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「第32次地方制度調査会 第3回総会」に荒木会長が出席

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年7月31日

 7月31日(水)、第32次地方制度調査会(会長 市川晃・住友林業(株)代表取締役社長)の第3回総会が開催され、本会からは荒木泰臣会長(熊本県嘉島町長)が委員として出席し、意見を述べました。

「第32次地方制度調査会第3回総会」に荒木会長が出席

 総会は、昨年開催された第1回・第2回総会や、有識者委員で構成する専門小委員会におけるこれまでの議論を踏まえた、諮問事項に対する中間報告(案)について審議するために開催されました。

 はじめに石田真敏総務大臣が挨拶に立ち、「今回示された中間報告(案)では、2040年頃には、地方のみならず東京圏においても、人口減少と高齢化が進行し、高齢者人口の増加、生産年齢人口及び年少人口の減少という人口構造の変化が、サービスの需要と供給の両面だけでなく、持続可能性にも影響を与えるとされている。また、高度経済成長期に整備したインフラが老朽化し、その維持管理・更新費は、2040年代に最大で現在の約1.4倍になるとともに、空き地・空き家の増加が進行することで、都市の低密度化 ・スポンジ化が予想されている。その一方でSociety5.0の到来により、地域課題の解決に新たなニーズが活用できる可能性があるとされている。このような大きな時代の変化を多角的に踏まえる中で、長期的な視点から検討し今からどのような手だてを講じていく必要があるかを真剣に議論することは極めて重要だと考えている。今回の中間報告(案)は、2040年頃にかけて地域において対応が求められる変化や課題、またこれらの変化や課題に対応するために国及び地方公共団体に求められる視点や方策について広範な分野にわたって調査審議した内容を整備してとりまとめていただいたものであり、大変意味深い。委員の皆様には、この中間報告(案)に示された2040年頃に顕在化することが想定される諸課題に対応するために具体的な地方行政体制のあり方としてどのようなことが求められるかについて、今後幅広い見地からさらに調査審議を進めていただくようお願いする」と述べました。

 その後、事務局より「2040年頃から逆算し顕在化する地方行政の諸課題とその対応方策についての中間報告(案)」の説明がありました。(資料1参照)

