▲横倉山と仁淀川
高知県越知町
3333号(2025年9月15日)
高知県越知町長
小田 保行
越知町は、高知市の西方約32kmにあり、高知県のほぼ中央、仁淀川の中流域に位置し、地域特性は山間から中山間地域へ移行する地域である。町域は東西15.2km、南北16.6kmで、西南から東北にかけて長く伸びた形をしており、総面積は111.95km²の広さを有している。
地形は、町域の大部分を占める山地と中央東部に位置する越知盆地よりなっており、仁淀川町との境界にある1,073mの禿山を頂点にして、800~1,000m級の山岳で構成される西部山地から東部へ向けて全体に傾斜している。
河川は、町域全体の西部から東部への傾斜に沿って、町域中央部を仁淀川が流下しており、市街地付近で仁淀川が大きく湾曲する部分で柳瀬川、坂折川が合流している。この合流部分で本町唯一の盆地が形成されている。
地質は、西南日本外帯の秩父累帯に位置し、横倉山周辺は実に4億年以上前の日本でも古い部類の地層である。
本町は、明治11年、越知村として誕生し、明治33年、町制を敷き、以来高吾北地域の主要地、予土線交流の要衝として発展している。
町長就任2期目のスタートにおいて、平成30年6月議会での所信表明の中で、公約として「アウトドアなまち」を掲げた。本町は横倉山や仁淀川などの豊かな自然が多くあり、その資源を活用するための環境整備を推進し、多世代で自然に触れ「遊び」「学び」「楽しみ」を通して、人間が持ち合わせている「五感」「感性」等の「本来の人間力」を取り戻しながら「心豊かな生活」を営むことができる、『アウトドアなまち』をめざしたいと考えていたからである。
そのため、宮の前公園をはじめ多数のキャンプ場の整備、仁淀川を活かしたカヌーやラフティング事業の充実、横倉山でのトレッキング事業のブラッシュアップ、まち歩きに必要なまち小屋の整備を行ってきた。
今後は農業体験や漁業体験の活性化、植林の広葉樹化、野外での防災教室などを進めていきたい。
第5次越知町総合振興計画に定められた施策の大綱の一つである「地域資源を活かした産業の振興」を推進するため、情報発信機能と物販機能を持った「観光物産館おち駅」を拠点に、本町における観光振興と物販体制の強化を図ってきた。また地域のさまざまな素材を組み合わせた交流・体験型観光のメニューづくりや地場産品などを活用した新商品開発に取り組み、観光および物販による外貨の獲得につなげてきた。観光協会の事業であるカヌーやラフティングは「仁淀ブルー」効果もあり、知名度はあがっていた。しかしながら、本町は宿泊施設が少なく、滞在型観光の分野では弱みが多いことから、本町の自然の魅力である山(横倉山)と川(仁淀川)での体験型観光と合わせて滞在施設を整備することで、観光客の満足度をあげる必要があると考えていた。
この基本計画を策定するために、平成27年11月、全国的なブランド力のある株式会社スノーピークに監修を委託することになった。
その後、平成30年4月に、「スノーピークおち仁淀川キャンプフィールド」をオープン。スノーピークのキャンプ場としては四国初であり、仁淀川に面したキャンプ場には、本町ゆかりの木々が程よく木漏れ陽を作る美しい芝生のオートキャンプサイト30区画と、隈研吾氏デザインのモバイルハウス「住箱」 を10棟設置した宿泊棟を展開している。また、仁淀川を感じるアクティビティとしてラフティング事業をスタートした。
さらに令和元年6月には、コスモスまつりなどで親しまれる宮の前公園に「スノーピークかわの駅おち」をオープン。地域の物産品を中心とした販売、そしてビジネスや観光、旅を含めた来訪者へ向けた宿泊拠点として、こちらでも「住箱」を展開し「スノーピークおち仁淀川キャンプフィールド」と2拠点にて、本町の豊かな自然や景観、そして野遊びの魅力を発信している。
今後も全国から人が呼べる満足度の高い観光地づくりを推進することを通じて、経済波及効果や雇用拡大、地元との交流、リピーターによる交流人口の拡大等、地域活性化につなげていく。
高知県のほぼ中心を流れる仁淀川は、西日本最高峰の石鎚山に源を発し、124kmにわたって土佐湾に流れ着く、四国3大河川の一つであり、国土交通省が発表する「水質が最も良好な河川」に、令和7年時点、9回選ばれている。
