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岡山県和気町/住み続けたいまちを目指して

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年5月25日

 

愛宕山から見た和気の町並み

▲愛宕山から見た和気の町並み


岡山県和気町

3120号(2020年5月25日)  和気町長 草加 信義


 

和気町の概要

平成18年3月1日に旧佐伯町、旧和気町の両町が合併して誕生した和気町は、岡山県の東南部に位置し、備前市や赤磐市に接し、吉備高原から連なる標高200~400mの山々に囲まれた自然豊かな町です。

南北に県三大河川の吉井川が貫流し、吉井川に流れ込む王子川や金剛川、初瀬川などの平野部には農地が広がり、水稲や野菜、果物などの農作物の生産が行われています。

いずれの地域も古代から備前の国和気郡に属しており、吉備文化圏の東部に位置する政治・文化の中心地でした。近世に入ると、池田家の岡山藩に属し、吉井川を高瀬舟が寄港する商業地として栄えてきました。その後、時代の流れと共に、交通機関も水路から陸路へと変わり、国・県道や片上鉄道の利用により交通運輸が発展して、現在では南北に貫通する国道374号やJR山陽本線、山陽自動車道や岡山美作道路の整備促進により広域交通の要衝として発展しています。

和気町の人口は、14、089人、世帯数は6、339世帯(2019年12月末)、面積は144・21㎢です。

和気町藤野にある藤公園は、広さ7、000㎡の園内に幅7m、総延長500mの藤棚を配し、北は北海道函館から南は鹿児島県坊津まで、野生の藤が自生しない沖縄を除く全国46都道府県の有名な藤や、国外では中国・韓国産の藤が集められており、約100種類、150本の藤が咲き乱れ種類では日本一です。紫・ピンク・白、花房の長いものや八重のものなど様々な色や形の藤が咲き競います。その姿のみならず匂い立つ香りも楽しみのひとつです。また、夜間はライトアップされ、静けさの中、ライトの光に浮び上がる藤は、昼とは違った姿をみせます。

藤公園ライトアップ

▲藤公園ライトアップ

移住定住施策の推進

平成18年の合併時には約16、500人であった和気町の人口は、現在約14、100人にまで減少しています。若い女性の数が減っていることや、晩婚化・未婚化が進んでいるということもあり、国の推計では和気町の人口は今後も減少を続け、令和27年には約8、500人にまで減少する見込みとなっています。

この深刻な人口減少を克服するため、和気町では、人口減少対策を取りまとめた「和気町まち・ひと・しごと創生総合戦略」を平成27年10月に策定し、スピード感を持って様々な取組を進めてきました。

まずは移住相談体制の強化に取り組みました。東京からの移住者を「移住推進員」として採用して役場に常駐させるとともに、インターネット広告や町ホームページで「都会にはない、和気町ならではの暮らしやすさ」を首都圏などの大都市圏へ積極的に情報発信することで移住相談件数の増加を図りました。また、町内での宿泊費を補助するなど、実際に和気町に来て町を見ていただくよう努めました。

こうした取組などにより、和気町への移住を検討してくださる方が増えてきた一方で、住宅不足が深刻となってきました。賃貸できる空き家の掘り起こしが進まず、町営住宅、民間賃貸住宅にも空きが無い状態でした。当時の和気町は、新しい民間賃貸住宅の建設がほとんどありませんでしたが、かといって新規に町営住宅を建設することは費用も時間も掛かります。そこで和気町では町内での新規民間賃貸住宅の建設に対して建物の固定資産税相当額を10年間補助する制度を創設し、住宅メーカーに和気町での賃貸住宅建設を検討してもらうよう営業活動を行いました。これにより和気町での民間賃貸住宅の建設が進み、現在では多くの賃貸住宅が建設され、移住者の住居の受け皿となっています。

最近の移住者数の推移ですが、平成25年度から平成27年度までは毎年30人前後とほぼ横ばいでしたが、平成28年度は80人、平成29年度は120人、平成30年度は113人と増加しています。移住者の増加を受けて社会動態も改善し、平成29年は6年ぶりに49人の転入超過となり、平成30年も22人の転入超過となりました。こうした流れを一時的なものではなく定着化させるため、今後も移住定住促進施策の充実などに取り組み、深刻な人口減少に歯止めをかけたいと考えています。

和気町に移住された方達

▲和気町に移住された方達​

「教育のまち和気」構想

和気町では、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定するにあたり、住民アンケートを実施しました。そのなかで、居住地選択にあたっては「教育・保育の環境」を重要視していることが分かりました。

