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「第32次地方制度調査会 第37回専門小委員会」 に荒木会長が出席

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年4月28日

第32次地方制度調査会(会長 市川晃住友林業(株)代表取締役会長)は、4月23日に第37回専門小委員会(委員長 山本隆司東京大学教授)を開催し、本会の荒木泰臣会長(熊本県嘉島町長)をはじめ地方六団体代表からのヒアリングを行いました。なお、この会議は、新型コロナウイルスの全国的な感染拡大に伴い、web会議形式で行われました。

同専門小委員会は、第32次地方制度調査会の諮問内容である「人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを迎える2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応する観点から、求められる地方行政体制のあり方」について、今夏を予定している答申に向けて「総括的な論点整理(案)」を取りまとめたところであり、これに対する地方六団体からの意見聴取を行うために開催されたものです。


荒木会長は、これまでの専門小委員会の中で示された「総括的な論点整理(案)」に対し、次のとおり意見を述べました。


〇市川会長、大山副会長、山本小委員長をはじめ、これまで大変ご熱心に議論を重ねてこられた委員の皆様方に敬意を表する次第でございます。全国町村会としての考えの詳細は、別紙「意見書」にまとめさせていただきました。本意見書は、日々町村行政にたずさわる中で、現場の思いも含め率直に申し上げていますので、ぜひ受け止めていただきたいと存じます。

〇今回の論点整理(案)については、全体を通じて熱心にご議論いただき、賛同できる部分も多々ございます。しかし、本日は時間も限られておりますので、賛同できない項目、懸念のある項目を中心に意見を申し上げさせていただきます。

〇まず、特に看過できない論点がありますので、このことを申し上げます。論点整理(案)9頁から始まる「連携計画作成市町村と相手方の市町村による連携」についてでございます。論点整理(案)では、連携施策への「相手方の市町村の十分な参画を担保する仕組み」を設けるとされていますが、これが、連携中枢都市圏・定住自立圏の要綱で定められた圏域のビジョン等の策定プロセスの法律による制度化を図ろうとするものならば、本会の総意として「断固反対」します。これは、既に広く普及し、全国をほぼ網羅している定住自立圏等を活用し、「新たな圏域行政」を容易に全国展開することにほかならず、将来、周辺町村の衰退が確実に進むことになるものと強く危惧いたします。「対等」であるはずの市町村間に、「計画策定市町村」という機能に着目した評価を導入し、新たな格付けの考え方を持ち込むものであり、実質中心市による「圏域に対するマネジメント」の強化そのものであります。さらに、法律への格上げによって、容易に加入・脱退できる自由度がなくなり、将来的には町村の選択肢を狭める恐れが大きいと考えます。

〇また、連携中枢都市圏には、財源・権限の中心市への集中や条件等の違う市町村間の合意形成の難しさなど根本的な問題があることを、私の地元を例に出し、これまでも申し上げてきました。こうした課題が、「相手方の市町村」や「共・私」が十分に参加する仕組みを設ければ解決するかのような考えをとることには大きな疑問を感じます。我々の思いとは逆の方向であります。そもそも、定住自立圏等は、集約・コンパクト化とネットワーク化を目指すものでございます。そこには、中心となる都市を核にして機能分担しながらネットワークでつなぎ、経済合理性や行政の効率性を追求しようとする考え方が色濃く存在します。「新たな圏域行政」の推進も同じスタンスではないかと強く危惧しております。

〇次に、論点整理(案)で示された各論について、申し上げます。はじめに、Ⅱの広域連携について申し上げます。

〇第1に、論点整理(案)7頁から始まる「計画段階への着眼」についてですが、現場実践の中では、計画と執行は分けられないことも多く、形式にとらわれない地域実態に合わせた柔軟なやり方や、「計画」も幅広いとらえ方が必要と考えます。

