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秋田県羽後町/住民目線のローカル情報発信「UGONEWS」

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年10月31日

にしもない盆踊り

▲にしもない盆踊り​​


秋田県羽後町

3219号(2022年10月31日)羽後町長 安藤 豊

 


羽後町の概要

 羽後町は、秋田県南部に位置する県内屈指の豪雪地帯であり、総面積230・78㎢、東西約21㎞、南北約20㎞の略正方形を成しています。町面積の70・7%を山林原野が占め、17・4%を農用地が占めています。

 地形は、雄物川水系に属する東部地域と、子吉川水系に属する西部地域に大きく分けられ、東部は標高60~100mの典型的な扇状地で、水稲を主に栽培する豊かな穀倉地帯であり、西部は標高200~350mの出羽丘陵八塩山塊に属する山間・高原地帯となっています。

 人口は、昭和30年に町が誕生した当時は28、670人でしたが、年々減少の一途をたどっており、令和2年の国勢調査では、13、825人と、半分以下にまで減少しています。平成27年には「羽後町版総合戦略」を策定し、人口減少対策としてさまざまな施策を展開してきていますが、歯止めは掛かっていないのが現状です。

 主要産業は農業で、稲作を中心として、花き、野菜、畜産などの複合化に取り組んでいます。特に「あきたこまち」を中心とした米づくりやスイカの栽培が盛んであり、また、地元産米の稲わらを活用して育てた黒毛和牛「羽後牛」は、希少なブランド牛です。しかしながら、担い手の高齢化や後継者の確保といった課題も抱えています。

西馬音内盆踊り

 毎年8月16日から18日の3日間、国の重要無形民俗文化財に指定されている「西馬音内盆踊り」が開催されます。これは、岐阜県の郡上踊り、徳島県の阿波踊りとともに、「日本三大盆踊り」とも呼ばれています。

西馬音内盆踊り(端縫い衣装)

西馬音内盆踊り(端縫い衣装)

 その起源は、今から700年以上前に源親という修行僧が広めたとされる「豊作祈願の踊り」と、約400年前に山形城主最上氏との戦いで滅んだ西馬音内城主小野寺一族を偲び、家臣たちが踊った「盆供養の踊り」の2つが融合したものではないかと言い伝えられています。

 踊りには、優雅で静かな抑揚のある踊りが特徴である「音頭」と、「音頭」に比べて踊りのテンポが速いのが特徴である「がんけ」の2つの種類があります。

 踊る際には、図柄や配色にこだわりながら、数種類の絹布を左右対称に縫い合わせた「端縫い衣装」や、秋田県南部の伝統的な染技法を用いて手絞りで作られた「藍染め浴衣」を身にまとうのが特徴です。特に「端縫い衣装」は、代々伝わる大切な着物の布地が使われており、衣装を通して先祖を肌で感じながら一体となって踊ります。

 さらに踊りの衣装に欠かせないもう1つの特徴が「編み笠」と「彦三頭巾」の被り物です。「編み笠」は、一般的な半月型より前後の端が大きく反った形をしているのが特徴で、顔が見えないように深くかぶった襟元からのぞく首すじが、踊りを艶やかに引き立たせます。一方「彦三頭巾」は、目元に穴の開いた袋状の覆面を頭から被って鉢巻をしてとめるのが特徴で、亡者踊りとも称される特異な雰囲気を醸し出します。

 にぎやかで勇ましいお囃子に対し、こうした衣装を身にまとった踊り手たちが、町の中心通りで焚かれるかがり火を囲み、流れるようなゆるやかで美しい踊りの対照が、「不調和の調和」といわれる絶妙の美を創り出しており、約10万人もの観光客が訪れます。新型コロナウイルス感染症の影響により、一昨年は中止、昨年は1日だけの無観客開催となりましたが、今年は3年ぶりに有観客で開催されました。

西馬音内盆踊り(彦三頭巾)

西馬音内盆踊り(彦三頭巾)

道の駅うご「端縫いの郷」

 平成28年、町内に秋田県内で31番目となる道の駅うご「端縫いの郷」がオープンしました。

 当施設は、通行量の多い主要国道に面しているわけではなく、計画段階から集客に苦戦して赤字経営になるのではと多くの心配の声がありましたが、オープン当初より連日県内外から多くの来場者が訪れています。

 人気商品の1つとしては、当町名物の「西馬音内そば」があります。特徴としては、つなぎに布海苔を使ったコシの強い麺が主流で、冬でも冷たいつゆで食べる「冷やがけ」が定番となっています。また、令和3年にはそば打ち体験場もオープンし、職人の手ほどきを受けながら、自分で打った西馬音内そばを食べることもできます。また、地元産の牛乳を使用したジェラートの提供や地元の農家が作った新鮮な農産物の直売など、多くの魅力づくりを行った結果、令和3年12月には来場者が400万人を突破するなど、町の観光拠点の中核を担っています。

羽後町産生乳100%使用のジェラート

羽後町産生乳100%使用のジェラート

道の駅うご外観。盆踊りの衣装がモチーフ

道の駅うご外観。盆踊りの衣装がモチーフ

名物「西馬音内そば」

名物「西馬音内そば」

感じた町外とのギャップ

 羽後町には、町の情報を得る手段として、月1回発行している町の広報紙「広報うご」や町のホームページ以外に、「UGONEWS(通称:ウゴニュー)」という町のローカル情報を中心に収集し、わかりやすく発信することをコンセプトとしたニュースサイトがあります。サイトの運営については、現在、町の地方創生施策の実施主体として令和元年に立ち上げられた「NPO法人みらいの学校」に委託をしています。最近では、コロナ禍において、深刻な影響を受けている地元事業者を応援するべく、個別の飲食店情報や事業者サービスなどを発信し、地域に密着した情報発信部分を担っています。

