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茨城県東海村/東海村が仕掛けるデジタルデバイド対策―「とうかい“まるっと”スマホ大作戦」の展開―

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年3月20日更新

スマホをまだ持っていない方を対象に開催したスマホ体験会の様子

▲スマホをまだ持っていない方を対象に開催したスマホ体験会の様子


茨城県東海村

3233号(2023年3月20日)茨城県東海村 総合戦略部 地域戦略課デジタル戦略担当

東海村の基礎データ
※令和4年12月現在(住民基本台帳)
人口 38、413人
うち高齢者9、619人
(前期高齢者4、112人、後期高齢者5、507人)
高齢化率 約25・04%

ポイント


・「デジタル対応社会の実現」を図るため、スマホを所有する高齢者の増加とそのスキルの向上が不可欠。販売店舗と連携したスマホ講座を開催するなど、デジタルデバイド対策に取り組む。
・「スマホサポーター養成講座」を住民や役場職員向けに開催。受講者はスマホ講座や相談会などの場で活躍している。
・基礎自治体である市区町村は、高齢者に寄り添い、地に足を着けた地道な取組こそが最も重要。

1 高齢者を取り残さない「とうかい“まるごと”デジタル化構想」に基づくデジタルデバイド対策

2020年3月、東海村は「未来を担う人づくり」「魅力あるまちづくり」「安心して暮らしつづけることができるまちづくり」を柱とした東海村第6次総合計画を策定しました。そして、総合計画の実現に向けた基本的な姿勢の1つに、時代の変化に対応した「新しい役場への転換」を掲げ、職員の意識変革や組織変革に取り組み、行政力の底上げを図ることとしました。

私たちは、「新しい役場への転換」を「新しい役場への変革(トランスフォーメーション)」と捉え直し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通してその具現化に取り組むべく、2020年11月、「とうかい“まるごと”デジタル化構想(通称『まるデジ構想』)」【図1】を策定しました。

図1 とうかい“まるごと”デジタル化構想の概要(2020年11月)

▲図1 とうかい“まるごと”デジタル化構想の概要(2020年11月)

 

まるデジ構想は、行政手続きのデジタル化に取り組む「スマートサービスの推進」、ICTを活用した職員の働き方改革に取り組む「スマートワークの推進」、そして住民のデジタル対応支援に取り組む「デジタル対応社会の実現」の3つの柱で構成されています。

特に、「デジタル対応社会の実現」は重要であると考えています。仮に「スマートサービスの推進」が図られたとしても、サービスを利用する高齢者をはじめとした住民の方々がデジタル化に対応できず、サービスを利用できない状況が生まれては意味がありません。2021年に行った高齢者向けの調査においては、前期高齢者の66%、後期高齢者の43%がスマートフォン(以下「スマホ」と略称)を所有しているものの、前期高齢者の33%、後期高齢者の45%がスマホを活用していないことが明らかになりました。このような結果からも、「デジタル対応社会の実現」を図るためには、特に高齢者のデジタルデバイド対策に取り組む必要があり、スマホを所有する高齢者の増加とそのスキルの向上を図ることが喫緊の課題であると考えました。

2 まずはスマホを所有してもらうことから「シニア世代スマホデビュー応援事業」

そこで、2021年10月から2022年2月まで取り組んだのは、スマホを持っていない高齢者を対象とした「シニア世代スマホデビュー応援事業」です。この事業は、3Gフィーチャーフォン(通称「ガラケー」)を使用している高齢者がスマホを購入した際、その購入費用を最大2万円まで助成する事業です。しかし、単にスマホの購入費用の一部を助成するだけではスキル向上までは期待できません。そこで、助成を受けるためには、スマホの購入店舗でスマホ講座を受講し、講座の最終日、自らのスマホから「いばらき電子申請・届出サービス」にアクセスし、オンラインで助成金の交付申請を行う必要があるという「仕掛け」を設け、オンライン申請を体験してもらうこととしました。このスマホ講座の実施に当たっては、助成金のオンライン申請については職員が作成した申請手続きの説明資料を店舗に提供するなど、店舗との事前打合せを幾度も重ねました。また、高齢者を対象とした「スマホ体験会」を合計21回開催し、ガラケーからスマホへの機種変換を促しながら、事業の利用者の掘り起こしにも取り組みました。

なお、すでにスマホを所有している高齢者に対しては、総務省の「デジタル活用支援推進事業」を活用し、民間事業者の協力を得て、地域の集会所などにおけるスマホ講座を開催し、スキル向上に取り組みました。また、スマホの操作に関する“ちょっとした”相談に応じるため、村社会福祉協議会と連携し、「ぷらっとスマホ広場」と題したスマホ相談会も開催しました。毎回、スタッフで対応しきれないほど多くの住民が相談に訪れ、改めて高齢者に対するスマホ活用支援の必要性を実感しました。

