手の減少、吉岡観化の進行がやまず、漁村の活力の低下を招いている。このため、わが国周辺水域の水産資源を適切に管理するとともに水産業の振興と漁村地域の活性化をはかる水産基本法を速やかに制定すること。 11.生活環境施設の整備促進 国民が真に豊かさを実感できる住みやすい地域社会をつくるため、生活環境の整備対策を強力に実施する必要がある。 |