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佐賀県有田町/ひとがつながり ひとがつどう 世界に誇れるまち 有田 「有田の町が教室になる」  

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年4月4日

全景

▲コロナ禍前、多くの人でにぎわう「有田陶器市」​​


佐賀県有田町

3195号(2022年4月4日)有田町長 松尾 佳昭


有田町の概要(紹介)

 有田町は、佐賀県の西部に位置し、伊万里市、武雄市、長崎県佐世保市、波佐見町に隣接する佐賀県の西の玄関口です。

 有田町の人口は19,010人、世帯数は6,981世帯(令和2年国勢調査)、面積は65.85㎢で、県内の主要幹線である国道35号が東西に横断し、福岡都市圏と結ぶ国道202号が南北に縦断しているほか、北西部に国道498号が通っています。またJR佐世保線が東西に横断し、伊万里市と有田町を結ぶ松浦鉄道が南北に通っています。

有田焼

▲400年以上の歴史をもつ有田焼

有田千軒

▲国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている「有田内山」​​

 古くから陶磁器の町として有名な有田町は、1616年に朝鮮人陶工李参平らによって泉山に陶石が発見され、日本で初めて磁器が焼かれました。以来、佐賀藩の元で磁器生産が本格化し、谷あいに「有田千軒」と呼ばれる町並みが形成され、繁栄を極めました。 この町並みは、現在も歴史的価値が高い建物が数多く残っており、1991年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。

 一方で、有田町は「棚田」という特徴的な景観を持つ稲作地であり、県下有数の畜産地でもあります。有田焼の「器」と農業の「食」両方の魅力を堪能できる有田町。伝統と歴史、豊かな自然を活かした町づくりに取り組んでいます。

​​​ 泉山磁石場

▲日本磁器発祥の地のシンボル「泉山磁石場」​​​

棚田

▲日本の棚田百選に選定されている「岳の棚田」​​​

なぜ有田町でSTEAM教育なのか

 コロナ禍において日々行政運営にあたっています。そのような中、今までは常識とされたことが、ある日を境に非常識となりました。更に先が見えない、答えがわからない事が増大したことを痛感しました。今までの考え方、思考では及ばないのでは、と強く感じました。この状況をチャンスに変えるには、新しい教育手法、「STEAM(スティーム)教育」を取り入れることが必要だと考えました。Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(リベラルアーツまたは芸術)、Mathematics(数学)を統合する教育手法である、STEAM(スティーム)教育を推進し、次世代型人材育成を目指します。A(アート)の部分は既存の科目だけでなく、Athletic、Areaなど、有田町の多様な「A」と考えられます。

 今後は様々な分野においてデジタル化が進みます。課題解決の手法を自ら考え、導き出すことができる人材の育成も必要となります。有田町の持っている風土、ものづくりの遺伝子などを活かしたSTEAM教育を推進していきます。野山で自然を体験し、モノを作り、プログラミングで学び楽しみ、多様な体験などを実施していきます。STEAM教育を実践することで次世代に対応できる子育て・人材育成支援体制の確立を目指します。学校教育だけではなく、町全体が教室となる生涯学習を通して、町民一人ひとりが学ぶ楽しさを実感できる有田町を目指します。

有田町STEAM教育の今後

 有田町ではSTEAM教育推進において、国立大学法人佐賀大学と連携した取組を進めています。令和2年度には、佐賀大学有田キャンパスにて町内の中学生女子によるリケジョ(理系女子)体験講座を開催しました。ミョウバンからの結晶づくり(科学)と、植物を用いたリースづくり(芸術)を融合させた、科目横断的なSTEAM教育の実践講座となりました。

 また、有田町では数年前から町内の小学6年生を対象に「ルーツ」について学ぶ事業に取り組んできました。ルーツである自分のご先祖及び家族、地域などについて、約半年間をかけて研究し、本格的な発表をする事業です。先人たちが残してこられた数々の功績や多くの苦労話などを調べることで、有田町に育つことを誇りに思う子どもの育成を推進しています。当事業では児童自らがパソコンやプロジェクターを使用し、昔の映像や音楽等も活用して、本格的なプレゼンテーションに取り組んでいます。どのような手法を用いれば、自分の気持ちを、より多くの人に伝えられるかを学んでいます。まさに有田らしいSTEAM教育だと考えております。