〇また、この関連で示された「地域の未来予測」の意義については一定の理解をしていますが、未来の何を予測するかで意味合いは大きく違ってきます。「地域の未来予測」は、その使い方次第では、人口減少・少子高齢化の先行する町村にとって、更なる行財政改革や広域連携による効率化・集約化・合理化等への道具に使われることを懸念します。ある面だけをとらえられ、「新たな圏域行政」への圧力が強まるのではないでしょうか。「地域の未来予測」の整理を、市町村及び広域圏に一律に適用することには、様々な弊害が生まれる懸念があり賛同できません。また、地域の将来像を考える際には、全国一律の定量的な指標による評価だけでなく、人口減少を前向きにとらえ、どのように地域や一人ひとりの価値を高めていくかの視点が極めて重要であります。新たな可能性を切り拓く、市町村や地域固有の魅力・価値の更なる向上への取組みを応援する政策推進の必要性を打ち出していただきたいと存じます。

〇第2に、論点整理(案)10頁で、個別行政分野の計画に関し、「できる限り共同作成が可能になるよう」といった記述がありますが、計画策定を容認するかのような誤解を招かないよう、丁寧な表現をお願いしたいと存じます。国による地方への計画策定や専門職員・窓口の設置の義務付けの実態を確認し、不要なものや重複しているものを見直すなど、あらためて地方分権を踏まえた記述とともに、ご支援ご協力をお願いしたいと思います。

〇第3に、論点整理(案)14頁以降の「都道府県による補完」についてでございます。補完の手法は「連携協約の活用が有用」であるとして、「連携協約に基づく役割分担の協議を要請できる仕組みを設ける」といった内容ですが、都道府県と特定の市町村の連携協約は、実行面での懸念があります。先行県の例にみられるように、小規模町村が県全体にとって重要な価値を持つとの県民合意のもとに、「共同的な手法」の一環としての取組みがもっと広がってほしいと強く期待しております。国として、更なる気運の醸成と力強い支援策の検討をお願いしたいと存じます。

〇第4に、技術職員の確保について、本年度から実施される市町村支援スキームは、本会としても、平時と危機管理を対応させた仕組みとして評価しております。医師、看護師、保健師等専門職種の広域的な連携調整について、更なる国の制度改善や財政支援も含めた積極的な検討をお願いしたいと存じます。

意見を述べる荒木会長

▲意見を述べる荒木会長

〇次に、Ⅲの「公共私の連携」についてでございます。町村にとって、行政に関わる人材は要でありますし、地域を支える「ひとづくり」は極めて重要です。国の、最近の積極的な政策は我々も評価しておりますが、前例にとらわれない更なる大胆な取組みを期待します。

〇次に、Ⅳの「行政のデジタル化」についてです。基幹系情報システムの標準化については、期待する一方で、自治体規模の違いによる様々な課題があります。AIの活用についても、小規模自治体では留意が必要でございます。また、「自律・分散」と「多様な連携協力関係」の構築をサポートする機器・システムの開発・普及、さらに情報通信インフラの条件不利地域も含めた全国的な整備については、地域という視点ではなく、わが国全体の持続可能性を追求するうえでも不可欠と考えております。

〇Ⅴの「地方議会」については、住民代表の議会機能の維持・確保のための取組み、とりわけ町村議会における議員のなり手不足対策は、切実な課題であります。全国市長会とともに、全国市議会議長会・全国町村議会議長会との課題認識の共有のもと、引き続き地制調等において検討が深められることを期待しています。

〇各論については以上ですが、最後に、率直なお話をしたい。この度の国難である新型コロナウイルスとの戦いに、国・地方が心を合わせて一丸となって挑んでいる中で感じたことであります。果たして2年前の「自治体戦略2040構想」に対する私たちの意見や、これまでの地制調の場での私たちの発言は一体何だったんだろうか。これ以上は申し上げませんが、「信頼」は築くのには長い努力が必要ですが、壊れるのはあっという間です。 意見書のおわりに2つのことを申し上げたいと存じます。

