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神奈川県山北町/「みんなでつくる 魅力あふれる元気なまち やまきた」の実現に向けて

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年9月13日

山北のお峯入り

▲山北のお峯入り
共和地区に古くから伝わる民俗芸能。5年ごとに公演を開催。


神奈川県山北町

3173号(2021年9月13日)山北町長 湯川 裕司


山北町の概要

山北町は、東京から西へ約80㎞、神奈川県の西部に位置し、県内で唯一、静岡県と山梨県に隣接する県境の町です。総面積は224・61㎢、横浜市、相模原市に次いで県内で3番目の広さを有し、その約9割が丹沢大山国定公園や県立自然公園などを含む山岳地帯で、四季折々に表情を変える西丹沢のやまなみや、富士山と丹沢山地を源流とする酒匂川などの清流に囲まれた、豊かな自然に恵まれた町です。

当町の歴史は古く、南北朝時代が起源と伝えられる国指定重要無形民俗文化財「山北のお峯入り」や、県指定無形民俗文化財「世附の百万遍念仏」、「室生神社の流鏑馬」など、貴重な民俗芸能が伝承される豊かな歴史が育む文化の町でもあります。

町内には、信玄公の隠し湯と伝えられている「中川温泉」や、日本の滝百選「洒水の滝」、平安時代末期に築城された「河村城跡」などの観光資源を有するとともに、観光の中心である丹沢湖周辺では、「丹沢湖花火大会」をはじめ年間を通じてさまざまなイベントが開催され、首都圏の観光・レクリエーションの場として多くの観光客が訪れています。

また、雄大な山々と深い森から流れ出る豊かな水資源は、町が誇る財産で、丹沢湖は神奈川県民の水がめとして、県民生活を支えています。また、町域の約9割を占める森林資源を活かし地域振興を図るため、「森林セラピー基地」の認定を受け、当町の森林の持つ癒し効果を広くPRするために、定期的に森林セラピー体験ツアーを実施しています。

基幹産業である農業は、銘茶「足柄茶」をはじめとして、みかんやキウイフルーツなどが生産され、最近では遊休農地を活用したオリーブの栽培にも取り組んでいます。

現在、2019年度から2023年度を計画期間とする「山北町第5次総合計画後期基本計画」に基づき、まちづくりを進めています。この計画では、町の将来像を「みんなでつくる 魅力あふれる元気なまち やまきた」と定め、「町民力・地域力を発揮するプロジェクト」と「若者定住・子育て支援プロジェクト」を2つの重点プロジェクトとして、優先的に実施することとしています。今回はこの重点プロジェクトに関連する取組についてご紹介します。

丹沢湖

▲丹沢湖
昭和53年の三保ダム建設に伴い、出現した湖。近年では釣りやSUPなどのレジャーが盛り上がっている。

 

室生神社の流鏑馬

▲室生神社の流鏑馬
山北地区の室生神社では毎年11月3日に例大祭の神事として流鏑馬を行っている。

 

森林セラピー

▲森林セラピー
山北町では町域の9割を占める森林資源を活用して健康増進と疾病予防を目指して森林セラピー(森 林浴)事業を実施している。

 

自治会活動への支援

当町では、平成25年4月に制定した「山北町自治基本条例」に基づき、町民、町、議会がそれぞれ対等な立場で協働してまちづくりを進めています。この条例において、自治会は地域のコミュニティ組織として、まちづくりの中心的な役割を担うとされていることから、町では町内54の自治会に対して、防災資機材や活動拠点となる集会所の整備助成など、さまざまな支援を行っています。

特に今年度については、新型コロナウイルスの感染拡大により、自治会の行うさまざまなコミュニティ活動が中止となっている現状を鑑み、自治会活動の活性化を図るため、新たに「自治会活動活性化応援助成金」を創設しました。この助成金は、町内にある6つの連合自治会に対して、自治会活動の活性化に資する事業を積極的に行っていただくため、基本額100万円に1世帯につき1、000円を加算した金額を助成金として交付しました。