リケジョ

▲佐賀大学と連携したリケジョ(理系女子)体験講座​​​​

有田みらいタウン

▲「有田みらいタウン」タウン長を任命​​​

 そのような中、自治体もあらゆる分野で、デジタル化の推進が求められています。有田町ではフューチャリストの小川和也さんと共に「有田みらいタウン」構想を発表しました。デジタルと並走して有田の文化や風土が共存する「デジタル化と心身がととのう」ことがコンセプトです。小川さんには有田みらいタウンの「タウン長」として取組全般に助言などをいただいています。今後、有田みらいタウン構想において、さまざまな取組を計画しています。柱の一つとしてSTEAM教育を推進し、次世代型人材育成を目指します。

 今年度、まずSTEAM教育を身近に感じてもらえるよう、プログラミング体験や動画作成体験のワークショップを開催します。STEAM教育に関する数多くの実績と国内有数のノウハウを有するSTEAM JAPANと連携し、専門講師による充実の指導体制のもと、クリエイターとしての活動を一日体験してもらいます。デジタル作品を完成させるドキドキ・ワクワクを、参加者に学んでいただく予定です。

 このワークショップにおいては、「スプリンギン」というプログラミングツールを使用します。文字を使うことなく、初めての方でも気軽にプログラミングできるため、今回は町内の小中学生を対象としています。

 このスプリンギンを開発された、株式会社しくみデザインと有田町が、令和4年2月3日に、「STEAM教育実践についての連携協定」を締結しました。今後町内の社会教育を中心に、スプリンギンを活用したSTEAM教育の実践に連携して取り組む予定です。

しくみデザイン

しくみデザイン協定式(オンラインにて)

 

「有田の町が教室になる」

 有田町には保育所・認定こども園をはじめとして、小学校、中学校、有田工業高校、そして佐賀大学有田キャンパスもあります。人口約2万人の町として非常に充実した子育て支援体制が整備されています。「アカデミックなまち」・「本物の芸術に触れるまち」として、まさに有田町全体が教室となり、子育て世代もさらに住みやすいまちづくりを目指します。

県外生徒受け入れによる地域活性化

 有田工業高校には有田町らしいデザイン科・セラミック科があり、電気科、機械科の4科があります。まさにSTEAM教育の要素を兼ね備えた高校です。令和4年度新規の取組として「地域みらい留学」を実施予定です。佐賀県外から親元を離れて入学される生徒の生活支援を、佐賀県と連携して実施します。有田工業高校には学生寮がなく、下宿先物件の確保や、部活動が終わった時間にも食事可能な環境が必要でしたが、町民皆さまのご協力により、高校生応援飲食店の募集など新入学生を迎える体制が整いました。県外から有田町に来られる、意欲的な学生ならではの画期的なアイデアなどを期待しております。今回の事業を機に、有田町全体のにぎわいづくり、学校の魅力づくり及び地域の活性化、関係人口や定住者の増加にもつなげていきます。

未来で輝く人材の育成

 有田みらいタウンを中心としたこれらの取組においてのデジタル化は、コミュニケーションを築き上げるための手法です。デジタル技術で都市との情報格差を解消し、ボーダレス化を目指します。伝統と文化、豊かな自然と人間らしい「あたたかさ」を大切にした、若い世代が誇りに思うまちづくりを実現します。このために有田町らしいSTEAM教育を展開していきます。ウィズコロナ、ポストコロナを見据えたSTEAM教育を推進します。正解のない時代に求められる「自分なりの答えを探る力」を、STEAM教育を通して学んでいただき、未来で輝く人材を、数多く送り出すことのできる有田町を実現します。本町の取組が全国の町村の参考事例として活用いただければ幸いです。