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福岡県宇美町/町民一人ひとりが主役の元気な地域コミュニティ

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年10月5日

井野山山頂

▲井野山山頂


福岡県宇美町

3135号(2020年10月5日) 宇美町長 木原 忠


宇美町の概要

宇美町は、福岡都市圏に属する糟屋郡の町で、西は大野城市と福岡市、北西は志免町、北は須恵町、東は飯塚市、南は太宰府市と筑紫野市にそれぞれ隣接しています。

地勢を見ると、東部は三郡山系と、南部は四王寺山塊に囲まれており、町の面積(30・21㎢)のおよそ6割を森林が占め、豊かな自然に恵まれています。

河川は、砥石山・三郡山を源として町の中央部を貫く宇美川と、四王寺山塊から発した井野川があり、これらが志免町で合流し、福岡市で多々良川に流れ込み、博多湾に注いでいます。

町の歴史は古く、西暦665年に築城され、日本遺産構成文化財にも認定された日本最古の古代山城「国指定特別史跡 大野城跡」をはじめ、近年、魏志倭人伝に記載がある「不彌国」として本町が注目される根拠となった「国指定史跡 光正寺古墳」などの史跡が多くあります。また、古事記や日本書紀に、神功皇后が応神天皇を出産された地を「宇美(産み)」と呼ぶようになったという記述があるように、安産の神様として全国的に有名な宇美八幡宮があります。

明治時代に入り、宇美・炭焼・井野・四王寺の4つの村が合併し宇美村となり、大正9(1920)年10月には糟屋郡で最初に町制を施行し、宇美町となりました。本年2020年は、町制施行100周年を迎える歴史ある町です。

鉄道・船舶等の輸送用燃料などへの石炭の需要が増大することにより、戦後しばらくは石炭産業が盛んとなり、昭和30年代前半には人口が22、936人まで増加しましたが、高度経済成長政策とエネルギー革命による石炭産業の衰退に伴い、昭和38(1963)年の三菱勝田鉱業所の閉山を境に、炭鉱の町としての歴史に幕を閉じ、人口も2万人を割るところまで減少することとなりました。

しかし、県道筑紫野古賀線の開通をはじめとした道路網の整備が進むと、福岡市近郊のベッドタウンとして、また、軽工業地域として人口は徐々に増加し2020年7月現在、人口37、320人、世帯数16、049世帯を有する町へと成長しています。

 

大野城跡→百間石垣

▲大野城跡→百間石垣

河原谷の大つらら

▲河原谷の大つらら

共働のまちづくり施策の推進

近年、少子高齢化や都市化の進行等、社会情勢の変化に伴い、一人ひとりの価値観やライフスタイルが多様化し、集団よりも個人を尊重する風潮が強くなっているような傾向が見受けられます。

加えて、地域に暮らす人々の連帯意識の希薄化等により、地域の力の低下が懸念されるところです。

その一方で、公共サービスに対する住民のニーズも多様化、高度化し、よりきめ細かく質の高いサービスが求められるようになりました。

このように多様化する社会情勢に対応し、地域の持っている個性や魅力が最大限発揮できるようなまちづくりを進めるためには、そこに住み、学び、活動し、その地域にかかわる町民一人ひとりが、「自分達の地域は自分達で作る」という自治意識を持ち、その能力や経験を活かしながら社会参加することが必要不可欠だと考えます。

そこで、当町では、自治の根本理念である「自助・互助・共助・公助」のもと、町民と行政が対等な立場でパートナーシップを確立し、「共にまちづくりを担う主役である」という意識を持って、お互いの長所を活かしながら共働して地域課題に取り組み、町民の力が地域に生きる、より暮らしやすい魅力あるまちづくりを実現するため、第5次及び第6次総合計画において「共働のまちづくり」の推進に取り組むこととしました。

地域コミュニティの新たな枠組

「共働のまちづくり」を推進する上で、自治会をはじめとした地域コミュニティは、中核となるべく大変重要な役割を担っています。しかしながら、近年の社会情勢の変化により地域のつながりが薄れ、自治会活動などへの参加者は減少し、また、高齢化による人材不足など、地域コミュニティの機能低下が深刻な課題となってきました。

そこで、地域コミュニティの活性化を図るため、平成29年度に2つの施策を実施しました。

(1) 行政区長制度の廃止

当町では、これまで地域の代表となる町民を非常勤の特別職公務員である行政区長として委嘱し、地域と町行政との調整を図り、地域住民の福祉増進及び行政浸透に努めることを職務としてきました。これは、公共サービスを行政が一手に引き受け、町民はそのサービスを享受するという従来からの考え方に基づいたものでした。もちろん、「公共の福祉」への貢献を行うことは行政の大きな責務であるものの、より良く、多様なサービスを継続的に提供していくためには、社会を支える他の主体との連携や協力は不可欠です。

町と地域が共に手をとりあい、共働でまちづくりパートナーとして対等な立場を築くために、行政区長制度を廃止し、行政区長を自治会長へ、行政区を自治会へと移行しました。これにより、行政と地域が対等な関係で、地域コミュニティの活性化を推進できる新たな地域自治の体制に変更することとなりました。

