吉田隆行会長(広島県坂町長)をはじめとする地方六団体代表は10月19日、「国と地方の協議の場」(令和5年度第2回)に出席しました。
政府側は、岸田内閣総理大臣、松野内閣官房長官、鈴木総務大臣、自見内閣府特命担当大臣(地方創生)、神田財務副大臣、武見厚生労働大臣、河野デジタル大臣兼デジタル行財政改革担当大臣兼デジタル田園都市国家構想担当大臣、加藤内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画)が出席しました。
会議では、「デジタル行財政改革及び地方分権改革の推進について」、「こども・子育て政策について」及び「マイナンバー総点検について」の3議題について協議が行われました。
▲挨拶する岸田内閣総理大臣
はじめに岸田内閣総理大臣が挨拶に立ち、
「我が国はコロナ禍を乗り越え、経済状況は全体として改善しつつあるものの、国民は物価高に直面している。今月に経済対策をとりまとめることを予定しているが、足元の物価高から国民生活を守るとともに、長年続いてきたコストカット型の経済から活発な設備投資や持続的な賃上げ、人への投資による経済の好循環が実現する熱量を感じられる新たなステージへの転換、これを確実に進めていきたい。
また、デジタルの力を借りてさまざまな制度や仕組みを改革し、利用者起点で公共サービスの維持・強化と地方の活性化を図り、社会変革を実現する。このようなデジタル行財政改革がスタートした。改革の3本柱となるデジタルによる質の高い公共サービスの提供、デジタル活用を阻害している規制・制度の徹底した改革、EBPM(証拠に基づく政策立案)を活用した予算の見える化による事業・基金の見直し、これらに沿って、できるものから迅速に実行していく。
少子化は、我が国の社会経済全体に関わる問題であり、先送りのできない待ったなしの課題である。本年6月にこども未来戦略方針を策定し、今後の集中的な取組について、妊娠期から切れ目なく子育て世帯をお支えする加速化プランをお示しした。スピード感ある実行のため、できるところから取組を実施することが重要であり、先月末には若い世代の所得向上と人手不足の解消の観点から、年収の壁・支援強化パッケージを決定し、今月から実施している。引き続き、可能な限りの前倒しによる各種施策の実施を検討していく。
マイナンバーに関して、総点検にご協力いただき感謝申し上げる。12月上旬に点検結果をとりまとめ、再発防止を徹底したうえで、国民が安心してデジタル社会に移行できるよう、引き続き、連携した取組をお願い申し上げる。
さらに、これらの課題等について、今後、3年間を変革期間として集中的に取り組むためのスタートダッシュとして、今月末をめどに経済対策をとりまとめた後、速やかに補正予算を編成し、臨時国会に提出したいと考えている。
今後とも皆さまのご意見に耳を傾け、よく連携し、政策を一つひとつ果断にかつ丁寧に実行していく考えである。忌憚のないご意見をいただくようお願い申し上げる」と述べました。
その後、村井全国知事会長(宮城県知事)が地方六団体を代表して挨拶に立ち、はじめに、新たな経済対策に向けた方針が示されたことに対する謝意と、補正予算の編成への期待を示したうえで、電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金の十分な総額確保や地方交付税の増額に加え、来年度の一般財源総額について、物価高等を踏まえ、今年度と同水準の確保・充実を求めました。
また、ALPS 処理水の問題については、一刻も早い輸入停止措置の解除や水産関係者等の事業継続、賠償等、万全の対応を要請しました。
最後に、こども・子育て支援施策の具体化にあたっての地方との丁寧な調整や意見交換、防災・減災、国土強靱化の推進に必要な予算・財源の確保を求めました。
▲発言する吉田会長
協議の場において吉田会長は、①デジタル技術を活用した地方創生をさらに推進し、東京一極集中の是正と「地方分散型の国づくり」を実現するため、デジタル共通基盤の整備や、デジタル人材の育成・確保について、国が責任を持って加速化すること、②各自治体が地域の実情に応じた子育て支援施策に積極的に取り組むことができるよう、地方財源の拡充と施策を担う人材の確保に係る支援を強化すること、③町村がさまざまな施策を着実に実施していくため、地方交付税等一般財源総額を確保すること―等を要請しました。
他の地方六団体代表からは、こども・子育て政策に地域間格差が生じないよう確実な財政措置、デジタル田園都市国家構想交付金の安定的な確保・拡充と柔軟な取り扱い、基幹業務システム標準化に係る移行経費の全額国庫補助による措置と移行スケジュールの柔軟な対応、GIGAスクール構想における1人1台端末の更新経費等に対する安定的な財政支援、今後の新型コロナワクチンの必要量の確保や国費による財政支援ー等を求める発言がありました。
これらを受けて、各大臣からは以下の通り発言がありました。
〇河野デジタル大臣兼デジタル行財政改革担当大臣兼デジタル田園都市国家構想担当大臣
〇自見内閣府特命担当大臣(地方創生)
〇鈴木総務大臣
〇加藤内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画)
〇武見厚生労働大臣
その後の意見交換において吉田会長は、森林環境譲与税について、「今後、カーボンニュートラルの実現や災害に強い国土の保全に向けて、より一層森林の整備が必要となる」として、譲与基準の対象となる森林や森林面積割合の見直しに係る特段の尽力を求めました。
また、ALPS処理水の海洋放出に伴う風評対策について、「東日本大震災以降、復興に向けた水産事業者のこれまでの努力の成果が水の泡とならないよう、漁業者や水産関係事業者に寄り添った実効ある支援をお願いする」と述べました。
最後に、松野官房長官が、「皆さまから、地方一般財源総額の確保、デジタル行財政改革における地方との連携、こども・子育て支援の充実等、大変貴重なご意見をいただいた。真摯に受け止め、各課題に着実に取り組んでいく。企業の持続的な賃上げや地方の成長の実現を含めた経済対策のとりまとめにあたっても、本日のご意見を参考にし、迅速な施策の実行を進めていく。今後とも、地方に関わる重要政策課題について皆さまとしっかり連携をして対応していきたい」と述べ、協議を締め括りました。