ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 全国町村会の活動状況 > 「第32次地方制度調査会 第17回専門小委員会」に荒木会長が出席

「第32次地方制度調査会 第17回専門小委員会」に荒木会長が出席

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年5月31日

 第32次地方制度調査会(会長 市川晃住友林業(株)代表取締役社長)は、5月31日に第17回専門小委員会(委員長 山本隆司東京大学教授)を開催し、本会の荒木泰臣会長(熊本県嘉島町長)をはじめ、地方六団体が出席し、意見を述べました。

「第32次地方制度調査会 第17回専門小委員会」に荒木会長が出席

 同専門小委員会は、第32次地方制度調査会の諮問内容である「人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを迎える2040年頃から逆算し顕在化する諸課題とその対応」について、今夏を予定している中間とりまとめに向けて、地方六団体から意見聴取するため開催されたものです。

 荒木会長は、これまでの専門小委員会の中で示された「とりまとめに向けた検討について(案)」に対する意見と、本会でとりまとめた「第32次地方制度調査会への対応について(報告)」に沿った意見の2つのテーマについて述べました。

 「とりまとめに向けた検討について(案)」(参考1)に対する意見については、別紙1の意見書を提示し、「これからの国のあり方・地方のあり方として、東京一極集中の是正は必須の取組みであり、地域の多様性を大切にした分散型国土の形成をめざすべきである。我々町村は我が国の一員として、将来にわたり持続可能な国づくり、そして安全安心な国づくりに大いに貢献したいと考えている」、「専門小委員会で熱心に議論・検討を進めていただいているが、今後どのように集約されていくのか。そして、地方行政体制のあり方等の制度改正にどう結びついていくのか。この点が我々町村の立場としてはとても気にかかる。今回の中間とりまとめは、各分野に多岐にわたり、従来にない広範囲なものである。この中には、私どもが一番気にしている圏域行政も含め、地方行政体制に関わる制度づくりに関係してくるであろう内容が随所にある。現時点の内容は、まだまだ肉付けや修正がされていくと思うので、今後、ある程度中間取りまとめの最終形が見えてきた段階で別途の機会をお願いしたい」と2点を強調しました。

 「第32次地方制度調査会への対応について(報告)」に沿った意見については、昨年本会に設置された「人口減少社会における町村行政に関する委員会」が、本年3月にとりまとめた報告書の抜粋版(別紙2)を示したうえで、これまでの総会において述べた本会の総論的な主張や意見の大本となる基本的考え方や、人口の小規模な町村や離島等の条件不利地域の町村、被災地の町村等に重点的にヒアリングを行った町村の現場の生の声について触れ、「地方自治の最前線で懸命に困難な課題に立ち向かい、日々奮闘している我々の仲間の生の声である。ぜひ受け止めていただきたい」と述べました。
 また、同報告書内の「全国町村会としてのこれからの対応方針」(別紙2・14頁)について、①「総論」、②「スマート自治体」、③「公共私によるくらしの維持」、④「圏域マネジメントと二層制の柔軟化」(「圏域単位の行政のスタンダード化」及び「都道府県・市町村の二層制の柔軟化」)の4点に触れ、特に重要な点について意見を述べました。
 ①「総論」については、「圏域マネジメントと圏域行政のスタンダード化、二層制の柔軟化等が提言されているが、中心市の周縁部町村、小規模町村等の団体自治、住民自治に基づく自己決定権が制限される恐れがある。この点は、連携中枢都市圏構想や平成の大合併と通底する課題でもあり、国から一方的に法律に基づく制度づくりが行われることは、決して容認できない」とし、総務省の「自治体戦略2040構想研究会」報告書において、市町村の人口減少と様々な危機を列挙し、現行の地方行政体制を抜本的に見直す必要性を強調していることに対して、「市町村では『行政運営』とともに、自分たちの市町村、各地域・集落をどう維持するかの『地域経営』の観点が極めて重要である。また、将来に向けて地域の総合力をいかに発揮するかは、中間とりまとめでも議論されているが、地方自治法等の制度の枠内で解決できるものではない。各省庁の制度や規制の見直しもぜひ提言していただきたい」と求めました。
 さらに、「小規模町村は将来、確実にやっていけなくなるとの思いこみがないか。町村の現場の声を聞くと、『決して楽ではないが確実にこの村は残る』と感じたこととの間に大きなギャップがある。この国のあり方・地方のあり方として、『東京一極集中の是正』は必須の取組であり、『地域の多様性を生かした分散型国土の形成』を前提にすべきである」と強調しました。
 ④「圏域マネジメントと二層制の柔軟化」については、特に「行政のフルセット主義からの脱却」、「圏域単位の行政をスタンダード」、「個々の制度に圏域をビルトイン」、「圏域単位で行政を進めることを真正面から認める法律上の枠組み」等について、周縁部町村の自立とは反対に町村を衰退させ、消滅させかねない危険性を持っているため絶対に容認できない論点であるとしたうえで、「現行の広域行政や共同化・連携の仕組み(一部事務組合、広域連合、事務委託や定住自立圏、連携中枢都市圏、連携協約等)の活用ではなぜだめなのかの検証がないまま、極めて乱暴な提案である」との懸念を示しました。さらに、「都道府県の補完・支援は、『市町村の自立』を前提にしたものであるべきで、誤解を与えることのないよう『二層性の柔軟化』の表現は避けるべきである」と求めたうえで、「各専門分野を中心とした人材の確保は益々難しくなることから、人材育成と柔軟な活用に向けた取組は今後益々求められる」との認識を示しました。

