総務大臣・地方六団体会合が、12月17日、総務省において開催され、荒木泰臣全国町村会長(熊本県嘉島町長)はじめ、地方六団体代表が出席し、平成31年度地方財政対策について、意見交換を行いました。
はじめに石田総務大臣が挨拶に立ち、「政府はソサエティ5.0社会の実現を成長戦略の第一番目に挙げている。これから大きく社会が変わろうとしていく中で、地方も大きな影響を受けるが、どのような形で持続可能な地域社会を作っていくのか。様々な革新的技術も取り込む中で、地域の安定した持続的な成長を図っていきたい」と述べたほか、地方税財政等に関する課題について説明がありました。
地方財政対策については、地方行政の運営に必要な財源の確保をしっかりと主張していきたいとしたうえで、「安定的な財政運営に必要な一般財源総額はしっかり確保していきたい。その中で出来る限り交付税を確保し、地方財政の健全化を図る上で懸念のある臨財債の発行額を縮小することを目指していきたい」と強調しました。
幼児教育無償化に係る地方の財源負担割合については、先般の合意に基づき、地方負担の全額を地方財政計画に計上し、一般財源総額を増額確保したうえで、地方交付税の対応にも万全を期して、地方の安定的な財政運営に支障が生じることのないよう努めるとしたほか、平成31年度は、幼児教育無償化に要する経費は、全額国費により負担するとしました。
防災・減災および国土強靱化については、現在国において3カ年緊急対策のとりまとめを急いでいるとし、これに基づく事業を円滑に実施できるように、地方負担については、適切な地方財政措置を講じるほか、国の緊急対策と連携し、地方自治体が単独事業として実施する、河川、治山等の防災インフラの整備を推進するため、地方財政措置の拡充を検討するとしました。
平成30年度の2次補正予算については、防災・減災等に係る経費を要求しているほか、本年多発した各災害に対応するため、特別交付税を700億円増額することを検討しており、各自治体の財政運営に支障が生じないように万全を期すとしました。
地方法人税の偏在是正措置については、14日に決定された平成31年度与党税制改正大綱において、都市と地方が支え合い、共に持続可能な形で発展するため、消費税率10%段階において復元後の法人事業税の一部を分離し、特別法人事業税(仮称)、および特別法人事業譲与税(仮称)を創設することとされたが、新たな偏在是正措置によって生じる財源については、必要な歳出を地方財政計画に計上するなど、その全額を地方のために活用していきたいとしました。
車体課税については、消費税率の引き上げに合わせて、保有課税を恒久的に引き下げることとされたが、地方六団体からの要望を踏まえ、エコカー減税等の見直しや、国税から地方税への税源移譲によって、恒久減税に見合った制度的かつ安定的な財源をしっかり確保するとされたほか、自動車の取得時の負担感を緩和するため、環境性能割の税率を1年間、1%分軽減することとされているが、この減収分については、全額国費で補填するとされ、地方財政に影響を与えることなく、最終的な結論を得ることができたと説明がありました。
また、ふるさと納税の見直し、ゴルフ場利用税の堅持についても、それぞれ結論が得られたとし、「今後とも皆さまのご支援をいただきながら、税収が安定した地方税体系の構築に取り組んでまいりたい。本日は皆さまから忌憚のないご意見をいただき、有意義な議論ができることを期待する」と締め括りました。
▲挨拶に立つ石田大臣
続いて意見交換に入り、荒木会長は、はじめに総務大臣の平成31年度の税制改正、地方財政対策、予算編成における地方の立場に立った尽力に触れ、今般の「与党税制改正大綱」において、車体課税に係る地方税収の確保及びゴルフ場利用税が堅持されたことに対し謝意を表したうえで、車体課税について、「大綱に『懸案事項とされてきた車体課税の見直しについては、今般の措置をもって最終的な結論とする。』と明記されたことは、今後、地方公共団体の安定的な財政運営が確保され、確実かつ安定的な住民サービス提供につながるものと考えており、感謝申し上げる」と述べました。
地方交付税等の一般財源総額の確保については、脆弱な財政基盤である町村にとって、命綱であるとし、総額の確実な確保を強く求めました。
また、大規模災害等について、西日本豪雨災害、北海道胆振東部地震等の災害に対して、11月に1次補正予算を、先日11日には特別交付税措置を講じたことに謝意を表しつつ、「東日本大震災や熊本地震も含め、被災した町村の一日も早い復旧・復興を果たしていくため、万全の財政措置をお願いする。また、防災・減災や国土強靱化のための2次補正予算を編成すると聞いているが、地方負担について確実な財政措置を講じていただくようお願いする。更に、緊急防災・減災事業債の恒久化や対象事業の拡大などについても十分な財政支援をお願いする」と要請しました。
さらに、幼児教育の無償化について、「2回の国と地方の協議を経て、先日、ようやく国と地方の間で財政措置について合意に至ったところである。大臣には、地方の立場からいろいろと配慮いただいたが、確認とお願いとして、まず、この幼児教育無償化に係る地方財政措置の交付税の算定においては、ぜひ『見える化』を図っていただき、透明性の高い仕組みを構築していただくよう、よろしくお願いする。また、この幼児教育無償化を実施していくには、直接住民に接するわれわれ市町村長が、説明責任を負うことになる。大臣においても、ぜひ円滑な実施に向けたご支援をいただくようお願い申し上げる」と述べ、意見を締め括りました。
地方六団体からの意見を受け、石田大臣は、「幼児教育無償化に係る地方財政措置の交付税の算定の見える化については、そのような形で実現していきたい。今後のPDCA協議会はじめ、様々な場所を通じながら、総務省としても無償化の円滑な実施に向けて努力していきたい」などと応え、最後に、「本日いただいた様々なご提言、ご要望をしっかりと受け止めて、十分に意思疎通を図りながら進めていきたい。今後ともよろしくお願い申し上げる」と述べ、会合を閉会しました。