デジタル田園都市国家構想及び地方創生に関する地方六団体との意見交換会が4月19日に開催され、本会からは荒木泰臣会長(熊本県嘉島町長)がWEB経由で出席し、若宮健嗣デジタル田園都市国家構想担当大臣、野田聖子地方創生担当大臣、牧島かれんデジタル大臣と意見交換を行いました。
▲意見交換会にWEB経由で出席した荒木会長(上)と、挨拶を行う若宮デジタル
田園都市国家構想担当大臣(下段中)(下段左は野田地方創生担当大臣)
会議では、はじめに若宮デジタル田園都市国家構想担当大臣から、少子高齢化等の諸課題の解決に向けて、地方への人の流れを生み出すことが重要だと考えており、今般のコロナ禍において、地方移住の関心の高まり、あるいはテレワークといった新しい働き方の広がりなど、国民全員の意識・行動に大きな変化の兆しがみられる中、政府としては、デジタル技術の活用により、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会を目指す、デジタル田園都市国家構想の実現にむけて取り組みを今進めているところです。昨年11月にデジタル田園都市国家構想実現会議を立ち上げて、今、議論を重ねているところでありますが、本日は、地方を代表する方々から、この構想の実現に向けて、現場に根ざした忌憚のないご意見をお伺いし、今後の構想のとりまとめに大いに活かしていきますとの挨拶が行われました。
続いて、野田地方創生担当大臣から、地方創生にあたって、一番の問題は少子化による人口減少であり、私は地方創生や子ども政策、少子化対策、男女共同参画、そして孤独・孤立を担当しておりますが、それぞれバラバラのような政策にみえて、実は源は繋がっているテーマだと思います。今日はようやく子ども家庭庁設置法の審議が衆議院ではじまったところですが、地方において、特に女性が積極的に結婚や子育てに前向きになれる、そんな環境作りに取り組んでいくこと、それが地方創生なんだという思いで政策を繋げていきたいと考えています。引き続き、地方の声を積極的に受け止め、政策に取り組んでいきますとの挨拶が行われました。
最後に、牧島デジタル大臣から、デジタルの観点からデジタル田園都市国家構想実現に向けて取り組んでいますが、平時の安全、有事の安心に繋がる、ひとに優しいデジタル化に向けて、成長戦略の一環としても岸田政権、関係者一丸となって推進していきます。デジタルの理想、活用に当たっては、誰もが心豊かな暮らし(ウェルビーイング)と、持続可能な環境・社会・経済の形作(サステナビリティ)、この2つの考え方を大切に、地域発での新たな産業革新(イノベーション)、つまりウェルビーイング、サステナビリティ、イノベーションといったようなキーワードをしっかりと意識しながら、地域の方々とともに進めていきます。デジタル庁ではデジタル実装を着実に実現するための交付金という財政的支援の実施に伴い、さまざまなサービス間のデータ連携を行うための基盤の整備、その活用法に関する相談や町づくりの目的を明確にし、関係者間で共有するためのウェブビーイング指標の継続手段の提供に加え、デジタルに不慣れな方、高齢者の方等をサポートするデジタル推進委員の任命、普及など、デジタルディバイド対策を今後も推進していきますとの挨拶が行われました。
これを受けて、地方六団体を代表して、平井伸治全国知事会長(鳥取県知事)から、先に成立した予算の中で、18兆1,000億円にわたる交付税を含めた62兆円の一般財源を、またデジタル推進の面でも200億円の交付金を確保していただくなど、意欲的な予算編成に、まずもって感謝を申し上げます。また、子ども家庭庁という、これから未来を開く、高い志をもった法案の審議がはじまったことは、我々地方団体としても喜びに堪えないところであり、是非、共に実りの多いデジタルを中心とした田園都市国家の推進につなげていければと考えております。仕事を創る、あるいは人の流れを創る、あるいはサステナビリティやウェルビーイング、そうしたことの実現に向けた今日の大臣の決意をお伺いし、我々地方としても全力を挙げて取り組んでいきたいとの発言がありました。
その後、意見交換に入り、荒木会長からは、はじめに新型コロナ対策について、長引くコロナ禍で痛んだ国民生活・地域経済を回復・再生させ「安全・安心な地域社会の再構築」を実現するため、地方創生臨時交付金確保も含め、政策の拡充強化を要請しました。