そこで、「教育のまち和気構想」を掲げ、特に英語教育に力を入れることとし、よりグローバルな人材を地域で育てるために様々な取組を行っています。平成28年には文部科学省より、町内すべての小・中学校に対し独自カリキュラムが導入できる「英語特区」に認定され、すべての小中学校に1人ずつALT(外国語指導助手)を配置し、児童・生徒が生の英語に触れる機会を増やすようにしています。また、町内の小学校では全学年で英語活動の時間を増やし、中学校では英語のみでコミュニケーションを図る授業を導入しています。

それとともに、地域おこし協力隊制度を活用して、協力隊を中心に地元の大学生にもサポートしていただきながら、夜間や週末を利用して、無料の英語公営塾を開講し、小中学生の英語教育を全面的にサポートしています。公営塾では、積極的に地域と交流もしており、受講生は町内のイベントで活躍するなど、居場所づくりやコミュニケーションスキル向上という側面も持ち合わせています。

また、近年増えてきている外国人観光客を町全体でおもてなしするため、インターネットを通し外国の方と話ができる無料のオンライン英会話も開講しています。こちらは小学生から大人まで、幅広く活用されています。

このように、都市部に居住することなく、重点的に英語を学べる町として成果が出てきています。

英語教室

▲無料公営塾​

ドローンを活用したまちづくり

和気町では、無人航空機「ドローン」を活用したまちづくりに取り組んでいます。「空の産業革命」といわれるドローンは、高齢化等による買い物難民や交通弱者の問題、老朽化したインフラ対策、防災、農作物の獣害問題などの様々な地域課題の解決の切り札となる可能性があると考えています。平成30年には、国土交通省・環境省が実施する全国5か所の実証実験のうちの一つに採択され、町が誘致したドローンスクール企業「(株)Future Dimension Drone Institute」と連携して、約10km離れた山間部の集落へのドローンによる食料品等の配送実験を約2週間行いました。令和元年も、内閣府と総務省の支援を受け、NTTドコモ等の多くの民間企業と連携して約3か月間の配送実験を行い、携帯電話の電波を活用して飛行中のドローンからの映像を監視センターに届けることで、「目視外・補助者なし」の運行システムの構築に取り組みました。配送先の集落は前年の1集落から3集落に増やし、10月から12月の間の週3回を基本として住民から電話等で注文があった生活品などの商品をドローンで配送するという、実用化に近い形での実験内容となっています。

その他にも、水稲などの生育診断や、シカ・イノシシなどの害獣の生息状況の調査、植林した山林の面積・本数・材積等の資源量調査の実験も行いました。また、令和2年3月には赤外線カメラを搭載したドローンを使って山林での行方不明者捜索の実験も行いました。行方不明者の捜索については現在は警察・消防署・地元消防団などによる人海戦術の捜索が主となり、滑落事故等の危険も伴います。ドローンを使えば、人では危険・困難な箇所でも捜索できるなど、行方不明者の早期発見に繋がることが期待されます。このようなドローンを活用した地域課題解決の早期のサービス実用化に向けて、今後も多くの民間企業と連携して実験を続けていきます。

ドローン事業

▲ドローンを活用した食料品等の配送実験​

和気清麻呂公顕彰事業

和気町は、奈良時代から平安時代に中央で活躍した和気清麻呂公生誕の地です。「和気清麻呂公の業績をとおして、偉大な先人に触れ、町民の一体感を醸成するとともに、町のさらなる発展に寄与する」ことを目的に、清麻呂公の顕彰事業を進めています。

清麻呂公の備前焼像と説明板を役場本庁に設置し、次いで、本町を代表する観光スポットでもある藤公園に由来を記した記念碑を設置しました。これは、藤公園が、昭和58年に清麻呂公生誕1、250年を記念に整備されたことを踏まえたものです。また、友好都市である上海市嘉定区へ、「平成の遣唐使」として毎年中学生を派遣し交流しています。今後はより一層グローバルな人材の育成が求められることから、改めて友好関係の発展を基礎づけるために、訪中団を結成して嘉定区を訪問し、友好を深めました。

顕彰事業は、この後、記念講演も開催し、現在は清麻呂公の絵本作成を準備しているところです。

和気清麻呂像

▲和気清麻呂像​

和気清麻呂公陶像除幕式

▲和気清麻呂公陶像除幕式​