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新しい富の創造 ―地域の魅力化に向けた2つの取組み―

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年6月27日

新しい富の創造 ―地域の魅力化に向けた2つの取組み

▲新富町の農産物​​​


新富町

3204号(2022年6月27日)新富町役場 総合政策課 課長 有馬義人


1.新富町の概要

新富町は県都宮崎市及び西都市・高鍋町に隣接し、海・河・台地に囲まれた自然豊かな町です。1日の日照時間は長く、年間を通じて快晴日数も多く、良質な水も豊富にあります。人口は令和4年4月1日現在で16309人を数え、県内でも生産人口の割合は市町村の中で上位にあります。

交通体系は、本町から30分圏内に2,500m滑走路の宮崎空港、5万トン級国際観光船が停泊する宮崎港があり、東九州自動車道の西都及び高鍋インターチェンジまで10分とアクセスが便利です。さらに主要幹線道路の国道10号新富バイパスも4車線化され、道路をはじめ港湾・空港など、陸海空の交通手段が総合的に整った物流機能の備わった町といえます。 町の主要産業は農業で、農地面積は約2210ヘクタールあり、水田と畑がほぼ半分ずつです。水田地帯では「コシヒカリ」を主体とした早期水稲と、ピーマン・胡瓜・トマト等の施設野菜、畑地帯では茶・甘藷等の栽培の他、養鶏・肉用牛・酪農など畜産が盛んです。

以上のような比較的恵まれた立地と環境にありながらも、宮崎県内では「通過する町」といわれ、特徴的な観光地などの資源に乏しく、全国的な少子高齢化による産業の衰退は本町も同様の課題です。住んでよかったといわれるような、地域としての魅力をどのように向上させるかが大きな課題といえます。そのような状況のなか、町では2つの大きな事業を動かすことになります。

1つは旧観光協会を解散し、ソーシャルビジネスに特化した一般財団法人を設立し、持続可能な地域づくりを行うこと。
2つ目は、自衛隊基地周辺にあって過度な騒音が発生することにより土地利用が困難となった地域を、集客による活性化エリアとするハード事業を進めることです。

町は、この2つの事業を展開することによって、「ひと」・「もの」の集積化を図り、関係人口・交流人口の拡大に向けて大きく舵をきりました。平成29年のことです。

 

2.財団法人の設立と展開


一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(以降「こゆ財団」という。)は、平成29年3月に新富町が出資して設立した団体です。町は観光協会を役場内で運営していましたが、様々な社会課題を、行政だけで解決することが難しくなっており、これらの課題を克服するために同協会を発展的に解散し、ソーシャルビジネスを手がけることに特化した同法人を設立するに至りました。

その目標は、地域に活力を生む手段として、地域経済を成長させること。そして生産活動の拡大により雇用を創出することです。さらには、魅力ある仕事や地域を創出することによって、町に帰ってくる若者や町に移り住む人々の増加を図ることとし、現在も令和2年度に始まった『第2期新富町まち・ひと・しごと総合戦略』に基づき、町とともに発展することを目指しています。

一般財団法人こゆ地域づくり推進機構のスタッフ

▲一般財団法人こゆ地域づくり推進機構のスタッフ​​​

3.民間企業とのつながりを作るための取組


まず、こゆ財団が取り組んだのは、行政だけではふるさと納税事業が発展しないという課題、そして地域の特産品の開発が進まないという課題でした。ふるさと納税については、町からふるさと納税事務を受託し、特産品のブランディングによって返礼品として際立つ特産品を創るということに注力。数年前から町として推進していた国内でも3%しかない国産ライチを、一粒1000円の「新富ライチ」としてブランディングして商品化に成功しました。また、生鮮野菜を中心に厳選して集めた農産物を「こゆ野菜セット」として定期販売するなどして、平成29年度から令和2年度までに町への寄附を50億以上集めることができました。これらふるさと納税事務を受託した手数料として町からの補助金を受け、その財源をもとに次のステップに進むことができました。

新富ライチ

新富ライチ​

4.財団法人による「地域産品のブランディング」


次に取り組んだことは、町内に空き家・空き店舗が目立ち始め、産業の担い手が不足しているという課題です。こゆ財団では、これらの空き店舗や空き家の一部を再生した有効活用や新規事業創出を本格化させ、チャレンジフィールド(こゆ財団オフィス)、こゆ野菜カフェ、民泊「茶心」、新富アグリバレー、宿泊交流拠点施設「追分分校」を開業してきました。このうち、新富アグリバレーは閉店したAコープ新富店の建物を改修したワーキングスペースで、新たに誕生したベンチャー企業「株式会社AGURIST」がスマート農業に挑戦し、加えて全国的に着ぐるみ制作を手掛ける「株式会社KIGURUMI.BIZ」が宮崎市から転居して来られました。両社だけで、30名を超える従業員の方々が通勤され、それぞれ町やこゆ財団との協業も進んでいます。

