ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 全国町村会の活動状況 > 20.水産業対策の充実

20.水産業対策の充実

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年12月3日

我が国の水産業は国民の健康で豊かな食生活の一翼を担っており、また、漁村は水産業の健全な発展のための基盤たる役割を担っている。しかし、水産業及び漁村をめぐる環境は、水産資源の低迷や漁業生産の担い手の減少・高齢化、さらには輸入の増大による水産物価格の低迷等極めて厳しい状況にある。このような状況に的確に対処し、水産業の一層の振興と活力ある漁村の形成をはかるためには、「水産基本計画」に基づく具体的施策の早期実施等水産業対策をさらに充実させる必要がある。
よって、国は次の事項を実現されたい。

  1. 「水産基本計画」に基づく具体的施策の推進
    水産物の安全と安定供給を確保し、併せて水産業の健全な発展と漁村の振興をはかるため、「水産基本法」に基づき策定された「水産基本計画」に従い、具体的施策を着実に推進すること。

  2. 水産物の安全・安心の確保と供給体制の整備
    (1)水産物の食品としての安全と安心を確保するため、衛生管理体制を強化するとともに、消費者の適切な消費行動に資するため、生産履歴や原産地表示など適正な情報提供に関する対策を強化すること。
    また、引き続き魚食の普及に努めること。
    (2)地域水産物の特色を活かしたブランド化推進のための対策を強化すること。
    (3)産地市場の統合を促進し、その機能を強化することにより、水産物流通の合理化・情報化を一層推進するとともに、水産加工地域の再生強化と水産加工業の体質強化をはかること。
    (4)水産物の需給と価格の安定化をはかるため、引き続き漁獲物の調整保管事業を実施すること。

  3. 適切な資源管理に資する貿易ルールの確立
    水産物に関するWTO交渉においては、各国がそれぞれ自国の水産資源を適切に管理することを促進する貿易ルールの確立を目指すとともに、我が国の水産業の安定と発展に支障が生じることのないよう、関税の引き下げ、非関税措置の撤廃が行われることのないよう努めること。
    また、輸入の増大によって我が国の漁業者等の経営に著しい影響が生じた場合は、速やかに一般セーフガード(緊急輸入制限措置)を発動すること。

  4. 漁業経営対策の強化と漁業就業者の確保・育成
    (1)漁業経営の安定をはかるため、漁業経営の維持に必要な資金や漁船の取得の円滑化をはかること。
    (2)漁業経営の基盤強化を支援するとともに、漁業就業者の確保・育成をはかるため、労働環境の改善、漁業技術や経営管理能力の向上等の諸対策を総合的に推進すること。
    (3)合併を行う漁協に対する支援や漁協の人材の育成等、漁協に関する施策を引き続き推進すること。
    (4)漁業災害補償制度が、漁業経営の安定対策として実効あるものとなるよう、制度の普及及び加入の促進等に努めること。

  5. 資源管理対策の強化と操業秩序の確立
    (1)我が国周辺水域の資源回復を加速し、その持続的利用をはかるため、資源回復計画の作成・普及、漁獲努力量の適正化、多元的な資源管理型漁業の推進に努めること。
    また、あわび、うに等の沿岸定着性水産動物資源に対する密漁について、罰則の強化やすべての漁船に船位報告機器の搭載を義務づけるなど、効果的な防止対策に必要な支援措置を講じること。
    (2)遊漁における資源利用の適正化及び遊漁船業に対する指導の強化に努めること。
    (3)日韓及び日中の漁業協定の発効以来、特に韓国漁船による違法・無謀操業が我が国の漁船の操業及び水産資源に大きな影響を及ぼしているので、指導・取締体制を一層拡充・強化するとともに、協定水域全域における操業秩序の確立をはかること。

  6. つくり育てる漁業の推進と内水面漁業の振興
    (1)栽培漁業の継続的かつ積極的な事業展開を推進するとともに、栽培技術の開発、指導及び関連施設の整備等に努めること。
    また、良好な養殖漁場の確保に努めるとともに、その環境の維持・改善を推進する等、養殖業にかかる施策の充実・強化に努めること。
    (2)内水面漁業・養殖業の一層の振興と内水面地域の活性化をはかること。
    また、生態系に悪影響を与えている外来魚等に関する総合的な対策を講じるとともに、地域特有の魚類の生態系に配慮した増殖手法を確立すること。

  7. 活力ある漁村づくりと水産基盤整備の計画的推進
    (1)漁村の生活環境の総合的整備と都市との交流の促進等により漁村の活性化をはかるとともに、災害に強い漁村づくりを推進すること。
    (2)「漁港漁場整備長期計画」に基づき、引き続き漁港と沿岸漁場の整備を一体的・総合的に推進すること。
    (3)海岸災害の防止対策を強化するとともに、自然環境の保全や都市との交流など、地域のニーズに対応した海岸整備を計画的に推進すること。

  8. 漁場・沿岸環境保全対策の推進
    (1)漁場環境及び生態系の保全をはかるため、引き続き漁民の森づくり活動を支援するとともに、磯焼け現象の解消など藻場・干潟の再生・造成、水質の改善等に努めること。
    (2)漁業系廃棄物の処理・再利用システム及び赤潮・貝毒による漁業被害防止等に関する技術開発を促進するとともに、ダイオキシン類などの有害化学物質の魚介類への影響調査等、水産関係の環境問題全般についての対策を早急に確立すること。
    (3)海浜及び漁場の美化を総合的に推進する施策の充実をはかること。
    特に、町村の海浜清掃等環境美化運動に対し積極的に支援するとともに、外国等からの漂着物の処理に対する助成措置を講じること。
    (4)近年、我が国沿岸等において、沈没・座礁した外国船が長期にわたって放置される事件が発生しているが、これら放置船がその船主により撤去不能な場合、国による撤去等の措置を講じられるよう、関係省庁が連携して制度化をはかること。
    (5)平成12年漁期に発生した有明海におけるノリ養殖の大規模な不作については、原因究明のための調査を引き続き実施するとともに、新たに制定された有明海及び八代海を再生するための特別措置法に基づき、当該海域の環境の保全・改善、水産資源の回復等の措置を速やかに講じること。

  9. 外漁場の確保等
    (1)国際的な資源管理に貢献するとともに、海外における遠洋漁業の漁場の確保に努めること。
    (2)鯨類による魚類の捕食量が漁業生産に与える影響が看過できない状況にあるので、その影響の減少と鯨類資源の合理的利用をはかるため、捕鯨業の早期再開に向けて努力すること。

  10. 試験研究と技術開発の推進
    水産各分野の持続的発展をはかる上で不可欠な試験研究・技術開発については、課題の重点化と一層の効率的な推進をはかること。

  11. 漁村地域に対する地方財政措置の拡充
    漁村は、沿岸、離島、半島等条件不利地域にあり、財政基盤も脆弱な町村が多いことから、農山漁村対策にかかる地方財政措置を拡充すること。

  12. 水産税制の改正
    (1)農林漁業輸入A重油の免税措置と国産A重油の還付措置を延長すること。(石油税)
    (2)漁業経営改善計画を実施する者の取得した漁船の所有権の保存登記等に係る税率軽減措置を延長すること。(登録免許税)
    (3)漁船の法定耐用年数を延長すること。(所得税・法人税)