コロナ禍により停滞した自治会活動が、この助成金を活用することで活性化し、一日も早くこれまでの活動が再開される環境となることを願っています。

 

 

座談会「町長と語ろうまちづくり」の開催

毎年、地域の課題やその解決の方向を見出すために、町内7会場で座談会を開催し、地域の方々と直接、顔を合わせてまちづくりに関する意見交換を行っています。意見交換のテーマとしては、それぞれの地域特有の課題もありますが、最近ではどこの地域においても「防災対策」と「鳥獣被害対策」が大きな課題となっており、町行政と町民とで熱い議論を重ねています。

それぞれの地域特性に合ったまちづくりを進めていくためには、こうした機会に町民と町とでしっかりと情報共有し、いただいたご意見・ご提案を町政に反映させていくことが重要であると考えています。昨年度は、新型コロナウイルス感染拡大により、残念ながら開催中止となりましたが、今年度については、感染防止対策をしっかり講じた中で、何とか開催していきたいと考えています。

座談会「町長と語ろうまちづくり」

​​▲座談会「町長と語ろうまちづくり」町内の各地区で実施している。

 

「地域づくり委員会」のまちづくりへの参加

当町では、地域資源を活用し地域の活性化に資する、まちづくり活動を行う地域づくり委員会が、町内4地区で組織されています。地域づくり委員会は、自治会とは別組織で、自分の住む地域の魅力を高めるまちづくりを自ら考え、自主的に活動している組織であり、町からも僅かではありますが、助成金を交付しています。最近の取組としては、丹沢湖周辺へのもみじの植栽、ホタルの里づくり、各種イベントの企画など、それぞれの地域特性に合った事業を進めており、地域づくり委員会の運営にあたっては、近隣大学の先生をアドバイザーとして招き、4地区の代表により構成される運営委員会の中で、各地区の取組の検証や情報交換を行い、より良いまちづくりにつながるよう議論しています。

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「鉄道のまち」としての誇り

「山北駅」は、明治22年に東海道本線が開通した際、箱根越えの要衝として発展し、大正から昭和初期の最盛期には、駅関係職員が600人を超え、「鉄道のまち」として大変栄えていました。当時の山北駅の歴史を感じさせる鉄道関係の貴重な品々は、駅舎に隣接した「鉄道資料館」に展示されています。

山北駅は、乗降客数の減少を理由に平成24年3月に無人化となりましたが、「山北駅を無人駅にしてはならない。」という町民の強い思いもあり、同年5月から町内NPOや鉄道関係OBの協力を得て切符販売員を配置し、乗車券の簡易委託販売を実施しています。無人化となった山北駅舎を活用したこの取組により、山北駅は町民の地域コミュニティ形成の場として、駅周辺の活性化に一定の効果をもたらしています。

また、山北駅に隣接する山北鉄道公園には、昭和43年まで御殿場線で活躍していた蒸気機関車「D52―70号機」が静態保存されていましたが、町では地方創生加速化交付金を活用し、平成28年3月に圧縮空気を動力源として、48年ぶりに動態化させました。

全国に7両現存するD52のうち、走行可能なものは当町のD52のみであるため、「動くD52」が見られるイベント開催時には、各地から鉄道ファンが訪れています。今後は、一般の方にD52の乗車体験をしてもらうことなども視野に入れて、現状12mの軌道を30mに延長する計画を進めています。

D5270

▲D5270
山北鉄道公園に静態保存されていた、SLが平成28年に復活した。日本で唯一自走するD52。

 

切符販売

▲切符販売
平成24年に無人駅になったが、同年よりNPO法人が切符販売を実施している。

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観光の中心となる丹沢湖

昭和53年、当町の象徴的な観光スポットである丹沢湖が誕生しました。この湖は人造湖でありながらも、周囲の自然環境と調和した美しい風景を特徴としています。そして、8月には水中花火や打ち上げ花火が湖面を彩る「丹沢湖花火大会」、11月には山北名物猪鍋を味わえる「西丹沢もみじ祭り」、湖畔の紅葉が見頃となる時期に開催される「丹沢湖ハーフマラソン大会」など、季節を感じられるスケールの大きいイベントが開催されています。

