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「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」に椎木副会長が出席

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年10月4日

 「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」が10月4日(金)に開催され、本会の椎木巧副会長(山口県周防大島町長)はじめ、地方三団体の各代表者が出席しました。

「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」に椎木副会長が出席

 今回の協議は、9月26日に厚生労働省「地域医療構想に関するワーキンググループ」において、再編統合の議論が必要とされる公立・公的病院のリスト「再検証要請対象医療機関」が示されたことを受け、2025年の地域医療構想の実現に向け、国と地方が共通の認識をもって取組を進めるために、地域医療確保に関する事項について協議を行うことを目的として開催されました。
 先述のリスト公表に対し、全国町村会はじめ地方三団体側は極めて遺憾であるとするコメントを発表しており、急遽、国からの声掛けで「国と地方の協議」の日程調整が行われ、実施されました。
 国からは、長谷川総務副大臣、橋本厚生労働副大臣が出席し、地方三団体からは椎木副会長のほか、平井全国知事会社会保障常任委員長(鳥取県知事)、立谷全国市長会長(福島県相馬市長)が出席しました。

 国から、現在の医療提供体制と地域医療構想の実現に向けた取組、公立病院の経営状況についての説明があった後、意見交換が行われました。
 本会の椎木副会長は、はじめに、地域医療構想について、全国町村会が9月27日に公表した「地域医療構想の進め方に関する意見」(別紙参照)を示したうえで、「地域医療構想に関するワーキンググループ」における再編統合等の再検討を求める公立・公的医療機関の名称の公表に対して、「このワーキンググループには、町村の代表が参加しておらず、あらかじめ十分な情報提供が行われることもなかったことは、誠に遺憾である。医療機関の名称が公表されたことに関しては、既に、住民をはじめ、自治体関係者や病院関係者から、大きな不安や不満の声が多数上がっている」と述べました。
 続けて、それぞれの地域における医療機関について、「住民が安心して暮らし続けるために不可欠な存在であり、全国一律の基準により機械的に分類したデータのみをもとに、再編・統廃合の議論を進めることは、地域住民と医療現場に不安と混乱を招かねない。例えば、統廃合により、町村内または近隣の自治体から公立病院がなくなり、通院に係る所要時間が大幅に増えることで、住民が大きな負担を強いられることになったり、救急患者の受け入れに大きな役割を担ってきた病院がなくなれば、安心の砦である救急医療に深刻な影響を及ぼす事態になる」と懸念を示しました。
 また、周防大島町における町政運営の実例を挙げ、「昨年は、ご案内のように貨物船が大島大橋に衝突し、断水や一時通行止めになり、『島』の特殊性をあらためて実感したが、住民の命と健康を守る病院の存在の大きさは、私自身、島の町立病院の開設者として日々実感している。また、中山間地域や離島等のへき地において、公立・公的病院は、医療を中核に、保健・福祉にも深く関わっており、かけがえのない地域社会の基盤となっている」と強調したうえで、「このような公立・公的病院の存在価値をぜひともご理解いただき、地域医療構想の検討を進めるにあたっては、地域の実態を十分考慮したうえで、慎重な議論がなされるようお願いする」と強く求めました。
 医師の偏在是正については、「地域医療には、いうまでもなく医師の存在がまず不可欠になるが、医師偏在指標によると、全国的に医師の地域偏在・診療科偏在が生じている。特に、中山間地域や離島等のへき地において、医師不足はきわめて深刻な状況となっている」とし、「このような状況を改善するため、定員配置等の規制的手法の導入や、過疎地域等における勤務を、一定期間、義務付けるなど、医師の診療科偏在・地域偏在を抜本的に解消する仕組みの早急な確立をお願いする。そのうえで、地域の実情に合った、柔軟で実効ある需給調整の仕組みを構築していただくよう、お願いする」と要請しました。
 総合診療専門医(注1)については、高齢者が多い町村においては、特定の診療科の専門医よりも、地域の「かかりつけ医」の存在が重要であり、疾病の治療はもとより、日頃の予防医療や健康啓発といった面でも大きな役割を担っていると強調。しかしながら、昨年度の専門医の採用数を見ると、総合診療専門医が不足している実態があきらかになっており、この点について、全国の町村長は、とても深刻に受け止めているとした。そのうえで、新たな専門医制度の推進にあたって、医師の偏在を助長することなく、へき地等で総合的な医療を提供する総合診療専門医の養成・確保が図られる仕組みを実現するよう訴えました。
 また、急速な高齢化に伴い、今後、町村においては地域包括ケアシステムの更なる推進が求められているため、総合診療専門医はもとより、看護師、助産師、保健師、栄養士、薬剤師等の専門職の確保が、ますます不可欠になるとし、「中山間地域・離島等のへき地における医療を持続可能なものとするため、これらの人材確保・育成に関して、それぞれの地域の実情にあった支援策を講じる必要がある」と述べました。
 医師の働き方改革については、「中山間地域や離島などの町村においては、医療機関自体が限られている中で、医師派遣等で苦労して医師を確保し、受け入れ条件も整え、やっとの思いで地域医療を維持しているという実態がある。そして、特に医師1人で診療所を運営しているようなところでは、その医師が休むと、休診にせざるを得ないといった事例もある」と説明し、「医師の働き方改革については、医師の労働環境を改善していくことは、もちろん大事であるが、地域における医療提供体制といった視点も考慮し、慎重な検討をお願いする」と述べました。
 まとめとして、地域における医療の提供は、住民が住み慣れた地域に、いつまでも安心して暮らし続けることができるために必要なものであると強調したうえで、「特に、高齢化が進行し、一方で、医療機関が限られた町村においては、身近な医療である地域医療の重要性は、より一層増していくものと思われる。我々町村長は、地域における医療を確保するために、日々努力している。今後、地域医療の発展に向けた施策を展開するに当たっては、町村における医療の現場に思いを寄せていただき、町村の実態を十分踏まえたものとなるよう、特段の配慮をお願いする」と訴えました。
 最後に、周防大島町においても、人口減少に伴う公的医療機関のダウンサイジングを進めようとしている現状を説明し、ダウンサイジングを図るうえでの職員の余剰等の問題や、運営形態を転換したとしても公営企業債が残り、町の財政に影響を与えてしまう問題等を指摘、これらの問題に対する支援の検討も要請し、意見を締め括りました。

 

意見を述べる椎木副会長  

▲意見を述べる椎木副会長

(注1)2018年4月より開始された新専門医制度において、専門医のひとつとして加えられた診療科。主に地域を支える診療所や病院において、他の領域別専門医、一般の医師、歯科医師、医療や健康にかかわるその他の職種等と連携し、地域の医療、介護、保健など様々な分野でリーダーシップを発揮しつつ、多様な医療サービスを包括的かつ柔軟に提供する医師を指す。

 

【参考資料】

地域医療構想の進め方に関する意見 [PDFファイル/124KB]

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