リゾート地の海辺を思わせるような透明度、エメラルドグリーンともターコイズブルーとも呼べるような青の美しさをネイチャーカメラマンの高橋宣之氏が「仁淀ブルー」と呼び始め、その名が知られていったと言われている。
なぜ青く見えるのか?さまざまな説があり、これは、水中の不純物が少なく、青い光を強く反射するためである。また、仁淀川は、流れが速く、水温が低いため、不純物が少ない状態を保ちやすいのが特徴でもあり、川底の岩石が青みがかった「緑色片岩」であることも、青い色をより鮮やかに見せる要因の一つである。
「仁淀ブルー」とは特定の場所のことを指しておらず、この川のきれいさを表現した仁淀川のキャッチコピーのようなものである。
仁淀川の魅力は、透明度の高さだけではなく、カヌーやラフティング、アユ釣り、バーベキューなど、アウトドアライフを楽しめるスポットが数多くある。
また、川の要所には、増水の際に水に沈む欄干のない沈下橋が数多くあり、高知を代表する風景となっている。本町には、仁淀川本流に3カ所ある。その一つの沈下橋が、浅尾沈下橋であり、「仁淀ブルー」の名付け親である高橋宣之氏は、「仁淀川流域における絶景ポイント」として、原始の森横倉山とともに、日本の原風景の残るここ浅尾沈下橋のある鎌井田地区を挙げている。この浅尾沈下橋は、映画のロケ地にも使われていて、「竜とそばかすの姫」の舞台にもなっており、現在でもたくさんの方が聖地巡礼に訪れる場所となっている。
本町における人口は4,744人(令和7年7月1日時点)。うち34歳以下の人口は、平成22年の1,414人から令和5年の間で530人減少している。また、20歳から34歳の人口が令和元年から令和5年の間で毎年28人程度(平均)が減少している。主な要因としては、進学や就職などを契機に町外へと転出する若者が多いことが挙げられる。婚姻件数は、平成22年には23組であったが、令和5年では11組と12組減少している。出生件数は、平成22年の38人から令和5年には16人と22人減少している。なお、合計特殊出生率については、1.09となっている。
移住数の実績は、増加傾向(令和元年24人→令和5年35人)にあり、令和5年に寄せられた移住相談のうち、およそ8割が住まいに関する相談であった。空き家バンク延べ登録数は、令和元年は63件から令和6年は96件と増加したが、現在、入居可能物件は7件と少ない。
本町の人口減少対策は、平成23年度に越知町総合振興計画で定めており、また、令和7年度からは、高知県の人口減少対策総合交付金を活用して、新たな取組を開始した。
一つ目は、住宅取得支援事業である。これは、町内外の子育て世帯または若者夫婦世帯が、中古住宅を除却し、その土地に新築住宅を建設する場合に奨励金を支給。あわせて新築住宅建設後、新生活を始めるにあたり必要となる費用の軽減を図るための応援金を支給し、町外からの転入促進および町外への転出防止を図っていく。
二つ目は、住宅リフォーム支援事業である。建て替えの難しい空き家や住宅のリフォームを促進し、既存住宅の長寿命化やライフステージ毎に必要なリフォームを後押しすることで、長く住み続けられる住居の確保につなげていく。
ほかにも若年層交流イベント支援事業として、若者が町内で開催する同窓会を支援することで、同世代の若者の交流を推進するとともに、若者に対して、町の移住支援策等各種施策を紹介することにより、「出会い」の場の創出に加えて、「Uターン」、「定住促進」につなげる。また、結婚意欲のある男女を対象に婚活イベントを開催することにより、多くの出会いの場を提供し、婚姻数の増加につなげていく。
本町は、「アウトドアなまち」を宣言するとともに、まちづくりの基本理念である、(1)自然を活かして「遊び」「学び」「喜び」を創造する(2)自然を通して「生き抜く力」「いたわる心」を育てる③自然の中で「自然との交流」「多世代間交流」を深めると設定し、本町らしい自然と触れ合い、人間力を高め、互いに助け合いながらまちづくりを進めていく。
また、人口減少対策については、子育て世帯が魅力を感じる町になること、都市部の人々から移住先として選んでもらえるように、都会にない自然の豊かさや人との絆の強さといった本町の強みを最大限に活かし、あらゆる世代が暮らしやすい、住みやすい、住んでみたい越知町をめざしていく。
高知県越知町長
小田 保行