(2) 小学校区コミュニティ運営協議会の設立

当町では、49の自治会(平成28年3月現在)が存在し、数世帯の自治会から1、000世帯弱の自治会まで大小さまざまな規模の自治会があり、地域活動が盛んな自治会とそうでない自治会の差が生まれていました。

また、それぞれの地域において、課題は多様化し、災害や子ども達の見守り等、単一自治会では解決できない課題も多数生まれていました。

そのような状況の中、自治会間の活動の格差を少なくし、多様化する地域課題の解決を図るために、町内5つの小学校区を単位とした小学校区コミュニティ運営協議会を新たに設立しました。

小学校区コミュニティ運営協議会は、自治会を中心として、PTAや子ども会などさまざまな団体と連携しながら、それぞれが抱える地域課題の解決を図るなど、地域コミュニティの機能向上に努める中で、これまでにはなかった新たな地域コミュニティの形成を目指してきました。

それまで長く続いていた行政区制度の廃止や新たな地域コミュニティ組織の設立というこれまでの地域自治のあり方を大きく変える施策であったため、自治会長をはじめとした自治会役員の方や住民の方への理解を得ることが大きな課題であり、これが一番力を注いだ部分になります。

そのために、全5小学校区で全住民の方を対象とした説明会や各自治会への説明会を30回以上実施し、徐々に理解を深めていきました。

小学校区コミュニティ運営協議会の現状と課題

平成29年度の設立当初は、「小学校区コミュニティ運営協議会って何?」などの意見も多く、住民の方の認知度も低かったのですが、活動を開始し、4年目を迎える現在は、徐々に住民の方に活動が浸透しています。

小学校区コミュニティ運営協議会を設立して大きく変わった点は、自治会間の連携が図られるようになってきたことです。地域コミュニティ施策として、小学校区コミュニティ運営協議会を推進しながらも、地域コミュニティの根幹を支える自治会の活性化は不可欠であり、これまでは、自治会のことはそれぞれの自治会でという考えでしたが、小学校区コミュニティ運営協議会を核として、自治会間の情報共有が行われるようになり、祭りなどのイベントの合同開催や子ども会の連携等の動きも見えはじめ、自治会活動の活性化にもつながっていると感じています。

また、小学校区コミュニティ運営協議会でも独自にさまざまな活動が開始されています。

防犯活動については、子ども達の登下校時のガードボランティア活動や町の青パトを活用した巡回など地域の安心・安全を見守る活動が全校区で実施されています。

 

見守り活動の様子

▲見守り活動の様子

 

高齢者支援活動として、~元気な時からの健康づくりを地域で~をテーマに町と小学校区コミュニティ運営協議会の共働でiPadを使った脳トレや軽運動、健康に関する教室などを盛り込んだ介護予防教室を全校区で実施しています。介護予防教室では、小学校区コミュニティ運営協議会の役員が、教室の支援をしていただくサポーターの役割を担っており、そのため、参加者の方が安心して教室に参加しやすい環境ができています。

加えて、小学校区コミュニティ運営協議会の大きな特徴は、地域の特性にあった活動が実施されている点です。

宇美町の山沿いにある宇美東小学校区コミュニティ運営協議会では、大雨による被害が多いことから、特に防災に重点を置いています。

災害の恐れがある時には、地域の要支援者に連絡をとり、避難誘導を行ったり、町と共働で避難所運営も実施しています。避難者の方も身近な地域の方が避難所運営に携わることで、災害への不安が和らぐ効果は大きいと感じています。

また、町の避難所だけではなく、小学校区内の各自治会の自治会公民館を避難所として開設する際に、小学校区コミュニティ運営協議会が調整役となり、被災の可能性がある自治会公民館から別の安全な自治会公民館へ避難者を誘導する体制を事前に協議し、実際の避難時に、自分が住んでいない自治会公民館にも避難できる体制をとっています。

災害が起きた後の連携ではなく、災害が起きる前の避難準備の段階からこのような自治会間の連携体制を構築できているのは、小学校区という範囲で新たな枠組みを作ったからこそ実現できたと感じています。

その他の校区でも、夏休みに子ども達の移動図書館を開催したり、それぞれの校区の特徴を活かしたさまざまな活動が展開されており、今後も町と小学校区コミュニティ運営協議会が連携しながら地域課題の解決に取り組んでいきます。

 

避難訓練

▲避難訓練の様子

移動図書館

▲移動図書館の様子

 

今後の課題は、やはり人材の確保だと思います。小学校コミュニティ運営協議会においても、人材の高齢化や固定化が見られはじめています。各校区での人材育成の仕組みづくりもさることながら、地域に埋もれている人材がまだまだ存在することも事実ですので、その掘り起こしも重要な課題だと思います。

人材の掘り起こしについては、地域ボランティア登録制度の導入の検討や若いPTA世代との事業連携を進めることにより、人材の確保につなげていきたいと思います。

第6次宇美町総合計画の理念である「ひとが輝き!地域が輝き!!まちが輝く!!!元気なまちづくり」を実現するために、地域と行政が共働でさらなる地域コミュニティの活性化に努めてまいりたいと思います。