次に「デジタル田園都市国家構想」について、特に中山間、離島等の条件不利地域の多くを抱えている町村が、地理的条件や人口・経済の格差を乗り越え、「小さい」「遠い」「不便」といった地域のマイナスをプラスの個性に変えて地域を活性化し、国土全体を活かしきる視点での取組を求めるとともに、構想実現の前提となる情報通信インフラやこれを活用するためのシステム等の社会共通基盤については、「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」に基づき、国の責任において、着実に整備を加速化すること。またサイバー攻撃への対応等については、一自治体の責任というより、全国自治体共通のデジタル基盤の位置づけの中で、バックアップや復旧等も含めた情報セキュリティの視点が重要となるため、この点についても国による積極的な対応を要望しました。なお、デジタル分野も含め地方創生に欠かせない人材の確保・育成については、将来にわたる重要課題のため、小規模自治体にとっても希望が持てるよう、基本方針に明記するよう求めました。
最後に、地方創生との関係について、町村の現場では、住民との対面による活動が極めて重要であり、デジタル化のみを目的とし、あるいはデジタル技術に過剰に頼ることで、こうした温もりのあるつながりが損なわれては本末転倒であるため、「デジタル田園都市国家構想」を推進する際は、引き続き、地方創生施策にもしっかりと取り組み、デジタルをうまく組み合わせ、それぞれの地域における課題解決への柔軟な取組や創意工夫が活かされるような視点を大切にしていくよう訴えました。
▲発言する荒木会長
地方六団体代表からの発言を受けて、若宮大臣からは、デジタル基盤の整備については、条件不利地域を含めた形でのきちんとした基盤整備について、総務省等と連携して、デジタル田園都市国家インフラ整備計画に基づいた形での光ファイバや5Gをはじめとする基盤の整備にしっかりと取り組みます。また、人材の育成・確保については、デジタル実装による課題解決のためのデジタル推進人材を2026年度までに230万人育成することを目標としており、地域企業とのマッチング、様々な大学との提携等含めて、地域への人材の環流を推進していきます。デジタル田園都市国家構想と従来からある地方創生の関係については、デジタル以外の地方の活性化の取り組みについても、引き続き推進していきたいと考えています。東京一極集中については、定住・移住、また関係人口の増を目指すとともに、サテライトオフィスの整備等による移住者への支援など、様々な人材マッチングの支援にも取り組みます。また、デジタルディバイド対策、デジタルメディアリテラシーの向上、地方公共団体の職員の育成、それからワーケーションの推進、あるいは賃金格差について、最終的には、どんなにデジタルや機械が発達して、あるいはそれを完全に完備したとしても、最後はそこに人間が住まう生活空間としての人の温もりのある、こういった形での展開を心がけていかないといけないと考えており、引き続き野田大臣、牧島大臣とも連携しながら、皆様方の希望に沿う形で、いい展開を心がけたいとの発言がありました。
続いて野田大臣からは、子ども家庭庁は令和5年4月発足ということで、今日からスタートを切りましたが、この分野は地方の方が進んでいて、子どもの窓口一元化など、様々な取組が行われており、そこが成功しているところは、消滅自治体と言われるところでも、子どもの数は増えています。これは地方創生の部分ではなくて、子ども政策の関係です。あとデジタル田園都市構想について、推進交付金として200億円の予算、これに対してこれまで504団体に62億円の支援が決定しています。様々なご意見伺いながら、今後のあり方について検討していきます。地方創生臨時交付金についても、これは3年度の補正で地方創生事業分として1.2兆円を確保しており、引き続き各地方公共団体の執行状況を注視しながら適切に支援していきますとの発言がありました。
最後に、牧島大臣からは、デジタル田園都市国家構想に関連して、デジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE1)創設の際に、産業別に農林水産業や観光など、各々の分野で、既に先行している自治体の事例を紹介している参考事例集が出ており、デジタル庁も関わっています。今後、TYPE2、TYPE3と進めていく際に、産官学や地域の力、また地域の外の方たちの力も借りながら、総動員で取り組まなければならないと考えているので、引き続きご協力をお願いします。また、マイナンバーカードについて、オンラインでも対面でも自分を証明する最高位のパスポートであるというところを住民にご理解いただきながら、さらに取得促進を進めたいので、引き続き宜しくお願いしたいとの発言がありました。