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庵逧経済農林副委員長が自由民主党「食料安全保障に関する検討委員会」ヒアリングに出席

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年5月16日

 庵逧典章経済農林副委員長(兵庫県佐用町長)は5月12日、自由民主党が開催した「食料安全保障に関する検討委員会」(委員長・森山裕衆議院議員)における食料・農業・農村基本法の見直しに関する団体ヒアリングに出席しました。
 庵逧副委員長は、令和5年3月に本会がとりまとめた「食料・農業・農村基本法の見直しに関する意見」に基づき、同法を見直す際には農業政策と農村政策を一体的に検討することの必要性等について意見を述べました。
 なお、本委員会は令和4年3月、原油・肥料原料・穀物の国際的な高騰等を受け、我が国の食料安全保障戦略を確立することを目的として自由民主党 総合農林政策調査会(会長・江藤拓衆議院議員)に設置されたものです。

         全景

 開会にあたり、森山委員長兼総合農林政策調査会最高顧問が挨拶に立ち、
「食料安全保障や食料・農業・農村基本法の見直しについて、現在、党として提言のとりまとめ作業を進めている。本日は提言のとりまとめに向けて、団体ヒアリングを行う。
 食料安全保障の確保と食料・農業・農村の振興に向けて、農業関係団体、地方自治体、食料システムの幅広い関係者の連携強化は極めて重要なことであり、基本法改正に向けて重要なテーマである。
 食料安全保障は世界的な問題であり同盟国や友好国との外交の進め方も重要であるが、根幹は国産を伸ばしていくことであることを忘れてはならない」と述べました。

森山先生
▲挨拶する森山委員長

 続いて、江藤総合農林政策調査会長が挨拶に立ち、
「ウクライナ侵攻が長期化すると、特に食料の流通・輸入に関しては極めて不安定な状態が進んでいくだろう。安心・安全な食料を国民に届けて平和に暮らすため、国内を中心とした生産体制の基盤をしっかり作っていかねばならない」と述べました。

副委員長
▲意見を述べる庵逧副委員長

 ヒアリングにおいて庵逧副委員長は、「食料・農業・農村基本法の見直しに関する意見」(令和5年3月・全国町村会)に基づき意見陳述を行いました。
 はじめに、基本法に掲げられている4つの理念「食料の安定供給」、「多面的機能の発揮」、「農業の発展」、「農村の振興」について、「それぞれの関連を意識することが前提だ」と強調したうえで、主に次の6点について意見を述べました。

(1)食料安全保障概念を明確にするとともに国内農業への関心を高めること
 現在、食料品を含めた物価高騰により多くの国民が食料問題に強い関心を持ち始めているのではないかと感じている。国として最低必要な食料自給率の設定など食料安全保障の定義の明確化とともに、国民に国内農業への関心をさらに高めてもらう必要がある。その際、農業インフラの整備はもとより、都市と農村の交流や農業体験等、生産者と消費者を結びつけるような取組の拡充・支援も必要である。
 また、フードバンクの取組等もあり、貧困対策も含めた関係各省と連携した食料政策の再構築も必要である。

(2)農業政策と農村政策を一体的に検討すること
 農村は農業生産の基盤であることのみならず、人が暮らすことや自然資本の管理等を通じて、国土保全や生態系の維持に多大な貢献をしている。
 また、現行の基本法(34条)においても、農村政策は農業振興とその他の施策を総合的に推進するとされている。
 農村政策を農業政策の脇役ではなく「車の両輪」として一体的に検討する必要がある。

(3)新たな農村政策の施策体系を基本法に位置付けること
 現行の「基本計画」(令和2年3月決定)では、農村振興について、所得と雇用機会の確保、住み続けられるための条件整備、新たな活力の創出のために関係府省と連携することを掲げている。この新たな政策体系を、基本法に当然に反映させて、農業・農村政策の持続性と発展性を高める必要がある。

