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徳島県上勝町/協働によるごみゼロの町へ! ゼロ・ウェイスト宣言 -持続可能なまちづくり-

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年3月30日
ゼロ・ウェイストセンター完成イメージ図

▲ゼロ・ウェイストセンター完成イメージ図


徳島県上勝町

3114号(2020年3月30日)  上勝町長 花本 靖


上勝町の概要

上勝町は、四国山脈の東面に属し、標高100~700mの間に大小55の集落を有する農山村地域です。面積109㎢の88%が山林で、その内80%は杉などの人工林です。徳島市中心部から車で約1時間の位置にあり、人口は1、510人、高齢者比率が52%(令和2年1月1日現在)という、少子・超高齢化の町です。

柚香(※)・すだち等を特産とする柑橘類の産地ですが、昭和56年の異常低温により、主要産業だった温州みかんがほぼ全滅しました。(※柚子と橙の自然交雑種といわれており、酸味がすだち・柚子と比べるとまろやかであることから「香りゆず」「酸味のすだち」「味ゆこう」と言われています。)

この危機を打開するため考え出されたのが、日本料理に添える葉っぱや花などのつまものを商品化した「彩(いろどり)」で、当町が創出した新しい産品であると同時に、高齢者が活躍できる産業としても知られています。​

上勝町のごみ処理

高度経済成長に伴う大量消費社会の到来で、農山村においても大量のごみが発生するようになり、その処理を担う自治体に財政負担が重くのしかかってきました。

当町では、ごみは自宅で燃やしたり、埋めたり、残土処理場で野焼きをしていたため、県からごみ処理施設を建設するよう指導を受けていました。野焼きを続けられなくなる一方、新しく焼却場を建設して点在する集落のごみを回収する財政的な余裕はなく、町内から出るごみの組成調査をし、“リサイクルの方策”について検討を始めました。

検討を重ねる中で、生ごみを焼却することが施設の大型化や燃料の多量消費、それによるCO2排出量の増加を招くことに気付き、家庭用電動生ごみ処理機やコンポストを用いて、各家庭で堆肥化を図ることにしました。

個人については、家庭用の電動生ごみ処理機が少額の自己負担で購入できるよう補助制度を創設し、飲食店等の事業所については業務用生ごみ処理機を設置し、組合で管理することとしました。​

リサイクル活動を表すイメージ図

▲リサイクル活動を表すイメージ図

分別収集の開始

生ごみを各家庭で処理することにより、ごみ分別の取組を容易に進められることにつながり、平成9年に野焼きを禁止し、容器包装リサイクル法に則ったごみ分別を9種類でスタートしました。平成10年には小型焼却炉を2基設置し、さらに焼却ごみを減量するため分別は22種類になりましたが、法改正でダイオキシン排出基準が厳しくなり、小型焼却炉の1基が基準を満たせないことが判明し、平成13年に閉鎖せざるを得なくなりました。​

徹底分別の推進

人口の少ない上勝町ではごみの絶対量が少なく、日量100t以上の連続燃焼が基準となれば単独で焼却炉は持てません。広域化も検討しましたが構成市町村の思惑がまとまらず断念し、できる限り分別しそれでも資源化できないごみは専門の処理業者に委託することにしました。運搬・処理にかかる経費を抑えるには徹底分別し、資源化を高めることしかありません。

しかし、本町のように資源ごみの数量が少ないと引取先が見つからず、全国各地に足を運び引取をお願いする内に、平成14年には34分別になりました。結果として焼却ごみは減り続け、平成29年度には総排出量286t、内焼却・埋立量58t、リサイクル率は79・7%にまで資源化が進みました。

仮設ごみステーションの分別

仮設ごみステーションの分別2

▲仮設ごみステーションの分別

ゼロ・ウェイスト宣言

そもそも、ゼロ・ウェイストとは?ゼロ=「0」・ウェイスト=「浪費・無駄・廃棄物」、直訳すると浪費・無駄・廃棄物をなくすという意味です。ごみを出さない生産と消費のシステムを構築していく「ゼロ・ウェイスト」の理念に触れ、これをまちづくりの1つとして位置づけて運動を展開しようと、34分別を開始した翌年の平成15年、町議会が満場一致で国内初の“ゼロ・ウェイスト宣言”を議決しました。

上勝町ゼロ・ウェイスト宣言

未来の子どもたちにきれいな空気やおいしい水、豊かな大地を継承するため、2020年までに上勝町のごみをゼロにすることを決意し、上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)を宣言します。

1 ‌地球を汚さない人づくりに努めます!

2 ‌ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋立て処分をなくす最善の努力をします!