〇1点目は、国土のあり方と町村についてでございます。東京一極集中の是正は必須の取組みであり、都市地域、農山漁村地域など多様な地域が自律・分散しながらも、それぞれが重層的につながりを持つ国土構造がめざすべき姿であります。地域資源を活かし、地域の個性を磨くことで、多様な地域の価値がさらに向上発展していく。その集合体が国土を形成します。その中で、私たち町村はかけがえのない役割を果たしたいと考えております。災害時の、大都市に対する安心の砦としての役割もそうでございます。

〇2点目は、「自律・分散」と「多様な連携協力関係」の構築についてであります。町村行政について、広域的な様々な「横の連携」や都道府県・国との「縦の連携」は、益々重要になってまいります。その際、それぞれの行政主体の自主性・自律性のもとでの十分な機能発揮を前提に、「多様な連携協力関係」は、「主従」ではなく「対等な協力関係」でなくてはなりません。ICT(情報通信技術)の進展やAIに代表される技術革新により、「自律・分散」と「多様な連携協力関係」が調和的に両立可能な時代が到来しつつあります。今次のテーマは各府省にも広く関わっていますが、いろんな制度や規制を地域の現場目線で柔軟に使い勝手の良いものにしていくことが極めて重要です。地方六団体が求める地方分権推進とも深く関わります。

〇私たちは、住民自治・団体自治の現場においてこそ、多様な連携協力関係の基盤となる、多様なつながりの「苗代(なえしろ)」を守り育てることができるものと確信しています。これからも本会が主張する「都市と農山漁村が共生する社会の実現」に向けて努力を重ねていく所存でございます。私からは以上でございます。


地方六団体代表の意見陳述の後、今回はweb会議による制約のため、山本委員長が代表してそれぞれの委員から出された質問をまとめて、各地方団体側に行いました。全国町村会に対してもいくつかの質問が出されましたが、その主なものは、『専門小委員会では、今後資源制約下で市町村間で合意が難しい問題についての連携を実現するために、意思決定への周辺市町村の参加機会の充実や自治体事務の計画段階での連携の推進等を議論してきたが、このような考え方の方向性に問題はあると思われるか』、『参画の機会の確保について、法律による制度化をせずに要綱にとどめておくと、周辺市町村の関与を十分に保障することが難しいと考えられるが、それでも法律による制度化に伴って広域連携が展開しやすくなることを防ぎたいということなのか』、『将来の見通しについて、国民全体が減少する中にあっても、単独で行政サービスを提供するために、国や都道府県側が十分な資源を持たないという状態にならないと考えるのか、それとも市町村に対して十分に援助を行えなくなる状態が危惧されると考えるのか』、『都道府県による補完については問題がないと考えているのか』、『首長が交代しても連携の関係性が維持される仕組みを否定的に捉えられているが、住民の視点からすると必要な視点ではないか』などでした。

これらの質問に対して、荒木会長からは、本会提出の意見書の内容も踏まえ、以下のような本会としての主張・考え方を述べたところです。

〇「当事者の市町村間で合意が難しい問題」については、その時点を切り取れば、連携の必要性がそのタイミングではまだない、ということになるのではないかと考える。市町村間の合意形成は、私のまちづくりの経験からも、地域の実情を踏まえ、住民とも情報を共有し丁寧に時間をかけて行われるべきものであり、法律の合意形成の手法で枠をはめるようなものではないと考えている。周辺町村側が望まないことや、当面は先送りして、状況がどうなるか見極めようとすることまで、効率化・合理化等の成果を急ぐ多数側の論理や中心市の意向により、周辺町村が強制されかねない危険性もはらんでいる。広域連携で必要とする業務を行う限り、相手方市町村の参加を担保するのは当然の話であり、法律でわざわざ規定する必要はなく、市町村の自主性に委ねてほしい。どうも無理やり、何か成果を出さなくては、制度をつくらなくてはという姿勢を強く感じる。市町村の行政運営について、画一的な制度への誘導は論外であり、地方総意の懸念を受け止めていただき、「制度づくりはもう少し時間をかけて様子を見よう」といった判断が必要ではないかと考えている。