意見を述べる荒木会長

▲意見を述べる荒木会長

 最後に、町村にとっての広域連携のあり方について、嘉島町における具体例(別紙3)を交えながら、意見を述べました。
 「熊本連携中枢都市圏」の状況について、中心都市に重きが置かれ、周辺町村では恩恵を感じられず、圏域全体としての発展は難しいと感じている。一方、同連携中枢都市圏とは別に、近隣5町で「上益城広域連合」を設立し、介護保険認定等の審査や行政不服審査会等の運営を行っているが、さらに各町村が抱える新たな課題への対応として、専門技術者の育成や人事交流による技術の確保に向け、調査研究を推進しているほか、郡内のゴミ処理施設やし尿処理施設などの統合・運営を目指した取組を進めており、これらの施設運営は、単独では負担が大きいため、統合することで高度で効率的な処理を行うことが期待できるとしました。
 このような具体例を紹介しつつ、「私どもの広域連携では、それぞれの町村が課題を共有しながら、お互いの立場を尊重しつつ、問題解決に取り組んでいる。地域の将来の姿を自ら描けることが、広域連携本来の望ましい姿である」との認識を示しました。
 また、「圏域行政を推進していく上で重要なことは、個々の自治体が主体性を発揮できることであり、画一的に一括りにせず、現場のニーズを重視して、柔軟性を持たせるといった視点が不可欠である」と述べ、「2040研究会報告書では、『行政のフルセット主義からの脱却』の受け皿として、圏域行政のスタンダード化や法制化が提言されているが、制度構築と運用の仕方によっては、中心市周縁部の町村の自立とは反対の、町村を衰退させ、消滅させかねない危険性を持っていると感じる」と改めて強調し、意見陳述を締め括りました。

 その他の地方六団体側委員からは、「とりまとめに向けた検討について(案)」やこれまでの議論の進め方に対して、「日本の国土を支える地方自治体、それぞれのふるさとのアイデンティティを維持していかなければならない」「都道府県の役割や地方議会のあり方についても議論すべき」、「過去2回の総会における地方側の発言内容が反映されていない」、「人口増への取組についても記載すべき」、「地方交付税等の財源で地方を追い込むことは良くない」等の意見が出されました。

 その後の意見交換において、委員からの広域連携の成功例と失敗例に関する質問に対し、荒木会長は、「熊本市とは連携中枢都市圏の中で協定を41個結んでいるが、効果は上がっていないと感じる。例えば、病児病後児保育については、昨年度の嘉島町から熊本市への利用件数は12件のみだった。一方、同じ郡内の3町で実施している病児病後児保育については、54件の利用があった。また、連携中枢都市圏に参加している他自治体からは、中心市には億単位のお金が行くのに対し、周縁部の町には数十万円しか配分されない。中心市抜きでやった方が良いのではないかという意見もある。連携中枢都市圏は上手くいっていないというのが私の地域の現状である」と意見を述べました。
 また、東京一極集中についても、「少しでも転出者を減らすためには、それぞれの地域で働く場所が必要になる。企業誘致等も行っているが、市街化調整区域や農業振興地域、農地転用の規制が多い。働く場所を作るためにも、これらの規制緩和を検討していただきたい」と求めました。

 

【参考資料】

・参考1  「とりまとめに向けた検討について(案)」(地制調専門小委員会資料) [PDFファイル/1.35MB]
・別紙1  「とりまとめに向けた検討について(案)」に対する意見 [PDFファイル/341KB]
・別紙2 第32次地方制度調査会への対応について(報告)抜粋版 [PDFファイル/504KB]
・別紙3 上益城郡5町の廃棄物(ごみ・し尿)処理の広域処理への取組み [PDFファイル/302KB]

Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)