3 ‌地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!

紙類

▲紙類も細かく分別

ごみは自分で持っていく

上勝町は収集車を走らせたことがなく、ごみは町内1ヶ所の収集拠点である「ゴミステーション」に住民自ら持ち込みます。不便なようですが、ゴミステーションは年末年始の3日間を除き毎日開いており、自分の都合の良いときにごみを出すことができるし、管理員が常駐しているので、分別が分からなくても持って行けばその場で教えてもらえます。

高齢者等で運搬手段を持たない住民に対しては、2ヶ月に1回自宅まで収集に伺っており、訪問時に近況を聞き取るなど安否確認にも役立っています。​

リユースの取組

ゴミステーションに併設したくるくるショップは、住民が「不要になったけどまだ使える物」を持ち込み、誰でも持ち帰ることのできる無料のリユースショップです。循環率(持ち帰り量÷持込み量)は90%を超え、毎年10tもの物が再使用されています。

NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーが運営するくるくる工房では高齢者の介護予防も兼ねて、おばあちゃんたちが昔ながらの知恵や技術を活かして、不要になった着物や鯉のぼりなどからリメイク商品を作り販売しています。また、祭やイベントでの飲食物の提供に対してリユース食器の無料貸出も行っており、一時的に出る使い捨て容器の削減に役立っています。

ポイント制度の導入

ごみ分別の副産物として、紙や金属などの資源は有価で買い取ってもらい、年間約200万円の売上金収入を得ていますが、これを資源化に協力してくれた住民に還元するため、焼却ごみの減量や処理費用の減額が期待できる物を対象にポイントを付与し、様々な商品と交換できるサービスも始めました。

その後、交換できる商品を大幅に拡充し、分別への関心を高めると共にモチベーションアップを計っています。

くるくるショップ

▲くるくるショップ

ちりつもポイント交換商品一覧表

▲ポイント交換できる商品

ゼロ・ウェイスト政策における住民との連携

このような住民主体のごみ処理政策に理解を得られた要因としては、平成5年にスタートしたまちづくり研修、「1Q運動会」(1Question=地域づくりにあたり、住民個々が地域について疑問を持ち、地域課題を明らかにし、住民と職員がそれぞれの役割を担いながら解決していくという手法を取り入れた研修)にあります。

自ら企画・実践するまちづくりを進めてきたことがごみ処理においても有効に作用し、当初は反発が強かったごみ分別ですが、ゼロ・ウェイスト政策を「まちおこし・まちづくり」と位置づけることにより、目標に向かって協働することができました。

ポイント制度掲載の広報誌

▲H30.10月号広報に掲載

リデュースの取組

ここまで、「出たごみをどう処理するか」という消費者サイドの取組を続け、リサイクル率も約8割を達成しましたが、最早これ以上のごみ削減は困難であり、今後は「いかにごみになるものを減らすか」が重要です。

そのため、「ごみの出ない」売り方・買い方のモデルを提案する仕組みとして「量り売り」に着目し、町内2つの飲食店において、食事で提供している原材料等を対象商品として、食品ロスをできるだけ出さない仕組みで販売する実証実験をしました。これが、「何とかごみを減らしたい」と思っている町内外の方をお店と結びつける結果となり、当町の課題の1つである「町内店舗での買い物促進」への一助にもなりました。これを受け、他の飲食店や商店でも量り売りに取り組んでくれるようになり、「どの店で何を量り売りで買えるのか」を広報誌で周知するとともに、量り売り利用者やレジ袋を断った利用者に対してもポイントを付与することとし、住民が積極的に参加できる仕組みを作りました。

量り売りは、店舗にとっては新たな顧客へのサービス価値提供の機会となり、「ゼロ・ウェイストの町、上勝」を体現する手段として広報効果も期待できることから、更なる廃棄物削減に資する有力なツールとして、普及・啓発活動に努めています。

オイル量り売りの様子

オイル量り売り什器

▲量り売りでオイルを購入

ゼロ・ウェイストセンターの役割

ゴミステーションは老朽化に伴い新たな施設を建設中で、「ゼロ・ウェイストセンター」として本年4月20日オープンの予定です。

ごみ問題は、消費者・生産者・行政が一体となって取り組むことが重要です。今後はこの施設を拠点として、消費者と生産者双方へごみを出さない、つくらないための提案や情報提供をしていくとともに、当町のゼロ・ウェイストを「滞在して体験する」ことができるよう、プログラム作りなども行ってまいります。皆さまぜひ一度訪れてみてください。

この活動を通じてゼロ・ウェイストの輪がますます広がっていくことを願い、さらに取組を進めてまいります。