〇我々は、「広域連携を全国展開しやすくなるのを防ぐことを優先するという価値判断」という考え方はしておらず、広域連携も含め多様な連携協力関係はこれから益々重要だと主張している。町村会が広域連携に反対しているというレッテルを張りたいのか、偏見に満ちた質問だと感じる。法律による制度化をしないことと、保障可能性を捨てることがどうして短絡的に結びつくのか疑問。広域連携で必要とする業務を行う限り、相手方市町村の参加を担保するのは当然の話であり、相手方の了解を得られないものは連携まで至らないということ。これは、当たり前のことで、私たちの現場からみれば、法律でわざわざ規定するものではない。

〇町村の持続可能性についての質問だと理解するが、前提としてそもそも国・地方全体の将来財政をどう考えるのかが出発点である。これまでの地制調での議論では地方財政の姿について突っ込んだ話はなかったと思うが、ご案内のように昨年の地方財政審議会の意見では「どのような地域であっても、どの時代に生まれても、住民に安心と安全、そして、満足度を高めて幸せをもたらす。それが目指すべき地域の姿である」とし、持続可能な、確固たる税財政基盤の構築が不可欠であり、地方税や地方交付税等の一般財源の総額を適切に確保していく必要があるとしている。とりわけ、地方交付税制度は、広範にわたる行政サービスを支える地方財政制度の中核として財源保障機能と財源調整機能を持ち、地方固有の財源であって、私たちがどこか上からの行財政上の「援助を求める」立場との指摘には、唖然とせざるをえない。昨年秋から始まった「全世代型社会保障検討会議」における、将来に向けて「年金」「医療」「介護」をどうするかや「高齢者の雇用促進」、若者等各世代の働き方を支える社会保障とGDP・労働生産性向上の視点などを抜きに、不確実性のある将来を、2040年の人口問題を中心に矮小化して、それを地方自治制度の中の「新たな圏域行政」などいくつかの手段だけで解決策を見い出そうとすることには、初めから無理があるように私は思う。その意味では、認識共有の大前提が違っており、このことは地制調の始まった当初から申し上げていたつもりである。

〇都道府県との補完については意見書でも述べているが、従属的な関係ではなく、「共同的な手法」について推進していくべきではないかと考えている。

〇「首長が交代しても連携の関係性が維持される仕組み」についての質問があったが、驚きを禁じ得ない。こうした考えは、地域住民の選挙で選出された首長の権限、さらには議会権限をも侵すものであり、地方自治を否定することにもなりかねない。私個人というより、首長であれば到底認められないものである。そのようなこともあって、「中間とりまとめ」から削除されたのではなかったのか。意見書の中でも申し上げているが、広域連携も含め多様な連携協力関係は必要である。安定性・継続性もその意義は理解しているが、あくまで、それぞれの地域事情や時代背景のなかで、望ましい連携協力関係をその当事者たちが判断していくものと考える。

〇広域連携から離脱し単独で行う、あるいは連携のパートナーを変える等いろいろの判断が、行政運営を長年やっていくと当然出てくる。我々首長は、自らの決断について、住民の負託に応えているか常に真剣に考えている。最終的には、選挙の審判を受けることになる。


そして、荒木会長は、『最後に申し上げたいのは、私たちのような地方自治の最前線の現場を大事にしていかないと、日本は本当にダメになってしまうということです。委員の皆さんには無理やり何か成果を出さなくては、制度をつくらなくてはという姿勢ではなく、地方の現場に何度も足を運んでもらいたい。そして私たちの心強いファン・応援団になっていただきたいと思います。小さな自治体だからこそ、できることやキラリと光る存在を示せることがたくさんあります。』と発言を締めくくりました。


今回の専門小委員会では、本会のほか、全国町村議会議長会をはじめ全国市長会・全国市議会議長会等各地方団体の代表からも、特に、圏域行政の法制度化に関わる論点について否定的意見や強い懸念などが示されたところです。
地方制度調査会専門小委員会では、今後、地方六団体及び委員からの意見を踏まえ、最終的な取りまとめに向けた議論を行うこととしています。

【資料】

【参考資料】

 

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