宿泊交流拠点施設は、平成26年度に廃校となった富田小学校追分分校の校舎を、農水省の農山漁村振興交付金と町の補助を活用して改修したものです。のちに紹介するサッカーを中心とした活性化事業と連携し、町内外から来られる合宿やテレワークに活用していただけるよう準備をすすめています。

改修前の旧富田小学校追分分校

改修前の旧富田小学校追分分校​

5.財団法人の活動を契機した産学官連携の取組


以上のような活動を進めるとともに、町への興味関心を高める取り組みとして、首都圏で行うローカルベンチャースクール(起業家育成講座)や、宮崎県域の起業家を目指す方を対象に「こゆ未来塾」などを開催してきました。それぞれの講座では、起業に役立つ情報や経験者との交流などを企画し、必ず本町を舞台とした資源のブランディングや、町内事業者との交流を設定しています。この講座運営を通じて、結果的に地域資源の掘り起こしや、事業者と事業者をつなぐことによる新たなビジネスが生まれる環境をつくることができました。

現在はそのような環境を活用し、中高生を対象に、探求学習としてのフィールドとしての活用を組み入れた新たな修学旅行パッケージを開発し、多くの団体に来町していただいています。また、これら社会課題を解決しようという探求活動は、多くの企業の共感を呼び、令和元年以降、ユニリーバ・ジャパンホールディングス株式会社や株式会社エネオスホールディングス、三洋化成工業株式会社など、多くの企業と連携協定を結び、それぞれに協業の取り組みを進めるにいたっています。

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企業のみなさんとの連携協定

6.まちづくり事業(ハード事業)の展開


一方で、2つの目の取組として、集客の要となるハード整備を進めています。「三納代北地区」とよぶこの地域は、自衛隊新田原基地の滑走路の延長線直下にあり、航空機の離発着の際の騒音が大きいことで知られ、工場の撤退などが相次ぎ土地のまとまった利活用の難しい場所になっていました。町はこの地域を遊休地化させず、集客エリアとして利活用するため、サッカー場や農産物直売施設を設置する構想を掲げ、平成28年度から事業計画を検討していました。そのような状況のなか、宮崎県でJリーグ参入を目指す「テゲバジャーロ宮崎」がホームスタジアムの建設地を求めており、同チームから町に相談がありました。

町では、三納代北地区のうち南半分の一部を、同チームが利用できるスタジアム用地として土地を確保。チームの親会社がこの土地に施設を建設後、寄附することにより公共施設とし、チームの関係会社を町が指定管理者に指定し、管理を委任する方法をとることとしました。その後、チームは令和元年にJ3に参入することが決定し、施設も完成。施設は愛称「ユニリーバスタジアム新富」として令和2年3月に開業。今季2年目のシーズンが始まっています。またスタジアムに隣接し、町がフットボールセンターを建設しています。今後は宮崎県サッカー協会と連携し、宮崎県におけるサッカーの中心地として、サッカーを「観る」のも「競技する」のも新富町で、を目標に集客の要にしようとしています。

加えて、三納代北地区には、農畜産物直売所と農業研究農園を設置しようとしています。令和2年には児湯農業協同組合と連携して農業公社を設立し、同公社が直売所と農園を管理し、企業の農業参入や新たな特産品開発を進めようとしています。

テゲバジャーロ宮崎  ユニリーバスタジアム新富  建設中のフットボールセンターのイメージ

テゲバジャーロ宮崎​ ​       ▲ユニリーバスタジアム新富​ ​     ▲建設中のフットボールセンターのイメージ​ ​​

7.今後の課題と展望


令和2年度から始まった第2期新富町まち・ひと・しごと総合戦略では、国の施策に沿って、関係人口・交流人口を増やす取り組みを掲げてきました。しかしながら全国的に新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、方針転換を余儀なくされ、特に対面の交流となる宿泊やイベントの開催はかなり抑制されたことは間違いありません。しかしながら、ソフト面にあっては、もともとSNS等のソーシャルメディアを多用してこゆ財団の取り組みにあっては、オンライン講座に切り替えるなどして、より全国的に情報の拡散と人のつながりに結び付いた面もありました。

今後は、少しづつ準備してきたこの環境を磨き上げ、さらなる関係人口・交流人口の拡大に向け、次のステージに上がっていく必要があると考えています。より、方針転換を余儀なくされ、特に対面の交流となる宿泊やイベントの開催はかなり抑制されたことは間違いありません。しかしながら、ソフト面にあっては、もともとSNS等のソーシャルメディアを多用してこゆ財団の取り組みにあっては、オンライン講座に切り替えるなどして、より全国的に情報の拡散と人のつながりに結び付いた面もありました。

今後は、少しづつ準備してきたこの環境を磨き上げ、さらなる関係人口・交流人口の拡大に向け、次のステージに上がっていく必要があると考えています。