また、丹沢湖の湖面を活かしたアクティビティとして、ボートやカヌーの体験もでき、毎年、7月には色とりどりのカヌーが湖を彩る「カヌーマラソンIN丹沢湖」が開催され、多くの選手がしのぎを削っています。特に近年では、ボートの上に立ちパドルで漕いで水面を進む「SUP(スタンドアップパドルボート)」競技者も増えています。昨年度、丹沢湖でSUPをより多くの方々に楽しんでもらうために、湖畔に更衣室付き艇庫「Sup Sta 丹沢湖」を建設するなど、若者を呼び込む新たな観光資源として期待を寄せています。

D5270のマスコットキャラクター「でごにぃとでごみぃ」

▲D5270のマスコットキャラクター「でごにぃとでごみぃ」
D5270の復活と同時にお披露目になったでごにぃと、令和元年にお披露目になったでごにぃの妹のでごみぃ。

 

カヌーマラソン

▲カヌーマラソン
毎年夏に丹沢湖で開催されるカヌーを使った競技大会。

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定住総合対策事業の推進

当町では、少子高齢化、人口減少という深刻な課題に対処するため、平成21年度に近隣自治体に先駆け、定住対策に特化した部署「定住対策室(現在は定住対策課)」を新設しました。定住対策事業については、住宅環境の整備、子育て支援、企業誘致など多岐にわたるため、各課で推進すべき事業を位置付けた「山北町定住総合対策事業大綱」を策定し、庁内関係課で構成される推進会議において、それぞれの所管課で取り組んでいる事業の効果検証を行い、事業の見直しや新規事業の実施につなげています。具体的な事業については、子育てを支援する「出産祝い金」、「紙おむつ支給」、「小児医療費助成」、また、住まいづくりを応援する「空き家バンク」、「新築祝い金」、「空き家活用助成金」、さらには当町での田舎暮らしを体験できる「お試し住宅事業」など、多岐にわたる事業に取り組んでいます。

また、定住対策については、当初から若者・子育て世代が住みたくなる環境づくりに軸足を置いて進めてきたところでありますが、平成26年3月には、PFI事業による山北駅北側定住促進住宅「サンライズやまきた」が完成し、子育て世代の移住・定住に一定の効果を上げています。さらに現在、令和4年度の完成を目指し、東山北駅周辺において、「サンライズやまきた」とは別のコンセプトで、PFI事業による若者・子育て世代向けの住宅の整備を進めています。

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(仮称)山北スマートIC整備事業の推進

平成26年8月、新東名高速道路(仮称)山北スマートICの事業化が決定しました。当町には東名高速道路のICが無く、新東名高速道路においてもICの設置が予定されていなかったため、国・県などのご支援をいただきながら、長年にわたりスマートICの実現化に向けた取組を進めてきたことが、ようやく実を結びました。運用形態は、東京方面乗り降り限定のハーフICで、首都圏からのアクセス性が飛躍的に向上し、観光交流人口の増加や企業活動の活性化などが期待されます。

(仮称)山北スマートICは、新東名高速道路が全線開通する令和5年度末に供用開始されるため、現在、町では周辺観光施設等のリニューアルや新たな施設整備について検討を進めています。特にスマートICの近くに設置されている「道の駅山北」については、スマートIC供用開始後には利用者が増加することが見込まれるため、県に対してもご支援、ご協力をお願いしたところであります。

当町の新たな玄関口となるスマートICの完成が待ち遠しいと思う反面、スマートICを活かした周辺地域の活性化に資する取組を加速化する必要があると感じています。

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おわりに

当町の活力の原点は地域にあり、地域が元気になることで、まち全体が元気になります。行政は町民の提案や要望などに耳を傾け、協働でより良い地域づくりを進めることが重要です。

コロナ禍という状況下において、当町を取り巻く環境も大きく変化しようとしていますが、今後も昔からそこにある資源を大切にしつつ、新しい動きとの相乗効果により「みんなでつくる 魅力あふれる元気なまち やまきた」を目指し、まちづくりを進めていきます。

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