(4)多様な担い手の確保の必要性を基本法に位置付けること
 食料の安定供給には、農業の担い手確保が欠かせない。農地を集約化して、生産規模を拡大する農業を推進していくことはもちろん重要だが、それだけでは、多様な日本発の農業や農村を維持することは困難である。
 現在は平地でも中山間地域でも、田園回帰や関係人口による地域活動が高まっている。私の町でも、移住定住対策や地域おこし協力隊には非常に力を入れている。外からやってきてくれる人は、地域の活力になる。地域活動に参加する人々の多くが農業に関心を持っており、農業発展の好機と捉えるべきである。いまや新規就農者の大半も非農家出身であり、農業の魅力に着目している人の存在は重要である。
 併せて、農業の担い手を確保するうえで重要なことは、働き方の改革である。若い人たちが農業に希望を見出し、 職業として選択してもらうためには、賃金や休暇など、他産業並みの労働条件を提供することが大変重要である。この問題についても、真剣に考える必要がある。この点については、現行の基本計画で既に「中小・家族経営など多様な経営体による農業経営の底上げ」が掲げられており、その経営意欲を高めることは、食料安全保障の観点からも重要だと考えている。この部分は基本法21条の規定と差異があると感じている。基本法に「多様な担い手の確保」を位置付ける必要がある。

(5)農村環境や景観の維持保全を基本法に位置付けること
 「棚田地域振興法」(令和元年成立・議員立法)に規定されているように、農村の環境や景観は多面的機能として重要であるが、保全に要する費用を農産物の価格に転嫁するのは困難であり、国が何らかの形で支援する必要がある。EUなど世界の農業政策と比べると日本の環境支払い予算は、極めて低水準にとどまっている。
 このため、農村環境や景観の維持保全を基本法に位置付けるとともに、景観保全など多様な環境支払い制度の確立を目指すべきである。

(6)農村価値創生交付金の創設を検討すること
 地域の特性にあった農業・農村政策を展開することは、一律の基準を設けるよりも、結果として効率的かつ安定的な農業に資することもあると思う。
 現行の基本法においても、自治体の農政について“自然的経済的社会的諸条件に応じた”施策の策定や実施が責務として規定されている。
 このため、自治体の裁量を大幅に拡大した「農村価値創生交付金」の創設を提案している。提出資料の「補足説明」に記載のとおり、詳細な制度設計は今後の議論に委ねているが、地域の実態を踏まえることが、政策の目的を達成することにつながるものと考えている。その意味では、自治体農政のあり方を真剣に議論する必要がある。

 庵逧副委員長は、続けて、
「全国の町村長は、住民の暮らしや地域社会を守ることに必死の思いで取り組んでいる。一つひとつの自治体の取組が、日本の国土全体を守ることにつながっている。
 農業に従事する人が少なくなるからといって、農村政策を後退させることや、安易に予算を削るようなことがあってはならない。農村地域はCO2の吸収源であり、再生可能エネルギーの宝庫でもある。国家的な課題である脱炭素化に向けた取組の最前線にいる。
 また、地方創生政策は、新しい地域政策として定着し、着実に成果を上げている。総人口が減少する中で、将来には消滅する集落も出てくることも避けられないとは思う。最近、このような状況を捉え、政策の『選択と集中』を唱える意見があるようだが、今の段階で行政が、地域からの撤退を招くようなことをしてはならず、地域に住み続けられる政策を実現しなければならない。
 今やるべきことは、基本法の理念を再確認し、食料安全保障の問題を広い視野で捉え、生産者と消費者がともに共感できる基本法の制定である。そのうえで、必要な予算をしっかりと確保していただきますようお願いする」と述べ、意見陳述を締め括りました。

 その後の意見交換において、庵逧副委員長は、
「食料自給率を45%にするという目標値があるが、私は最低でも70%程度の目標を立て、それに向かった各政策を実施していくべきだと思う。そのためには、農業従事者の育成が重要であり、若者が自らの職業として農業を選択するには、労働環境の改善、儲かる農業であることが必要である。働き方改革が進められる中、農業ではそれが難しい。こうしたことへの価格転嫁についても、コストに見合った価格を国民に理解していただく取組が必要である。
 農業高校や農業大学など人材育成機関があるが、その学校を選択する人が減少している。卒業しても、職業として農業を選ばない人も多い。これは現在の日本の農業が抱える大きな課題だと思う。農業従事者の労働環境の改善、儲かる農業をしっかり目指さないといけない」と述べて発言を終えました。

【参考資料】

食料・農業・農村基本法に関する意見 [PDFファイル/615KB]

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