挨拶する石田大臣

▲挨拶する石田大臣

 意見交換の場で、荒木会長ははじめに、中間報告(案)について、「今回の中間報告(案)は、これからの課題とともに求められる方策の方向性を示したもので、制度論についてはこれから本格的な議論になるものと理解している。したがって、現時点での全国町村会としての総論的な意見は、去る5月31日に開催された、専門小委員会のヒアリングの際、私が申し上げた意見及びその際の意見書・報告書と基本的には同じスタンスである」としたうえで、「今回示された中間報告では、ヒアリングの際、私どもが懸念を表明した、『集約化』や『効率化』といった表現の使い方に一定の配慮をいただいたものと理解しているが、随所に『地域の枠を超えた連携』や『組織の枠を超えた連携』などの記述がある。これは、当事者間で受け止め方を一歩誤ると、平成の大合併のように、強制的な広域行政の推進につながりかねない記述でもあることから、今後の議論にあたっては、地方六団体の意見を十分に尊重していただき、私どもにとっても望まれる形でのとりまとめが行われるようお願いする」と訴えました。
 次に、地制調における今後の議論について、「諮問事項の後半部分にあたる、『圏域における地方公共団体の協力関係』、『公・共・私のベストミックス』、『その他の必要な地方行政体制のあり方』については、これから検討が進められ、最終的には地方自治関係や各府省の制度に関わる議論が深められていくものと思う。その際には今までも申し上げてきたように、制度改正自体が目的化するのは本末転倒であり、制度改正の必要性の視点も含めご審議をお願いする」と強調し、「私自身、今月も離島や山間の小さな村の現場に足を運び、忌憚のない意見交換を行ったが、村長さん方からは村づくりへの誇りや強い決意とともに、制度論の話よりもむしろ、個々の事案や具体的な政策分野に即した課題解決策を強く求める声を数多く聞いた。これには、当然、現行制度をより一層使い勝手良くすることや、人材面・財政面での対応も含まれる」と指摘した。そのうえで、一般化・共通化した新たな法制度を作れば、これまでできなかった課題を解決できるだろうという、安易な議論の展開になることがないよう強く求めました。
 また、圏域行政について、「『行政のフルセット主義からの脱却』『圏域単位の行政をスタンダード』『個々の制度に圏域をビルトイン』『圏域単位で行政を進めることを真正面から認める法律上の枠組み』等については、なぜ現行制度の活用ではいけないのか」と前回のヒアリングから引き続き言及し、現行の広域行政や共同化・連携の仕組み(一部事務組合、広域連合、事務委託や定住自立圏、連携中枢都市圏、連携協約等)の検証がないままの極めて乱暴な提案は容認できないと改めて強調しました。
 さらに、「自治体戦略2040構想研究会にいう圏域行政の推進は、周縁部町村の自立とは反対に、町村を衰退させ、消滅させかねない危険性をはらんでいる。憲法が保障する、地方自治の本旨である『住民自治』、『団体自治』の観点からも極めて問題があり、断じて容認できるものではない」とし、「総務省では昨年7月、この地制調第1回総会からわずか2週間後に、自治体関係者は入らない『基礎自治体による行政基盤の構築に関する研究会』を、あえてきつい言い方で申し上げれば、地制調の裏で立ち上げ、生活圏と市町村を包括する行政ユニットの関係を取り上げて、圏域の制度設計等について精力的に検討を進めている」と強い懸念を示しました。
 この点について、「審議は非公開で行われているようだが、後日に出る総務省ホームページの議事録概要を拝見すると、先月まで12回開催し、都道府県による助言・勧告など、あたかも平成の大合併を推進した際と同じような手法も視野に入れながら、全ての市町村を圏域などの新たな制度に例外なく組み込んでいくような方向で具体的に議論を進めているのではないかとも思える。我々市町村関係者からは、恐らく、今後後半の審議の中にこの研究会の検討内容が反映され、平成の大合併の時のように、『財政措置で誘導するなどして、事実上そのような方向に進めざるを得なくなるのではないか』といった強い懸念の声が既に上がっている」として、「もし自分たちが盛り込みたい内容を別途、事前に準備し、審議を誘導するならば、私ども町村と国との信頼関係を決定的に崩すものであり、到底容認できるものではない」と述べ、地方自治制度に関する重要事項について、この場で我々地方の声を十分にくみ取りながらオープンな形で真摯な議論が重ねられ、検討が進められていくのが本来の姿であると強調しました。
 最後に、「今後の審議は、制度づくりの具体的な内容になるため、審議の行方によっては、私ども町村の行政運営や地域経営に極めて重大な影響が生じることが懸念される。今後、十分な時間的余裕を持って、節目節目の適切なタイミングで、私どもの意見を申し上げる場を必ず設けていただくようお願いする」と求め、意見を締めくくりました。

意見を述べる荒木会長

▲意見を述べる荒木会長

 その他の委員からは、「中間報告の中であえて地方公共団体という抽象的で無機的な言葉をわざわざ選んでいるのは、地方公共団体という言葉に圏域の概念がすでに含まれているからではないか」、「『圏域』や『連携』といった言葉について明確に定義した上で議論しなければならない」、「『生活圏』や『経済圏』といったあいまいな地域概念の下、市町村の区域を画一的に圏域として張り巡らせる政策には賛成しかねる」、「地域の情勢が様々である中で、国があらかじめ一定の枠組みを決め、そこに自治体を誘導し、強制的に圏域行政に追い込むような仕組みは絶対に作るべきではない」、「圏域が法制化され、中枢都市のイニシアチブと連携協約がワンセットになった形で展開されると、中枢都市の意向によって周辺市町村の主体性が損なわれるのではないか」、「デジタル技術の自治体業務での有効活用についてもデジタル情報社会の多面的・複合的な実装を正確に評価する中で、着実に対応を図っていくべき」、「憲法が保障する団体自治・住民自治といった地方自治の本旨が十分尊重されるように慎重かつ丁寧に議論すべきである」等の意見が出されました。


 各委員からの意見を受け、市川会長は、「今後、中間報告(案)に対する各方面のご意見を伺いながら具体的に協議していく」としたうえで、「今後の審議について(案)」(資料2参照)を示し、「中間報告(案)のあとがきに即して専門小委員会においても、調査審議を進めていく。また、現行の合併特例法が今年度末に期限を迎えるため、これについての対応も平行して審議を進める必要がある」と述べ、総会を閉会しました。

 

【参考資料】

資料1 中間報告(案) [PDFファイル/488KB]
資料2 今後の審議の進め方について(案) [PDFファイル/170KB]

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