町民のみぞ知るローカルニュースサイト「ウゴニュー」

町民のみぞ知るローカルニュースサイト「ウゴニュー」

ウゴニューHP画面

ウゴニューHP画面

 このウゴニューを運営するきっかけとなったのは、地域おこし協力隊の登用です。当町では平成29年に地域おこし協力隊を初めて登用後、これまでに15名の協力隊員が活動をしています。その方々が口を揃えて言うのが、「地域の魅力が伝わっていない。町に来るまでわからなかった」という主旨の言葉でした。いくら魅力を伝えているつもりでも伝わっておらず、そもそも魅力とは何か?と考えるきっかけになったことは、地域おこし協力隊を登用した成果の1つと言えます。

 「ウチの町には何もない」よく耳にするセリフかもしれませんが、当町も例外ではなく、時折、耳にします。その背景には「他の人に見せる程のものがない」、「当たり前すぎて、特別感がない」との思いがあると感じています。「〇〇があるじゃないですか?」と言っても、「〇〇はあるけど、それだけでしょ?」という悲観的な回答をする方もいます。「灯台下暗し」という言葉があるように、距離的にも物理的にも“近く”にあるものは見えないようです。

 そこで、ウゴニューでは町の人たちにも“気づいてもらえる”ことで、町の当たり前を魅力として認識していただき、一人ひとりが町を楽しめるような発信をしたい。そうすることで、町の人たちが誇りをもって羽後町の良いところを言えるようになればと思っています。

実際の運営と苦心

 ウゴニューは、平成31年2月に当時の地域おこし協力隊員や現在の「NPO法人みらいの学校」の代表理事の方が中心となってホームページを開設し、これまでに250件を超える記事を発信しています。

 しかしながら、その運営は当初の計画・予定していたものとは大きく変わっています。特にうまくいかなかったのが、まち記者による情報発信です。町民の方が町のお気に入りスポットや何気ない普段の風景を写真と文章でフォームに投稿してもらい、ウゴニュー編集担当が校正等を行って「みんなの投稿」コーナーに掲載する、ということをウゴニューの軸の1つに据えていました。

まち記者講座①

まち記者講座①

まち記者講座の様子(お店取材)

まち記者講座の様子(お店取材)

まち記者講座②

まち記者講座②

 まち記者を増やすため、メディア関係者やカメラマンを講師として招へいし、まち記者講座を数回行いました。小学生や長期休暇期間の大学生なども巻き込んで参加してもらいましたが、まち記者として記事を発信した方は、残念ながらほとんどいませんでした。イベントや広報はしていたものの、フォローまでしっかり行う“マメさ”が足りていなかったのではないかと反省しています。

必要とされている情報をしっかりと

 このままただ単に情報を掲載し、継続すること自体が目的となってしまってはいけないとの思いから、きちんと振り返りを行うようにしたところ、記事の閲覧数が伸びる傾向がつかめてきました。その1つは新たな施設やお店の情報です。最近ではSNSだけ立ち上げる事業者の方が多いようですが、どうしてもSNSだけでは、建物の外見や運営している方々、場所や営業時間など、知りたい情報を探すのはなかなか大変です。

ウゴニューHP画面(新着&ランキング)

ウゴニューHP画面(新着&ランキング)

 そこでウゴニューでは、取材を通じて、ホームページの代わりになるようなお店の情報や施設の使い方・場所等を記事にしております。中には、2年前のお店の記事で、今でもランキングの上位に上がるものもあります。

 また、とても大きな反響があったのは、コロナ禍における飲食店のテイクアウト・デリバリー情報や町出身で大きなチャレンジをする方の応援方法です。この2つはタイムリー、かつインパクトがあったことで閲覧数が伸びたものと思われます。このように、ウゴニュー読者は何を見たいのか、どの方向にアンテナを伸ばしたらよいのかといったノウハウを蓄積できたことはとても大きいと感じています。

ウゴニューの今後

 この地域でも無理なく続けられるためには、町民と一体となった情報発信が不可欠です。今年度は委託先である「NPO法人みらいの学校」と羽後町商工会青年部・女性部とが連携し、町民が主体となった町の情報発信につながる取組を実施しており、地域おこし協力隊の皆さんも率先して投稿しています。これまで足りていなかったフォローまでしっかり行う“マメさ”を十分に取りながら、まち記者育成をしていきたいと思っています。

 自分たちが楽しむと誰かが楽しくなり、誰かが楽しむと他の誰かが楽しくなる…ウゴニューによる楽しさの連鎖をこれからも続けていきたいと思います。

最後に

 当町は平成の大合併には参加せず、地域住民の顔が見える単独立町を宣言し、現在に至っています。新型コロナウイルス感染症や人口減少など、さまざまな課題を抱えておりますが、令和2年に策定した第6次羽後町総合発展計画に定める町の将来像である「個性豊かに、未来へつながるまちづくり」の実現に向け、今後もこうした町民と一体となった取組を積極的に展開していきたいと思います。

町の眺め(みはらし荘より)A

町の眺め(みはらし荘より)A

羽後町長 安藤 豊