5ヶ月間で合計21回のスマホ体験会を開催し、ガラケーからの転換を促した

▲5ヶ月間で合計21回のスマホ体験会を開催し、ガラケーからの転換を促した

 

「スマホ相談窓口」や「スマホ相談会」は民間事業者や社会福祉協議会とも連携し、村内の各所で開催を重ねている

「スマホ相談窓口」や「スマホ相談会」は民間事業者や社会福祉協議会とも連携し、村内の各所で開催を重ねている

スマフォの相談窓口チラシ

▲「スマホ相談窓口」や「スマホ相談会」は民間事業者や社会福祉協議会とも連携し、村内の各所で開催を重ねている

 

3 高齢者のスマホスキルのさらなる向上へ「とうかい“まるっと”スマホ大作戦」の展開

そして、今年度は、スマホ講座を拡充するとともに、スマホの操作に関する“ちょっとした”相談に定期的に応じる機会として「スマホ相談窓口」を役場庁舎に試験的に設置しました。村内の携帯ショップの協力を受け、9月から12月までの毎週木曜日、午前10時からの2時間程度の開設ではありましたが、毎回行列ができるほどの盛況ぶりであり、スマホの基本操作はもとより、LINEの使い方なども含め、100件以上の相談を受けました。現在は、地域戦略課の職員、庁内の若手職員、村内の携帯ショップの従業員及び地域のボランティアの3名から5名程度の体制で取り組んでおり、今後、村内の公共施設への展開も検討しているところです。

スマホサポーター養成講座を受講した村職員は「スマホの相談窓口」で活躍中

▲スマホサポーター養成講座を受講した村職員は「スマホの相談窓口」で活躍中

図2 とうかい“まるっと”スマホ大作戦の概要(2022年7月)

▲スマホサポーター養成講座を受講した村職員は「スマホの相談窓口」で活躍中

また、住民同士でスマホを学び合う、いわば「共助」の輪を広げるため、携帯ショップや村社会福祉協議会とも連携しながら「スマホサポーター養成講座」の開催に取り組んでいます。これまでに15名程度の住民が受講し、受講後、前述の「スマホ相談窓口」にボランティアとしてご協力いただいた方もいました。スマホサポーター養成講座を受講した方が、地域において主体的に共助の輪を広げていただくことを期待し、引き続き取り組んでいく予定です。なお、「スマホサポーター養成講座」は職員向けにも開催しており、おおむね入庁10年未満の職員が講座を受講し、「スマホ相談窓口」において住民からの相談に対応しました。

一方で、まだまだ「スマホを利用することのメリットを感じない」という方も多くいるのも事実です。村では、スマホを利用するメリットをより多くの方に実感していただくため、東海村YouTube公式チャンネルでの動画配信のほか、東海村公式LINEでのリアルタイムのプッシュ通知などによる情報発信の強化、オンラインで完結できる行政手続きの整備も同時に進めているところです。

村では、“まるデジ構想”に掲げるデジタル社会実現の方策を、「スマホを所有する高齢者を増やす」取組、「スマホの学びの場を創出する」取組、「スマホの学び合いの仕組みをつくる」取組、そして「デジタル化のメリットが実感できる取組」を柱とした、高齢者に寄り添ったデジタルデバイド対策パッケージ「とうかい“まるっと”スマホ大作戦」【図2】として展開しています。

4 共創・協創で取り組むデジタルデバイド対策

村では高齢者のデジタルデバイド 対策に積極的に取り組んでいますが、現時点においては、その効果は測定できていません。しかし、スマホ教室やスマホ相談窓口に来た住民からは「普段スマホについて相談できる人がいなかったので助かる」、「この取組をずっと続けていってほしい」といった言葉を頂戴していることから、少しずつ効果は出てきたものと感じています。

最後に、デジタルデバイド対策は、自治体DXを所管する課だけでなく、全庁を挙げて、かつ、民間事業者や公共団体など多様な主体との共創・協創により取り組むことが重要なポイントであると考えています。また、先進的な取組を実施することも良いのですが、デジタル対応社会の実現のためには、基礎自治体である市区町村は、高齢者に寄り添った、地に足を着けた地道な取組こそが最も重要だと私たちは考えています。

村では、高齢者をはじめとした多くの住民がスマホ等のデジタル機器を使いこなし、デジタル社会のメリットを実感できる社会を目指し、「とうかい“まるっと”スマホ大作戦」を着実に進めていきます。

コミュニティセンターで実施した「スマホ教室」の様子

▲コミュニティセンターで実施した「スマホ教室」の様子

 

コミュニティセンターで実施した「スマホ教室」の様子

▲自治体DXを推進する地域戦略課。フリーアドレスの導入にも挑戦し、職員同士のコミュニケーションが活性化するなどの効果が表れ始めている


茨城県東海村 総合戦略部
 地域戦略課デジタル戦略担当