参議院行政監視委員会が2月6日に開催され、本会からは木野隆之行政委員会委員長(岐阜県輪之内町長)が出席し、「国と地方の行政の役割分担に関する件」として、国から求められる計画策定や調査等の実態について町村の立場から参考人意見陳述を行いました。
▲発言する木野行政委員長
木野行政委員長は、町村が食料・エネルギーの供給や国土保全といった、国民生活を支える重要な役割を果たしていることを述べるとともに、輪之内町では町の基幹産業である農業や自然豊かな住民環境との共存を目指した企業誘致を進めていると説明。そのうえで、本会の要望事項に沿って意見陳述を行いました。
はじめに、国が制度の創設や拡充を行う際、地方自治体に対して一律に新たな計画の策定や窓口の設置を求めることについて、政策の方向性を示すうえで必要であることは一定程度認めるとしつつも、計画策定等に関する法律の条項数が平成22年から令和2年までの10年間で1.5倍に増加していることを指摘し、「町村の現場からも様々な計画の策定や見直しに多くの時間を費やすことで、本当に必要な住民サービスの実施等に支障が生じている」と現状を述べました。
計画策定等の義務付け・枠付けについては、地方団体からの強い要望をはじめ、地方分権推進委員会勧告や地方分権改革有識者会議の提言等を踏まえ、「骨太方針2022」に計画等の策定の義務付け・枠付けは必要最小限のものとし、新設しないこととする基本原則が明記されている。昨年12月に閣議決定された「令和4年の地方からの提案等に関する対応方針」では、国・地方を通じた効果的・効率的な計画行政の進め方を示す「ナビゲーション・ガイド」が作成されることとなった。これら一連の動きを地方にとって大きな前進であると評価したうえで、「こうした取組みを形骸化させないため、新しい計画等を策定しないことはもちろんだが、既存の計画等についても必要性を欠くものは統廃合していただきたい」と述べ、国からの調査・照会についても職員の大きな負担となっていることから、国において業務の簡略化や廃止・統合に向けた抜本的対策を講じるべきであるとしました。
これらの意見陳述に関連して、少子化対策については若い世代が全国どこに住んでいても安心して結婚、出産、子育てができる環境を整えることが重要であり、自治体の財政力の違いなどから支援策に地域間格差が生じていることも解消すべき課題であると述べた。デジタル技術の活用については、業務効率化に資するだけでなく、医療、教育等のさまざまな分野で都市部との格差を解消するための重要なツールとなり、地域の振興や活性化に活用できる可能性があることから、町村がデジタル化の推進に積極的に取り組むことができるよう、情報通信基盤の整備をはじめ財政措置の拡充強化、人材育成に係る支援を求めました。
最後に、政府から「5類」移行の方針が示された新型コロナウイルス感染症への対策について、住民や医療現場の混乱を招かないよう配慮した段階的な移行、医療費やワクチン接種に係る費用の公費負担継続を求める声が寄せられているとし、地方自治体が引き続き担うことになる業務への財政措置の必要性を訴えました。
その後の質疑において、計画策定や人材育成等の質問に対し、木野行政委員長からは、「各省各部局が策定を求める計画が、町村では限られた人員の数少ない担当課に集中する」「福祉の高度化やDX推進といった新たな課題に対応する人材が不足しており、対応を模索している」といった現状を挙げ、計画策定については「行政計画の位置付けを再定義し、必須のものとそうでないものを整理する必要がある」と指摘しました。