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宮崎県日之影町/森林環境譲与税を活用した森林整備等への支援について

印刷用ページを表示する 掲載日:2024年5月20日

町中心部 国道218号「青雲橋」を眺める

▲町中心部 国道218号「青雲橋」を眺める


宮崎県日之影町

3280号(2024年5月20日)
宮崎県日之影町役場
農林振興課


 

● ポイント ●
・「意向調査データベース」作成による調査時の無用なトラブル回避。
・地産地消を目指した、コンテナ苗供給体制整備への支援。
・重要インフラ施設(林道)の適正な維持管理による災害時の被害軽減と安全なライフライン(生活道)の確保。
・林福連携や消防団活動への支援など住民生活に密接する取組。
・林業に関する情報交換や譲与税の使途等に関する意見交換を図るための協議会を設立。

町の概要

 日之影町は宮崎県北西部に位置し、最北部は大分県に接し、東西約9km、南北約30km、総面積27,767ha、人口約3,300人の山村です。

 町の中央部を西から東に五ヶ瀬川、北から南に日之影川が貫流し、この2つの河川に大小20余りの谷川が流れ込み、針広混合林の中に深いV字形の渓谷を成しています。

 町土の約91%が森林で、スギ・ヒノキを主体とする民有人工林が8,603ha、標準伐期齢以上の森林が75%を占めます。

林業の現状と課題

経営管理実施権配分計画により整備された森林

 本町の林業は大型製材工場や木質バイオマス発電施設の稼働による木材需要の高まりから高性能林業機械での伐出が進む一方、担い手の減少による管理の行き届かない森林の増加や、高齢化や獣害による経営意欲の低下から、伐採後の再造林率の低下が課題となっています。

 このような中、「森林経営管理制度」と「森林環境譲与税」(以下、「譲与税」という。)を有効活用し、林業担い手の確保や育成、再造林の推進による循環型林業の構築と林業の持続的発展を図るための施策に取り組んでいます。

森林経営管理制度の取組

 平成30年に成立した「森林経営管理法」に基づく森林経営管理制度については、令和元年度に森林経営管理制度の取組に先立ち、「意向調査データベース」の作成にとりかかりました。

 まず、民有人工林のうち公有林や公社分収林等を除く個人有林7,129haから森林経営計画森林を控除した3,585ha、総面積の13%を対象に「対象森林のリスト(データベース)化」をしました。

 これは『森林簿』データから「人工林・個人有林・林齢30年生以上のスギ・ヒノキ林分」等のデータを抽出して「森林経営計画策定森林」を除外、『森林計画図』から「車道に近接している森林」を区別してリスト化した後に所有者別に並べ替えます。

 このデータベースは5年ごとに更新し、データをもとに町内4つの大字ごとに令和15年度まで順に調査する計画で、必要に応じて現地調査を行いながら人工林資源面積が多い(まとまった)森林から毎年度、数十人の調査対象を抽出します。

 併せて『林地台帳』で登記・課税情報、所在、共有者数、自伐林家や同姓同名等を調べ、『森林計画図』と境界を対比・確認して最終的な調査対象者を20数人に絞り込みます。

 これにより不確実な情報による無用なトラブルの回避を図り、対象者を限定するため職員と地域林政アドバイザーが面談して課題の提起や施業方法の助言など管理意識の醸成を図ることができます。

 意向調査は令和元年度から令和5年度の5年間で83人、319ha(所有人工林面積831ha)、対象森林の約1/4(831ha/3,585ha)を終えました。

 このうち(法第6条申し出を含む)14人から集積(町に委ねたい)意向があり、うち1人(4.06 ha)は集積計画から配分計画に移行、林業経営者が令和2年度から19年間(主伐~保育間伐)の経営管理を行っています。

 また、2人(0.65 ha)は集積計画に基づき令和3、4年度に市町村森林経営管理事業(保育間伐・全額譲与税)を実施、他1人(9.86 ha)は森林組合との長期施業委託(主伐~利用間伐)を助言して3年度から施業に着手しました。

 その他、協議中等の2人をのぞき、残り8人は収支等を詳細に説明した結果、「自力経営」に意向を転換したため規定に基づき経緯を整理・保存して町の事務を終了しました。

 一方、令和5年度から課内に『農林業なんでも相談』窓口を開設、森林の寄附や売買等に関して4人から相談があり、関係者と調整して事業体や隣接地所有者を紹介し、既に譲渡を終えています。

森林環境譲与税による森林整備等への支援

 再造林率の低下が課題になる中、町では譲与税(令和4年度譲与額50,444千円、以降、年度記載のない額は4年度決算額)で森林の整備を支援しています。

 令和3年度から国の森林整備事業(最大、国:51%、県:17%補助)により実施される除間伐、下刈り、防護柵設置に対して町が17%の上乗せ補助(うち譲与税11,859千円)を行うほか、町単独の間伐、高性能林業機械のリース補助やシカ捕獲事業等を実施しています。

 なお、造林事業の上乗せ補助については企業版ふるさと納税(6,807千円)を活用し、他の施業と同じく17%の上乗せ補助を行っています。

 一方、再造林に必要な苗木については、町内の1事業体がスギコンテナ苗生産を行っているほか、林業研究グループが平成29年度に「少花粉スギ母樹園(約100本)」を整備し、生産技術の研鑽を図ってきました。

 このような中、令和4年度に県が「成長に優れたコンテナ苗供給体制整備事業(1~5万本規模、50%補助)」を創設、また、5年5月に今後10年間で花粉発生源の人工林を2割減少させることとした新たな国の花粉症対策の方針が示されました。

 これを受け、町では令和5年度に県の補助を2/3までかさ上げする事業(全額譲与税)を興し、5年度に1件、6年度には4件の方が生産を開始し、苗木の地産地消を目指す取組を始めました。

重要インフラ施設等の維持管理

林道法面樹木等の伐採

 五ヶ瀬川に沿って本町を横断する国道218号(緊急輸送道路)の次に重要な施設として二車線の森林基幹道宇目・須木線(林道)が町役場、病院、警察駐在、小中学校等の主要公共施設と集落をつないでいます。

 しかしながら林道の供用開始から40年近くが経過して法面の樹木が大径化し、主幹倒伏や枝条による側溝閉塞とともに併走する電気・電話・光ケーブル等の重要インフラに影響を及ぼす事態が度々生じていました。

 このため、令和3年度から沿線の樹木の伐採を始め、3年間の累計で1,930m(11,249千円、全額譲与税)の整備を終え、大規模災害時の被害軽減を図っています。

 また、町内林道49路線のうち、18路線、約55kmの区間が沿線住民298戸の生活道(ライフライン)として利用されていますが、法面風化、凍上や獣害等に起因する小落石、側溝埋塞、通学路の防草対策等に悩まされてきました。

簡易組立式土留工(HMブロック)

 具体的には、路面上に支障となる小落石や枝条等が確認された場合、大雨・夜間・緊急時等にかかわらず利用者(女性や高齢者でさえも)が車外に出て時には素手で取り除く必要があり、住民生活の妨げの一つになっていました。

 このため、町が安価で容易に設置できる組立式土留工(HMブロック)を提案・製作し、令和4年度から2年間累計で6路線、6カ所、201m(4,216千円、全額譲与税)を「林道の維持管理協定を締結した事業体」に委託して設置しています。

その他担い手対策・住民生活に密接する取組

左:林業担い手創出住宅(外観) 右:林業担い手創出住宅(内観)

 町では担い手の減少が常態化する中、就労条件(社会保険料等助成)、担い手創出(新規雇用者に3年間定額助成)、育英資金貸付(林業大学校受講生貸付金)等を譲与税を財源に実施しています。加えて、令和4年度には、新規就労者等が町内の住宅事情から町外からの通勤や就労断念を余儀なくされているため、林業担い手創出住宅1棟2戸(39,700千円、全額譲与税)を県産材28.7m²を使用して新築しました。

ジェットシューターの貸与

 また、林福連携の取組として、公共事業(前述の林道法面の立木伐採等)で発生し、本来は有償で廃棄物処理する支障木の一部を就労支援社会福祉施設に搬入、町が購入した薪割機等(1,203千円、全額譲与税)を使用して、福祉施設が薪を生産、販売を開始し、ふるさと納税の返礼品としても生産しています。

 令和5年度には、約20年前に整備されたジェットシューター(林野火災消火用背負式散水機)に長年の使用や経年劣化で部品の欠損、水漏れ等の不具合があったため、50基(1,595千円、全額譲与税)を購入し、消防始式において町消防団に貸与しました。

林業の活性化に向けた取組

 本町内の林業事業体(8事業体)と県出先機関や森林管理署等の関係団体で構成される「日之影町林業振興協議会」を平成30年に設立しました。

 林業担い手の確保・育成、循環型林業の構築と林業の持続的発展を図るため、林業事業体、関係機関が一体となって協議し、林業に関する情報交換や林業技術向上のための研修等のほか譲与税の使途等についても意見交換を行っています。

 これまでの研修では、県内にある林業技術センターや林業大学校の視察、安全に配慮した伐倒作業研修、UAV(ドローン)による森林資源調査の技術紹介、コンテナ苗生産の視察等を行いました。

 なお、本活動においても譲与税を活用しています。

当面の課題と今後の展望

 森林経営管理制度においては、無作為の意向調査で「市町村に委ねる」と回答があった場合、場所や権利制限等にかかわらず「市町村森林経営管理事業等を行うか・否か」の判断を迫られるため、本町は「経営管理を集積することが必要かつ適当であると考えられる」森林に限って意向調査を実施しています。

 しかし、「経営管理実施権の設定に至るまでの森林(車道から遠く離れ、不採算が確実な森林)」が半数を占め、「町に経営管理を集積するか、譲与税で複層林化を進めるか、森林所有者や納税者等の理解が得られるか」等の判断に迷い、対応方法を模索しています。

 このほか、譲与税については既存の補助事業では対応できない、自治体の特性に応じた担い手対策や住民生活に密着する取組を講じることができるためその重要性を強く認識しています。一方、林業の担い手や技術者が求められる中、軽労化・効率化を図るためのさまざまな技術や機器が次々に開発され、その導入は不可避の状況であり、導入時期について検討を重ねていきます。

 おわりに、今後、林業を取り巻くさまざまな課題の解決に対し、譲与税を含む森林経営管理制度事業が本町の林業を支える施策の後押しとなるよう有効活用に向けた検討をさらに進めて行きたいと思います。


日之影町役場
農林振興課